松岡功の「今週の明言」

なぜ、データサイエンティスト協会に多様な会員が集まるのか

松岡功

2019-07-19 10:30

 本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉を幾つか取り上げ、その意味や背景などを解説している。

 今回は、データサイエンティスト協会の草野隆史 代表理事と、ネットアップの北野宏 執行役員の発言を紹介する。

「ベンダーだけでなく事業会社にも資する活動を行っていきたい」
(データサイエンティスト協会 草野隆史 代表理事)

データサイエンティスト協会の草野隆史 代表理事
データサイエンティスト協会の草野隆史 代表理事

 データサイエンティスト協会が先ごろ、特定の個人を識別できないように個人情報を加工した「匿名加工情報」に関する一般消費者への意識調査の結果とその課題や活用の見通しについて記者説明会を開いた。同協会の代表幹事を務める草野氏(ブレインパッド代表取締役社長)の冒頭の発言は 、その会見で、今回の調査に対する同協会としての意義について述べたものである。

 同協会が今回公表した調査の内容については関連記事をご覧いただくとして、ここでは草野氏の冒頭の発言に注目したい。会見では、調査に関する説明に先立ち、同氏が同協会の活動について次のように紹介した。

 データサイエンティスト協会の設立は2013年5月。目的は、「社会のビッグデータ化に伴い重要視されているデータサイエンティスト(分析人材)の育成のため、その技能(スキル)要件の定義・標準化を推進し、社会に対する普及啓もう活動を行う。分析技術認定(レベル認定)などの活動を通じて、分析能力の向上を図るための提言や協力を惜しまない支援機関として、高度人材の育成とデータ分析業界の健全な発展に貢献する」とのことである。

 2019年7月時点での会員数は、法人が113社、一般(個人)が1万2064人。草野氏によると、「この7カ月で法人会員が21社加入し、過去最速のペースで増えている」とのこと。そのトレンドとして、「これまではベンダー側のIT系の会社が中心だったが、最近はユーザー側の多様な業種の事業会社の加入が増えている」との動きがあるそうだ。

 事業会社の思惑は何か。自社で保持するデータを活用するために、データサイエンティストを社内で雇用し育成しようということのようだ。

 改めて、データサイエンティストとはどのような人材か。同協会では、「データサイエンス力、データエンジニアリング力をベースにデータから価値を創出し、ビジネス課題に答えを出すプロフェッショナル」と定義付けている。

 具体的には、図に示すように、データサイエンティストに求められる力を「3つの領域」に整理。また、レベルごとに各領域で求められる知識・スキルを整理している。

データサイエンティストの定義(出典:データサイエンティスト協会の記者会見)
データサイエンティストの定義(出典:データサイエンティスト協会の記者会見)

 注目すべきは、情報処理推進機構(IPA)が2017年に策定したIT人材の育成を推進するための新たなスキル標準「ITSS+」のデータサイエンス領域について、データサイエンティスト協会のスキルチェックリストが採用されたことだ。

 そうした活動が評価され、前述したように最近では法人会員に多様な業種の事業会社が増えている。草野氏の冒頭の発言はそうしたトレンドを捉えたものであり、今回の調査がまさしく具体的なアクションというわけだ。

 筆者は20年ほど前に草野氏と仕事でご一緒したことがあるが、その後の同氏のこの分野にかける情熱は敬服するばかりだ。今後もぜひ強力なけん引役を果たしていっていただきたい。

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