これからが正念場、IT企業の会計処理

飯田哲夫(Tetsuo Iida) 2005-06-02 20:47:00

『情報ソフト関連企業 会計処理にルール』

多くの方が目にされたと思うが、これは5月27日付け日本経済新聞朝刊の1面見出しである。開始早々ややネガティブなテーマを取り上げることになるが、見て見ぬ振りのできないサイズの記事である。しかも、このタイトルは、「情報ソフト関連企業にはこれまで会計処理にルールがありませんでした」と言っているようなものである。

事の発端

会計処理にルールがないと言わしめた事の発端は、メディア・リンクス事件である。同社は、架空取引によって売り上げの水増しを行っていたが、すべてがそんなに判り易いわけではない。記事でも指摘している通りに、ITサービス企業の会計処理を判りにくくしているのは、ソフトウェアが無形資産であることと、それゆえに売上の計上基準が明確でないことにある。また、何ら付加価値を加えることなく転売を行った場合にも、全額売上げとして計上する慣行がビジネスの実態を判り難くしている。

その後、日本公認会計士協会より「情報サービス産業における監査上の諸問題について」が公表され、今回の企業会計基準委員会及び経済産業省の動きとなる。

そのインパクト

経済産業省の特定サービス産業実態調査によれば、ITサービス産業の年間売上規模は平成15年時点で約14兆円となり、9年連続で増加している。ただし、これは最終顧客からの売上げに加えて同業者からの売上げが加算されたものである。全体に占める同業者からの売上比率は、製造業及び金融業に続き13%で第三位である。

企業会計基準委員会は2005年9月中間期を目処にルール作りを行うということであるから、情報サービス産業の市場規模はそれによって初めて明確になると言える。もちろん14兆円より小さくなるはずであるし、右肩上がりの成長の実態が明らかになるはずだ。

そしてさらに…

しかし、米国を参考とした会計基準の明確化はまだほんの出だしにすぎないとも言える。現在米国では、ソフトウェアのサービス化(Software as a Service)が急速に進行しつつあり、契約形態の複雑化が問題視されている。会計面からはソフトウェアとサービスの中間的形態をいかに会計処理に反映させるかが課題となる。証券市場にも、ソフトウェア企業の企業価値の評価方法を見直す動きもある。

XBRLなど会計処理の自動化と透明化を支援するのもIT業界であるだけに、自らの会計処理の改善なくしてそのビジネスは説得力を持ち得ない。会計ルールすらないと言われる日本の情報サービス業界も、市場の信任を得るために早急にビジネスの実態と会計処理を一致させるべく取り組まなくてはならない。自戒の思いを込めつつ。

※このエントリはZDNetブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および ZDNet編集部の見解・意向を示すものではありません。

SpecialPR