プロセスオーケストレーションで作る変化に強い組織とデータ基盤

DXと「プロセスオーケストレーション」の関係

島田裕士 (Ridgelinez)

2023-01-12 06:30

 近年、デジタルトランスフォーメーション(DX)に取り組む企業が増えている。「DX」の定義は複数あるが、主に企業においては「最新のデジタル技術を活用し、組織の業務効率や生産性を高め、新たな市場価値を生みだして競争力を高める取り組み」と認識されており、具体的な領域としては「クラウドを積極的に活用したIT環境の近代化(ITモダナイズ)」や「新しい開発手法を用いた業務システムやサービスの構築」などが注目されている。

 こうした取り組みが進む半面、企業においては、オンプレミスのITシステムが中心だった時代とは異なる状況と新たな課題が生まれている。それは、組織や業務プロセス、システム、データといった、ビジネスにまつわるさまざまな要素の「サイロ化」だ。

 「サイロ化」は、オンプレミスが企業ITの中心だった時代に、事業部や部署といった単位で、個別に進めたITシステム導入の結果として、それぞれのシステムやデータが孤立する状況を指す言葉として使われてきた。その弊害としては、全社レベルでのシステム連携や、効果的なデータ活用が難しくなる点が挙げられる。しかし、現在の企業では、システムやデータだけでなく、組織や業務プロセスといった、非IT領域における「サイロ化」も進みやすい状況が生まれている。

クラウド時代に「サイロ化」が進みやすい背景

 システムやデータに加え、業務プロセスも含めた「新たなサイロ化問題」が顕在化している背景には、「クラウド活用の普及」に加え「ビジネス環境が変化するスピードの加速」や「市場における競争激化」などの理由が考えられる。

 市場が変化するスピードが増し、競争が激しくなる中で、経営層は現場に対し、「もっとITを活用して業務の生産性を上げろ」「システム構築のコストを削減して、スピーディーに導入しろ」といった号令をかける。折しも、クラウドサービスは成熟期を迎えており、業務プロセスのデジタル化や新規アプリケーションの構築を低コストかつ迅速に実施するのに役立ちそうなサービスが多く市場に存在している。

 各組織が、自分たちに与えられた目標の達成を最優先して、使えそうなサービス、ツールを思い思いに導入し、利用し始める。その際、システムアーキテクチャーや業務プロセスの設計において、全社的な視点が欠如してしまうケースがある。これによって、システムとデータ、業務プロセスの「部分最適化」が進行する。場合によっては、ツール導入に伴う既存の業務プロセスの十分な見直しや改善が行われず、表計算ソフトのファイルによるデータ管理や、“紙とハンコ”によるアナログ作業を残したまま、RPA(ソフトウェアロボットによる自動化)などで局所的な作業や処理を自動化して、現場が満足してしまうケースも出てくる。

 部分最適を優先して全体最適の視点に欠けたシステム導入が、さまざまな組織で同時多発的に行われる先に待つのは、IT部門が十分にガバナンスを利かせることができない、システムとデータのサイロ化だ。クラウドの利用が一般的になったことで、オンプレミスの時代よりも複雑な状況でサイロ化が起きている。DXを指向した「データドリブン」で「リアルタイム」な意思決定を行おうにも、無秩序に導入された複数のクラウドサービスや、業務に不可欠なオンプレミスのシステムを、相互に矛盾なく連携させるのは、極めて難易度の高い作業になる。

クラウド時代にシステム・データ・プロセスの「サイロ化」はより進みやすい(出典: Ridgelinez)
クラウド時代にシステム・データ・プロセスの「サイロ化」はより進みやすい(出典: Ridgelinez)

 では、こうしたサイロ化を回避しながら、クラウドから最大限のメリットを引き出し、なおかつ意思決定に資する鮮度の高いデータを経営者やマネジメントが常に見られるような環境は、どうすれば作れるのだろうか。そうした環境を実現していくための方法論として、筆者の所属するRidgelinezでは、「プロセスオーケストレーション」を提唱している。

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