グーグルが提案するオンデマンド型ナレッジ共有

飯田哲夫(Tetsuo Iida) 2005-06-04 15:11:13

グーグルのCEOであるEric Schmidtは、先のガートナー・シンポジウムでグーグルのビジネスを「IT Industry」で括るのは誤りで、「Information Industry」が正しいと言っていた。そしてこのように続けた。

Search concept is still in its infancy. Only a small percentage of all the available content on earth is digitized, althgough Google is boosting that percentage itself by digitizing whole libraries.

つまり、グーグルのビジネス領域は広大であり、その潜在的可能性を自ら掘り起こしているのであると。自らのビジネスの主戦場をどのように定義するかによって、企業の成長力も大きく変わってくるが、Eric Schmidtが上記のような発言をするのも、自らのビジネス領域をITではなくInformation Industryと定義したからに他ならない。もしITと定義していたら、ITを活用した検索技術の鍛錬で止まってしまうだろう(もちろんそれだけでもすごいと思うが)。

グーグルの定義する情報の切り口

さて、グーグルはそのデジタル化された情報を、デスクトップ、イントラネット、そしてウェブという切り口で捉えている。ウェブはもちろんオリジナルのGoogle検索エンジンが対象とする領域である。イントラネットはGoogle検索アプライアンス、そしてデスクトップはGoogle Desktopだ。それぞれのナレッジ共有の範囲で見れば、世界、企業、個人となる。またナレッジの質という点では、主としてドキュメント化された形式知であるが、検索されるドキュメントが必ずしもドキュメントの製作者が完成したものとして提示したものではない、まだ未完あるいはメモのようなものまで含まれることを考えれば、完全なる暗黙知ではないにしても、暗黙知から形式知へ移行過程にあるドキュメントも含まれていると言えるだろう。

これまでのナレッジ共有

企業においてナレッジを共有しようと思えば、形式知についてはファイル・サーバーを立てることもあるだろうし、あるいはCRMなどのように業務アプリケーションそのものがナレッジ共有の役割を果していることもある。また、そこでカバーされないものについては、ナレッジ・マネージメントを支援するための専用ツールを導入して、バーチャルなナレッジ共有の「場」(具体的には掲示板であったり、プロジェクト用フォルダーであったり)でカバーされる。しかし、常に問題になるのが、いかにしてナレッジを共有することへのインセンティブを与え、ナレッジを「場」へ投入するという面倒くさい行為を行わせるかである。営業情報を都度CRMソフトに入力するのは面倒くさいし、作ったドキュメントをナレッジ・マネージメント・システムに投稿するのも面倒だ。その状況を指摘してグーグルはこのように言う。

"Forcing document creators to add meta-data doesn't scale"

所詮ドキュメントの製作者に投稿させようったって無理だと。Meta-dataとあるが、つまり、ドキュメントをパブリッシュするという行為は、何らかのカテゴリー分けや属性の追加といったコンテンツに関する情報付与を伴う面倒な作業であり、どんなに頑張っても限界があるというわけだ。それゆえに、ドキュメントを投稿したり整理分類することはあきらめて、強力な検索エンジンで見つけやすくする方に力を入れようというのがグーグルの主張なわけである。

グーグルのナレッジ共有モデル

もし、ファイル・サーバーやナレッジ・マネージメント・システムを利用したナレッジ共有の形が集中型モデルだとすれば、グーグルによるナレッジ共有は分散型であると言えるだろう。つまり、従来のナレッジ共有は特定の「場」にナレッジを集中することで、その「場」においてナレッジの伝播が図られ、知の新しい結合が実現する。一方、グーグル方式であれば、ナレッジそのものは、ある意味オンデマンドで検索者が検索を実行したときにナレッジの共有が図られ、新しい知の組み合わせが生まれる。ただし、それまではナレッジは分散して存在している。

Eric Schmidtが言うように、デジタル化された情報はまだまだ限定的であり、今後企業がBusiness Intellignece能力を強化する過程で、その量は飛躍的に増大していくと考えられる。そんななかでナレッジを集中管理しようという考え方は馴染まないであろう。すべてが分散管理されている状況が好ましいというわけではないが、比率として整理分類が行える領域が相対的に小さくなっていくことは否めず、その周辺部に広がるものから何かを得ようとすれば、オンデマンド型かつ分散型のナレッジ共有という考え方を積極的に取り入れるのも悪くないのではないか。

ただ、ちょっと気になるのはグーグルがイントラネット検索のために売り出しているグーグル検索アプライアンスのビジネスは、企業向けに検索エンジンをハードウェアと合わせて販売しているという点で、これまでのグーグルの検索サービスとは、対象もビジネスモデルも大きく異なっている点である。かつてYahooやAOLが企業向けのインスタント・メッセージングの世界から撤退したことがあるが、個人向けのサービスと企業向けのサービスでは、必要とされるスキルもリソースも異なるのが常だ。ただの杞憂かもしれないが。

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1件のコメント
  • kenn

    グーグルという企業体の輪郭を定義するものは、あの全社を貫くカルチャーの執拗低音ですから、ああいう組織ほど根本的な価値観の異なる事業で成功するのは難しいでしょう。なので、私も

    デスクトップ検索=○
    イントラネット検索=限りなく×に近い△

    という読みです。少なくともイントラで成果が出るのは早くて5年後でしょうね。

    2005年06月08日

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