フィンランド流コロナ禍戦略--リーダーに必要なのは「分からない」と言える勇気

佐藤友理

2020-09-05 11:00

「想定外」だらけのコロナ禍、求められる会社文化の変革

 フィンランドを本拠地とするコンサルティング企業、Amara Collaboration。その共同設立者で、マネージングディレクターでもあるHeidi Gutekunst(ヘイディ・グテクンスト)氏は、企業文化を改革する重要性を説いてきた。

 同社は企業におけるリーダーシップ、リーダーのあり方や考え方を変革するサポートを提供している。これらの要素が企業文化を効果的に再定義するからだ。

 「コロナウイルスは実生活において、これまでに見たことのない複雑性と不確実性をもたらしました。フィンランドはコロナ対策において比較的成功してきた国として知られています。感染が確認されてから2~3日後には部分的なロックダウンが実施されました。この状況がどれくらい長く続くか、何が起きるのか、どんな問題が起きるのかも、私たちフィンランド人にはわかりませんでした。経営者は未曾有の事態に直面し、不確実性と不安に向き合い、理解に努めています。一方で、個人的な心配事、仕事に関わる恐れや心配事に襲われる従業員の理解にも、経営者は努めてきました。こうした困難に遭遇した時、賢いリーダーシップは成功の鍵です。このコロナ時代は意思決定の方法、働き方を強化し、企業文化を変革して将来的な未曾有の事態に備えるための機会とも捉えることができます」(Gutekunst氏)

Amara Collaboration マネージングディレクター Heidi Gutekunst氏
Amara Collaboration マネージングディレクター Heidi Gutekunst氏

 Gutekunst氏によると、企業文化の改革は複雑なものだという。しかし、改革のステップを3段階に分けて考え、各段階に焦点を絞り、各段階を統合する方法をきちんと理解できれば、改革は難しくないという。

 その3段階とは(1)ビジネスリーダー各自の変革、(2)関係性とコラボレーションの変革、(3)組織としての変革――の3つだ。

(1)ビジネスリーダー各自の変革

 第1段階の(1)ビジネスリーダー各自の変革は、特に最高経営責任者(CEO)と役員に関わるものだ。ここでいう変革とは、リーダー一人ひとりが組織を導く方法と、自社を成長させるために必要なリーダーシップのモデルを構築することを指す。それは同時に、自社が機能する方法をシステム的に注意深く分析するということだ。

 言い換えれば、個人、チーム、組織的なレベルでステークホルダー、既存ビジネス、将来的なビジネスにおける「うちではこうやってビジネスを回す」方法を見直すということだ。

 「コロナウイルスのような不確実な状況下では、ビジネスリーダーが恐怖に駆り立てられることもあるでしょう。人間の恐怖に対する主な反応は戦闘、逃走、フリーズの3つです。戦闘モードにある人は、同僚や外部のパートナーに敵対的に接します。逃走モードにある人は、困難に立ち向かうのではなく、困難から逃げ出します。フリーズモードの人は、恐怖に凍りついて何もできなくなります。これらは、人間の権力や安全が脅かされる時に発生する自然な人間のコーピングメカニズムです。しかし、ビジネスリーダーが恐怖に駆られて行動を起こすと、企業文化、ひいては生産性にまで取り返しのつかないダメージを与えることになります」(Gutekunst氏)

 しかし、同氏によると、ビジネスリーダーが成熟し、自分たちの反応を自覚し、自身の振る舞いを改める方法があるいう。どうすれば良いのだろうか。

 「反応、内省、対応の3ステップを取ることをお勧めします。現在のコロナ禍のようなストレスフルな状況で恐れや不安は簡単に訪れます。ですが、それで良いのです。ただ立ち止まり、自分の反応、考え、感情と感覚に気付いて耳をすますのです。それから自分の反応を内省して、数ある反応のうちどれが役に立つのか、何を考えるべきなのか、どれを忘れるべきなのかを考えれば良いのです。その後状況にあわせて、最も適切、効果的な対応を行えば良いのです」 (Gutekunst氏)

 同氏はまた、「『これは机上の空論だ、ゆっくりすぎる』と思う人もいるかもしれません。しかし、これは問うこと(Inquiry)と行動すること(Action)を同時に行う『リーダーとしての在り方』を確実に成長させるためのステップなのです。Amara Collaborationでは、これを“Action Inquiry”と呼びます」と語る。

 「ビジネスリーダーが学ぶべきことは『先のわからない状態』にいること、そして『わからない』『助けて』『あなたはどう思う?』と周りに言うことです。コロナ禍のような不確実な状況に直面している時、誰も正しい答えを知りません。わからないことを恥じる必要もないのです。複雑なこと、不確実なことを目の前にしている時にできる対応はたくさんあります。しかし、多くのリーダーが『わからないと言ったら自分の権威が揺らぐ』と思っています。実際には、『正しい答えがわからない』と言って弱さを見せられるリーダーは、必要な意思決定を勇気を持って下せるのです。ステークホルダーは誠実な本音の声を評価するでしょう。こうした声はさらなる信頼と忠誠を生むのです」(Gutekunst氏)

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