ワークステーション市場に切り込むレノボ・ジャパンの狙い

大河原克行

2019-08-20 11:20

 レノボ・ジャパンが、ワークステーション分野でシェア拡大に取り組んでいる。国内ワークステーション市場では、日本HP、デル、NECの3強時代が続いていたが、2018年度以降、レノボ・ジャパンが徐々に存在感を発揮しはじめ、10%前後でシェアが推移、3位の座をうかがい始めている。その切り札となるのが、モバイルワークステーションだ。日本のユーザーの声を的確に反映できる製品であることと、「ThinkPad」ブランドの信頼性を武器にして、国内ワークステーション事業の拡大を狙っている。

レノボ・ジャパンはモバイルワークステーションを相次ぎ投入した
レノボ・ジャパンはモバイルワークステーションを相次ぎ投入した

 同社はモバイルワークステーションの新製品を相次いで発売している。7月2日には、従来モデルから12%軽量化し、質量1.75kgを実現した「ThinkPad P53s」と、パフォーマンスを強化し、第2世代モデルへと進化した「ThinkPad P1(Gen2)」を発売したのに続き、7月30日には、14型ディスプレイを搭載したモバイルワークステーションとしては約3年半ぶりの新製品となる「ThinkPad P43s」を発売。さらに、15.6型ディスプレイを搭載した「ThinkPad P53」も発売した。また8月20日には、17.3型ディスプレイを搭載したモバイルワークステーション「ThinkPad P73」を発売してみせた。

14型ディスプレイを搭載したモバイルワークステーション「ThinkPad P43s」
14型ディスプレイを搭載したモバイルワークステーション「ThinkPad P43s」

 ThinkPad P43sは、第8世代のインテル Core i7 プロセッサーを搭載するとともに、NVIDIA Quadro P520を搭載。メモリは最大48GBまでの拡張を可能としており、外出先でもCADや簡易的な解析、映像編集といった作業を行えるように、厚さ約18.9mm、質量約1.47kgの薄型、軽量化を達成。外出先でもストレスなく快適に作業を行うことができる環境を実現している。

 また、ThinkPad P53は、VR Ready対応のNVIDIA Quadro RTX 5000の搭載も可能としたモバイルワークステーションで、第9世代インテル Xeon プロセッサーのほか、インテル Core i9 プロセッサーも選択できる仕様としているのが特徴だ。ストレージは最大6TB、メモリは128GBまで拡張できる。CADや映像編集、解析だけでなく、VR(仮想現実)やAI(人工知能)、ディープラーニングなどの活用にも適している。

業界で最もパワフルな15型モバイルワークステーションと位置付けられる「ThinkPad P53」
業界で最もパワフルな15型モバイルワークステーションと位置付けられる「ThinkPad P53」

 そしてThinkPad P73は、ThinkPad P53をベースに17.3型ディスプレイを搭載した製品であり、デスクトップワークステーションと変わらないレベルの高いパフォーマンスを実現する。大画面ならではの視認性によって、医療現場や各種システム制御モニター、公共分野などでの利用を想定している。

 先行発売したThinkPad P53sとThinkPad P1(Gen2)を含み、いずれの製品もモバイルワークステーションと位置付けられる製品であり、取引先や外出先でCADや3Dデータを動かしたり、エンジニア同士が設計データを持ち寄って打ち合わせを行ったりといった、柔軟性の高いワークフローが確立できるのが特徴だとする。

レノボ・ジャパン ワークステーション事業本部長の林淳二氏
レノボ・ジャパン ワークステーション事業本部長の林淳二氏

 レノボ・ジャパン ワークステーション事業本部長の林淳二氏は、「企業で『働き方改革』が叫ばれる中、取り残されているのがモノづくり現場での働き方改革だ。現在、モノづくり現場で利用されているワークステーションの85%がデスクトップであり、試作および製造現場と、設計を行う事務所との間を行き来することが頻繁に起きており、現場から事務所に戻らなくてはならないという設計者も多い。また、出先で作業をしようと思っても肥大化するデータにモバイルPCの処理性能が追いつかないことや、デスクトップ環境が中心となるため、テレワークで設計業務ができないという課題もある。モノづくり現場の課題を解決するためにモバイルワークステーションが求められている」と語る。

 実際、モバイルワークステーション市場は成長している。IDC Japanの調べによると、2016年第1四半期を“100”とすると、2019年第1四半期のモバイルワークステーションの販売実績は“171”に達しており、今や市場全体の約2割をモバイルワークステーションが占めている。

 林氏は、「モバイスルワークスーションには、Core i7やXeonなどの高性能CPUが搭載されはじめ、コア数も増加し、グラフィックスもQuadro500番台から2000番台の高性能カードが搭載されている。また、大容量データも扱える32GBから64GBのメモリ容量も搭載している。ワークステーションの制約を取り除きつつある」と話す。

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