アップルがインテルを採用したことの意味

飯田哲夫(Tetsuo Iida) 2005-06-11 14:35:13

アップルによるインテル製プロセッサー採用の話を聞いて最初に思い出したのは、2003年にHPがUNIX製品にインテル製プロセッサー(Itenium)を採用をしたときの話だ。ただし、前回と今回ではその意味は大きく異なる。

インテルの採用 - HPとアップルの違い

2003年当時のUNIX市場ではSUN/IBM/HPの3社が市場を分け合っており、HPのみがUNIX市場で殊更苦境に立たされていたわけではない。むしろ、コンパックとの統合効果を出す必要性からHPはインテルとの共同開発になるItaniumを採用した。これはインテルから見ればハイエンドのサーバーマーケットへのチャレンジという位置づけだ。

一方、今回のアップルはPC市場におけるマーケットシェアがわずか数パーセントしかなく、それ以外はインテル製プロセッサーとWindowsによって占められている。つまり、インテルにとって、アップル陣営の取り込みとは、PC市場におけるプロセッサー標準確立の最終仕上げであったといえる。これによってPC向けのプロセッサーは、特殊用途の高級品は存在しない完全なるコモディティとなったのだ。

当然の帰結としてのインテル採用

アップルがPCの黎明期にスタンダード競争に敗れて後、IBM互換機をベースとしてPCを構成する部品のモジュール化が進んだ。そして、各部品のコモディティ化はPC自体のコモディティ化を促した。一方、アップルはその対極にある統合アーキテクチャーを指向することで独自性を維持し、ニッチマーケットを獲得してきた。ハード、OS、そして周辺機器に至るまで全てを自社開発した。プロセッサーはモトローラあるいはIBMとの共同開発であったが、あくまでApple専用のものであり続けた。当然高価なものとなる。

しかし、Wintel陣営のPCとの価格差があまりに拡大したために、完全自前主義から脱却を図ってきたのも事実である。周辺機器などから徐々にサブコントラクトでの開発・生産へと切り替えることで価格を抑える努力が行われた。そして今回はそれがプロセッサーに及んだということになる。IBMが収益性の懸念から少量生産のチップ開発に積極的ではなかったというのが表向きの理由であるが、つまりはコモディティ化が進んでいる領域であるが故にスケールメリットが必要ということである。

インテル採用の意外性

しかし、一方で今回のインテル採用が意外であったという声も強い。PCアーキテクチャの標準化に関して勝負が決してから既に長い年月が経っており、その中でMacはニッチなポジションを築いてきた。また、iPOD効果でMacの売上げにも良い影響が出ている。そんななかで、ユーザーにスイッチングコストを強いることとなるプロセッサーの変更は、顧客喪失のリスクを背負うことを意味する。また、Macそのものの独自性も妥協を強いられることとなるだろう。

それでもこのタイミングが絶妙であったと思えるのは、アップルのブランド牽引力がMacからiPOD/iTunesに移ろうとしている中でのアナウンスであったからだろう。仮にPCそのものの独自性が薄れることとなったとしても、アップルのユニークさは既にPCのみに依存しているわけではないのである。

コモディティ化は全ての終焉か

とはいえ、携帯音楽プレーヤーも、DELLの攻め込んできているエリアである。つまりコモディティ化が進行中なのだが、そうした環境下でアップルはいかにして戦うのか。

モジュール化は部品ひとつひとつを均質なものへとしていくが、それは、その組み合わせ方が生み出す世界をも均質なものとすることは意味しない。完全なるコモディティを売る2つの店があったとして、その両者が全く同じように見える必然性はないのである。アップルが持っていてデルが持っていないもの。アップルがそれをどのように持続していくのか興味深く見守りたい。

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