サンの対Linux戦略に見るスタンダード競争の難しさ

飯田哲夫(Tetsuo Iida) 2005-06-18 12:34:21

ZDNetのニュースで『敵対から共存へ--サン、Solarisの戦略で心変わり』という記事が報じられた。サンの対Linux戦略の変化を捉えたものだが、UNIXの世界ではPCと違ってOSのスタンダード競争がいまでも熾烈に繰り広げられている様が伺える。ところで、サンは本当に共存を目論んでいるのだろうか?スタンダード競争という観点から今回のニュースを解釈してみたい。 

記事の概要

記事によれば、サンはこれまでLinux上で動くアプリケーションをSolarisでも動くようにする「Janus」と呼ばれるアプリケーションをSolaris10に搭載する予定であった。しかし、サンはJanusよりも、複数のOSを一台のコンピューターで動かすことを可能とする「Xen」と呼ばれるオープンソースをより強く押し出していく方針とした。JanusがLinuxからSolarisへの移行を促すものであるのに対し、XenはLinuxとSolarisが共存することを目指すものである。

スタンダード競争の観点からみると

スタンダード競争の観点からみると、今回の戦略の変化は勝負のレイヤーをオペレーティング・システムからハードウェアへと一段下げたものと見ることができる。

JanusはSolarisに対応できるアプリケーションを、Solaris向けに開発されたものに加え、Linux向けに開発されたものにまで拡張させることが可能だ。つまり、Solarisで稼動するアプリケーションの数が格段に増えるので、オペレーティング・システムとしての価値が高まる(ネットワーク効果が大きくなる)わけだ。

一方、Xenはサンのハードで稼動するオペレーティング・システムをSolarisに限定せず、Linuxなどへも拡張させることを可能とする。結果として、サンのハードで稼動させることが出来るオペレーティング・システムの種類が増え、それは対応するアプリケーションの数も増えることを意味する。ここで価値が高まるのはサンのハードウェアということになる。

なぜ心変わりしたのか

このように解釈すると、サンが敵対から共存へとSolaris戦略を転換したという話は奇異に聞こえる。OSのレイヤーとハードのレイヤーのそれぞれにおいて、サン製品のネットワーク効果の強化を狙ったものであり、どちらか一方を選択しないといけないというものではない。記事の中で引用されているサンのマーケティング担当ディレクターTom Goguenの言葉がなぜ比重をXenに移さざるをえないかを表しているかもしれない。

「...動作の保証されたデータセンターアプリケーションを走らせるとなれば、動作の保証されたソフトウェアスタック上で実行すべきだろう」

つまり、Janusの提供によってLinux向けのアプリケーションをSolarisで稼動させるには若干の不安がつきまとうということだ。それがハードウェアのレイヤーに移るとどの程度安心なのかは不明だが、戦略上両者が矛盾するとは思われない以上、Xen重視の理由は動作保障の問題にあると解釈できる。

サンの競争優位は確保できるか

では、Xenを重視することでサンの競争優位は確保できるであろうか? Janusはサン独自のものであるが、XenはオープンソースでありIBMやHPも支持を表明しているという。もし、競合他社も同様の対応を行ったとすれば、複数OSを稼動させるという目的のためにハードをサンとする必要性は薄れる。すると、結果的に競争は再びオペレーティング・システムのレイヤーでのスタンダード競争へ戻ることとなる。

従って、Xenそのものが長期に渡る優位性をサンにもたらすとは考え難いが、サンに時間的な猶予を与え、現在推し進めているSolarisのオープンソース戦略の成功確立を高める効果があるだろう。最初の問いかけに戻れば、Xen重視は必ずしもLinuxとSolarisの共存へ繋がるものではない。その途中経過として、そうした状態が生じることがあるとしても。

※このエントリはZDNetブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および ZDNet編集部の見解・意向を示すものではありません。

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