日本MSの働き方改革Nextは効果大--組織分析を個人活動へ

阿久津良和

2018-05-01 16:19

Workpalce Analytics活用で分かる日本MSの働き方改革

 日本マイクロソフトは2018年度経営方針注力ポイントとして、「インダストリーイノベーション」「働き方改革Next」の2つを掲げている。前者は先日本誌で紹介したパブリックセクター事業本部の刷新、後者は自社製品・ソリューションを活用した働き方改革の推進動向として、自社および顧客企業の取り組みを紹介した。

 日本マイクロソフトが2018年4月に実施した「社内働き方実態調査2018」(対象数は約569人)によれば、オンライン会議を日常的に活用する割合は97%、顧客訪問のオンライン同行を実施する割合は81%。後者は昨年と比較すると24ポイントもアップしている。同社はトップダウンで働き方改革を推進する段階を終え、「"いつでもどこでも"が完全に定着した。働き方改革という文脈では、育児や介護も理由の1つとなるが、『オフィス以外で働く理由』では5位」(日本マイクロソフト 代表取締役社長 平野拓也氏)。トップ3は「移動時間削減」「スピーディな対応」「作業に集中」が続く。


日本マイクロソフト 代表取締役社長 平野拓也氏

 次に続く働き方改革は、データドリブン(データに基づいた判断・行動)や"巻き込み力"の活用だという。この巻き込み力について日本マイクロソフトは、「弊社を例にすれば米国本社や各部門、パートナー企業や顧客まで巻き込み、ビジネスプロジェクトを達成する能力」(平野氏)と説明する。つまり、働き方改革を標榜する企業単独ではなく、取引先なども巻き込んだユニリーバのWAA(Work from Anywhere and Anytime)の思想に近い。肝心の調査結果だが、巻き込み力を重視する割合は91%、中途入社1年目の社員を対象にした前職との相違点は、「意思決定のスピード向上」がトップだった。さらに、巻き込み力を強化する意識ポイントとして、「オープンな姿勢を心掛ける」「チーム以外の人との積極的な会話の機会を持つ」「予定表やプレゼンスを公開」が並ぶ。

 また、日本マイクロソフトでは2018年1~4月まで「働き方改革実践プロジェクト」を実施し、同年4月4日に発表会を社内で開催した。営業部門を含めた12チーム270人がビジネスを通じて体験した実践方法を提案・共有するコンテストだが、「Microsoft Teamsを使った(顧客との)ダイナミックな連絡や、毎週の営業会議を予想・予測から始めるのではなく、社内や顧客とのネットワークを元に、巻き込み力を発揮するアイデアを提案するチームもいた」(平野氏)という。長らく取り組んできた同社の働き方改革は、現場レベルの発想とアプローチという次のステージに進んだ。

 具体的な例として、日本マイクロソフトは「われわれも数年前は経営会議に紙の資料を用意していたが、ここ数年は現場への権限委譲が進み、データに基づいた企画立案を行っている」(日本マイクロソフト Officeビジネス本部 輪島文氏)と説明する。Surface HubでPower BIを使用し、「(会議で疑問の声が上がった時も)従来なら1週間後の会議へ持ち越していたが、今はその場で確認できる。その結果として議論の集中度が高まり、即断即決につながる」(輪島氏)という。

 巻き込み力については、Microsoft Teamsを社内外とのコミュニケーションに活用。前述した社内プロジェクトでは、とある営業部門系チームが顧客にMicrosoft Teams利用を快諾してもらったことから、要望を気軽に聞くことで新たな案件につながったと紹介した。


日本マイクロソフト Officeビジネス本部 輪島文氏

 Office 365 Enterpriseのアドオンて2017年7月に提供を開始した「Workplace Analytics」は、組織全体の働き方を可視化・分析することで、個人の行動変革を支援するソリューションである。日本マイクロソフトは、「よく『働き方改革は重要だが(ゴールとなる)指標がほしい』という声をいただく。古いKPI(主要業績評価指標)で計っても変革は難しい。(多くの企業組織は組織図のような)構造と意識が身に染みているが、組織は階層構造ではなく相互的につながっている。真の共同作業に至れるかが(働き方改革の)鍵」(平野氏)と説明しつつ、Scientific Vortex Foundation Director兼哲学者のEduardo Salcedo-Albaran氏が作成したインフォグラフィックをイメージとして提示した。


Eduardo Salcedo-Albaran氏の「Mexican Drug Cartel "La Familia Michoacana"」

 日本マイクロソフトがWorkpalce Analyticsを活用した初期結果として、2017年1月~2018年3月末までを分析対象期間、前述のプロジェクト参加上位チームと全社を比較した結果によれば、会議時間は24.5%(昨年同月比)、1.5倍(他チーム比)減少。長時間会議も6%(昨年同月比)、6倍に(他チーム比)減少した。さらに残業時間も33.7%(昨年同月比)、2倍(他チーム比)に減少するなど明確な結果が現れたという。

 他方で他チームとの共同作業に積極的・非積極的なチームが浮き彫りになり、組織の硬直性や部門のサイロ化が明確になった。「部門のビジネスは売り上げ報告書に上がってこない」(平野氏)からこそ、これまでにない組織分析や可視化が重要だと同社は強調する。

 Workpalce Analytics活用では、トップパフォーマー(優秀な人材)の行動も可視化した。日本マイクロソフトは営業部門のトップパフォーマーと通常社員を比較した例を提示し、社外と共同作業に費やす時間は3.7時間多く、対応案件数も20件も差が生じている。社外ネットワーク利用時の連絡先1件あたりに費やす共同作業時間は分単位で2倍の開きがあり、社内ネットワークを利用した交流も26人と大きな差があった。トップパフォーマーの模倣は組織全体の底上げにつながることから、この数年話題に上りがちだが、同社は「トップパフォーマーは巻き込み力が違う」(平野氏)とWorkpalce Analyticsをアピールしつつ、働き方改革の本質は、「個人と組織の持つポテンシャルをいかに引き出すか」(平野氏)。能力を最大限発揮できる環境作りや、適切なワークライフバランスが鍵だと強調した。

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