RPA導入におけるリスクと解決策

怒賀新也 (編集部)

2018-04-26 07:30

 KPMGコンサルティングは4月25日、RPA(Robotic Process Automation)導入にかかわるリスク対応の重要性について説明する記者向けの会を開催した。Excelなどを使う既存業務をロボットに任せるRPAに、銀行業務の省力化など期待がかかる一方、RPAの乱立や管理など、課題が多く存在していることを明らかにした。

 ある大手保険会社では、保険申し込み事務処理センターにRPAを導入し、200人で実施していた仕事を20人および100体前後のロボットで構成するRPAで運営できるようにした。

 具体的には、保険の申し込み事務処理センターにおける申し込み受付、記載内容確認、不備チェック、データ入力などの処理を、RPAでルール化できるようにした。20人は確認作業と一部の修正、書類ファイリング作業のみを実施する。

 RPAの適用範囲は、業務フローを記述できる業務である限り、経理財務、給与・福利厚生、顧客業務、サプライチェーンなど幅広い。人工知能(AI)などを組み合わせることで、さらに複雑な業務処理を扱えるという。

 ただし、RPA導入においては一定のリスクがあると言われている。KPMGはこれについて「RPA処理プログラムの意図しない、または不正な変更」「RPAの突然の停止」「RPA処理データの改ざんや流出」「(RPAの乱立などによって起きる)管理不能状態」の4つを挙げる。

 先ほどの保険業務の申し込み処理業務で言えば、故障や停電などでRPAが停止した場合に業務が遅延するリスク、申込書に記載されている個人情報の管理に問題が生じるリスクがある。さらに、書類の保管メディアが電子的なものに変わり、そこから情報が漏えいするリスクなども考えられる。


PoCの規模では明らかにならなかったリスクが実導入によって顕在化することがある

注意が必要な導入領域

 KPMGコンサルティングは特に注意が必要なRPA導入領域をいくつか挙げた。1つは、内部統制報告制度や米SOX法404条の対象企業など。RPAを導入した業務プロセスで、内部統制が再評価されていない場合、財務報告に関わる内部統制の不備につながる可能性があるという。

 次に、個人情報や経営情報など、機密性や重要性が高い情報を扱う業務にRPAを導入する場合だ。情報の処理や保管の方法の変化に応じた対策がない場合、問題が発生する可能性が出てくる。

 訂正や遅延が許容されない業務にRPAを導入する場合も注意が必要となる。システム障害や災害などによるRPAの突然の停止への備えができていない場合、RPA導入業務や関連業務の遅延や停止、顧客や取引先への影響が大きくなる可能性がある。

 想定を超えて大規模にRPAを導入する場合も気を付けなくてはいけない。RPAの管理水準の低下を防止できない可能性がある。管理の重複や無駄の発生によるコスト増につながる可能性もあるとしている。

 KPMGコンサルティングの執行役員でパートナーの田中淳一氏は、RPAの内部統制の構築の必要性を強調する。油断すると、RPA導入時などに埋め込まれてしまう問題として、責任所在の不明確化、担当者の異動などによる維持管理能力の低下、RPA管理コストの増加などがあるという。

 これを防止するために、RPAリスク管理フレームワークの構築を提唱する。ポイントとして、RPA管理方針の策定、管理の体制と責任と役割の定義、導入に関する承認プロセスの定義、開発・テスト・品質管理プロセスの定義、RPA管理要件の定義などを挙げている。

 RPAは現在まで、既存業務を変えずにそのままRPA化できるといった手軽さにより導入が進んできた。だが今後は野良ロボット化などの懸念から、より丁寧な管理をする必要が出てくると田中氏は指摘する。

 業務部門が断りなくSaaSなどを導入してしまうシャドーITの問題が取り沙汰される中、RPAも同じような課題に直面することになりそうだ。こうした課題の解決者として、IT部門の役割が今後さらに高まるとも話している。

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