クラウドコンピューティングへの依存度は高まる一方だろう。多くの組織の基盤インフラストラクチャーとしてすっかり定着したクラウドは、企業の運営と変革をサポートする役割が今後数年でさらに大きくなるはずだ。
アナリスト企業Gartnerは、クラウドに費やす金額を増やす組織は減らす組織の17倍にのぼると見込んでおり、クラウドへの出費が2021年の4080億ドルから増加して2022年には合計4740億ドルに達するとの予測を発表した。
Gartnerによると、デジタルトランスフォーメーションの需要も高まり続けているため、クラウドは今後5年間でさらに重要性が増し、企業と経営者が達成したい目標を実現する主要な要因になるという。
「クラウド戦略のないビジネス戦略などあり得ない。また、達成しようとしているビジネス成果に細心の注意を払わなければ、真のクラウド戦略とはいえない」とGartnerのアナリストのDavid Smith氏は語る。
プロゴルフのヨーロピアンツアーとライダーカップで最高技術責任者(CTO)を務めるMichael Cole氏も同じ考えだ。同氏の組織は現在100%クラウドベースであり、ビジネスとトーナメントのすべてのサービスがクラウド経由で提供されている。
Cole氏は、クラウドへの移行によってビジネスの柔軟性が高まり、IT部門が俊敏に要求に対応できている、と述べた。
「われわれのテクノロジーの俊敏性と、現在と未来のイノベーションを採り入れる姿勢は、長期的な成功を決定づける重要な要因であり続けるだろう」(Cole氏)
ビジネストランスフォーメーションを成功へと導く戦略的プラットフォームがクラウドによって提供されることを認識しているCTOや最高情報責任者(CIO)は、Cole氏だけではない。
Gartnerは、大半の組織(85%)が今後5年間でクラウドファーストの原則を確立すると予測している。これは、新しいアプリケーションがクラウドで実行されるという前定に立ち、その仮定から逆算して作業するということだ。
しかし、CIOは、クラウドの採用が常に簡単であると想定すべきではない。クラウドを利用したいITリーダーは、自社の準備を確実に整える必要があり、これにはある程度の労力がかかるはずだ。
サービスをクラウドに移行すると、社内のIT運用への依存度を下げることができるが、テクノロジー責任者は特定の重要な要素をしっかり掌握する必要もある。
Gartnerによると、クラウドの採用で何が起きるにせよ、戦略、アーキテクチャー、セキュリティ、調達の4つの能力を社内で維持することが非常に重要だという。
「極めて重要な能力であるため、完全にアウトソーシングすべきではない。サードパーティーの力を借りても構わないが、アウトソーシングはしない方がいいだろう」。Smith氏は、Gartnerが先頃欧州で開催したクラウドカンファレンスの講演でこのように語った。
世界的な人材紹介会社Harvey Nashも、CIOはクラウドへの依存度が高まる中で事態を制御できなくなることがないように注意しなければならない、と指摘する。同社は2021年のグローバルリーダーシップ調査で、「混乱状態への転落を防ぐ措置が明らかに必要だ」と警告している。
賢明なデジタルリーダーはすでに行動を起こしており、自らの知識と経験を活かして、クラウド利用の際には必ず、ビジネス部門のリーダーと共同で確立した明確な目標とルールを設定するようにしている。