海外コメンタリー

イーロン・マスク氏の脳コンピューターインターフェース企業が描く未来

Jo Best (Special to ZDNET.com) 翻訳校正: 石橋啓一郎

2020-09-24 06:30

 Elon Musk氏は、この2年間取り組んできたブレインコンピューターインターフェイス(BCI)のプロジェクトであるNeuralinkを初めてお披露目するデモで、「あなたはきっと、あっと驚くだろう」と語った。

 Musk氏が率いるスタートアップであるNeuralinkは、神経学的な問題を解決する技術を開発している。同社が扱う問題は、脳や脊髄の損傷によるダメージから、加齢による記憶障害まで幅広い。同社は、脳内のニューロンが発する電気信号を解釈できる(あるいは将来的には修正もできるかもしれない)デジタル機器を頭蓋内に埋植することによって、これらの問題を解決しようとしている。

 Musk氏は、この技術のデモを行いながら、「これらの信号を修正できれば、記憶喪失や難聴、失明、まひ、うつ病、不眠症、極度の痛み、発作、不安、中毒、脳卒中、脳損傷などのあらゆる問題を解決できるだろう。これらは、埋植可能な神経接続装置によって解決可能だ」と語った。このデモは、同社が開発したデバイスを実際に埋植した生きた豚が登場する、視聴者の意表を突いたものだった。

 ではNeuralinkの技術には、世間の大きな期待に応えられるだけの革新性はあるのだろうか。

 Musk氏が8月末にストリーミングで行ったデモは、Neuralinkが大がかりに最新情報を発表する機会としては、2019年の夏以来だった。Musk氏は今回のデモで、同社の最新のハードウェアを披露した。脳の表面に接続して大脳皮質に電極を埋め込み、データを収集して、分析のために外部のコンピューティングシステムに送信する小さな丸いデバイスだ。

 このシステムのデモンストレーションは、その場に連れて来られた豚を使って行われた。デモでは、豚の鼻が何かが触れた際の神経活動に関するデータが収集され、その情報が視覚的に表示された。

 Musk氏が「頭蓋骨の中の『Fitbit』のようだ」とも述べたこのデバイスのデモは、(カメラに緊張した豚のせいでしばらくデモが滞ったことも含めて)非常に刺激的なものだったが、実際には、今回披露された技術的なコンセプトは、過去にもどこかで発表されたことがあるものだ。これまでにも、人間の脳が発する電気信号に関するデータを収集して、それを機械が解釈可能なデータに変換するBCIはさまざまな形で存在している。

 また、Neuralinkはまだデバイスを人間の被験者に埋植したことはないが、すでにそこまで進んでいる研究機関もあり、何人かの人たちが実際に機能するBCIを装着している。その多くは、脊髄損傷を受けて身体にまひが残り、喪失した機能の一部を回復するためにBCIの助けを借りている人たちだ。(ある有名なBCIの装着者は、ゲームの「Guitar Hero」をプレイできるほど手の動きが回復した)。

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