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APIでレガシーシステムに活路--OpenLegacyのシュテインCEO

國谷武史 (編集部)

2022-05-18 06:00

 メインフレームをはじめとするレガシーシステムは、長らく続くオープン化やクラウド化の動きの中でも依然として企業のミッションクリティカル領域を支え続けている。だが、クラウド化やデジタルトランスフォーメーション(DX)の波は勢いを増し、また、「2025年の崖」と称される旧型の基幹システムを使い続けることでの経済的損失のリスクに直面している。そうしたレガシーシステムに、APIで活路を提供すると打ち出すベンダーが、OpenLegacy Technologyだ。

 同社は2013年にイスラエルで創業し、現在は米国ニュージャージー州に本社を構える。各種メインフレームやデータベースなどの基幹システムとオープン系システムやクラウド環境を接続するためのAPIプラットフォーム「OpenLegacy HUB」を展開。ここでは特許技術などを活用してJavaやC#、Node.jsなどでマイクロサービス化されたAPIを生成する。2021年に日本法人「オープンレガシージャパン」を設立し、国内市場に参入した

OpenLegacy Technology CEOのRomi Stein氏(左)と日本代表の内田雅彦氏
OpenLegacy Technology CEOのRomi Stein氏(左)と日本代表の内田雅彦氏

 最高経営責任者(CEO)を務めるRomi Stein氏は、「われわれは純粋にテクノロジーを提供する存在であり、顧客における実装などのプロフェッショナルサービスはパートナーの役割になる」と自社の立場を明確にする。というのも、上述したレガシーシステムが直面する動向を踏まえ、顧客がレガシーシステムをどう活用するかは、さまざまな目的や考え方があるためで、同社としてはAPIというテクノロジーを提供する立場に徹する姿勢を示している。

 同社の顧客は、Forbes Global 2000やFortune 500に名を連ねる大手金融を中心に、交通や製造、流通など多業種にわたるという。金融の顧客が多いのは、「DX」や「レガシーシステム」「デジタルビジネス」などのキーワードが他の業種より一足早く「FinTech」として具体化しているからだが、「DX」を合い言葉にあらゆる業種がデジタルビジネスとそのためのITシステムの実現に取り組む現在、レガシーシステムと新規システムをつなぐAPIへの関心は高まっている。

 Stein氏は、同社がAPIプラットフォームを提供する意義を「時間とTCO(総所有コスト)の削減」と、簡潔に表現する。クラウド領域を中心に利用されているREST APIのような標準的なAPIとは異なり、レガシーシステムで利用するためのAPIは特にセキュリティの要件が厳しく、自社の環境に即したAPIを自前で開発、管理している企業が少なくない。それ故にレガシーシステムでのAPIの活用には、時間とコストがかかる点が課題になるためだ。

 「むしろ、APIを内製する方がセキュリティのリスクは高いと考えている。DXのためのCI/CD(継続的インテグレーション/デリバリー)のような開発も採用されつつある中で、内製主体のAPIの開発は脆弱性を発生させるなどの危険性があり、不正アクセス攻撃などの原因になりかねない。われわれのソリューションは、レガシーシステムとの接続を高度に抽象化することにより、顧客に柔軟性と標準化、自動化の機会を提供することに主眼を置いている。セキュリティについてもレガシーシステム自体が備える高度な保護機能に影響を与えないので、セキュリティを含めたさまざまな要望に対応できる」(Stein氏)

 Stein氏によれば、レガシーシステムを抱える組織の最高情報責任者(CIO)の多くは、レガシーシステムの将来的な活用に思案を巡らせているとのこと。オープンアーキテクチャーのシステムに移行するにしても、クラウドベースに刷新するにしても、レガシーシステム自体を変えることは膨大な時間やコストを伴いリスクも高く慎重にならざるを得ない。企業の経営層とステークホルダー(利害関係者)からは、DXなどによるビジネスの変革とそのスピーディーな展開のためのITシステムが要求される。Stein氏は、そのために同社がAPIの仕組みを提供していると述べる。

 「先進的な顧客事例として、メキシコのCitibanamexを挙げたい。彼らはメインフレームとのAPIをOpenLegacy HUBで整備したことで、モバイルバンキングをはじめとするさまざまなデジタルサービスの開発、提供に要する時間とコストを大きく削減している」(Stein氏)

OpenLegacyのAPIプラットフォーム
OpenLegacyのAPIプラットフォーム

 日本法人も設立から1年ほどが経過した。代表の内田雅彦氏は、多くの企業訪問を重ねてAPIに対する日本企業のニーズの把握や潜在的なユースケースの発掘に努めてきたという。「日本のお客さまに対しては、われわれのソリューションとパートナーの価値を組み合わせてご提供していく形が望ましいと考えている」と述べ、国内パートナーとの協業体制の整備に取り組み、日本でのビジネスを本格的に始動させていくとする。

 既に島根銀行が導入するなど実績も出始めている。内田氏は、「日本は国産などのメインフレームを利用されているお客さまも多く、お客さまの声を踏まえてOpenLegacy HUBでのサポートも検討していきたい」と話した。

 OpenLegacyを含めAPIのプラットフォームサービスは、複数のベンダーからも提供されているが、Stein氏は競合の存在を基本的にライバルではなくパートナーとして見ているとのこと。特にiPaaS(Integration Platform as a Service)とは連携を深めており、Dell BoomiやGoogle Apigeeなどとは強力なパートナーシップを結んでいるという。

 DXやクラウドなどITシステムの在り方を変えるトレンドは今後も続くと見られるが、その中でレガシーシステムの位置付けが将来的にどうなるかは、まさに企業ごとの判断となるだろう。最後にStein氏は、「われわれが提案したいことは、延命利用のような消極的なものではなく、レガシーシステムの可能性になる。もちろんモダナイズ(近代化)などは中長期的な取り組みになるだろうが、その過程においてもAPIのプラットフォームは貢献する」と、自らの存在意義を強調した。

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