グーグルのオンライン決済システムに関して思うこと

飯田哲夫(Tetsuo Iida) 2005-06-23 01:43:42

eBay傘下のPayPalが新しいオンライン決済パッケージのリリースを発表した頃、それを狙い撃つかのようにグーグルによるオンライン決済システムの開発に関するニュースが流れ始めた。決済とは本来金融機関のビジネスであったが、こうしたオンライン決済の話となると金融機関はむしろ脇役であるというのは面白い。

さて、先の噂によって、本来であれば上がって欲しかったであろうeBayの株価は押し下げられることとなり、更にグーグルCEOのEric Schmidtは噂が本当であることを認めた。Information Week誌の記事を引用すると以下のようになる。

Google Inc. CEO Eric Schmidt on Tuesday denied recent media and analyst reports that the online search engine leader is gearing up to compete directly with eBay Inc.'s pioneering PayPal service, although he acknowledged some kind of electronic payment product is in the works.

直接に競合するわけではないようだが、何らかの決済システムはやはり開発しているわけである。自分たちの事業領域を"Information Business"と定義していただけに、決済はちょっと違うんじゃないかと思ってしまうが、オンラインの決済は所詮データの交換であることを考えると、それもありとも言える。

日本だと銀行の運営する小口の決済システムといえば全銀システムである。銀行間がネットワークで接続され、相互のネット尻が最終的に日本銀行で決済されるという大掛かりな仕掛けである。当然、初期の開発コストも運営コストも膨大である。しかも、参加銀行が潰れた時のことまで考慮した仕組みとなっている。そのためにほとんどの銀行が振込手数料を取るわけである。(百円から数百円程度か)

一方、オンライン・ショッピングは小額のものが多いため、いちいちそんな振込手数料は払っていられない。そのためにPayPalのようなサービスが出てくるのである。これはクレジットカードで事前に決済用のデジタル・キャッシュを購入しておき、それを使って支払を行うわけである。それを受領した側はデジタル・キャッシュのままで使っても良いし、必要であればそれを現金化することも出来る。先の記事によれば、PayPalのアカウントホルダーは既に7,200万人に達するという。

それにしても、決済ビジネスなのに金融機関ではなく、eBayというネットビジネス企業が運営しているところが面白い。仮に銀行が行おうとしても、米国でも銀行は小口決済用のインフラに設備投資をしており、その収入を減らしてしまう仕組みには積極的には取り組めないという事情があるのだろう。オンラインの小口決済が金融機関ではないところから始まるというのは、ある意味必然なのかもしれない。日本でもMondexやVisaCashのような電子マネーが、当初金融機関主導でうまくいかなかったのに、SuicaやEdyが急速に広まっているのも同じ理由によるのではないか。

とはいえ、これだけ小口ネット決済の仕組みが一般化してくると、果たして問題はないのか疑念も湧いてくる。1件1件は小口とはいえ、スモール・ビジネスはその集積によって成り立っていたりする。仮にそのネット決済のシステムが止まれば資金繰りに窮する企業が出るかもしれない。また、デジタル・キャッシュが何らかの事情で消去されてしまったり、あるいはその運営会社が破綻したときにどうなるのか。

銀行であれば規制も厳しく、また破綻時の対策も練られているが、オンライン決済会社は銀行ではないため国によって規制のレベルもばらばらである。PayPalのデジタルキャッシュであれば、それはあくまでクレジットカードによって購入したポイント(あるいは私的な通貨)であり、その通貨の信用力は発行体の信用力に依存するはずである。もし、発行体に兌換する力がなくなれば、そのデジタルキャッシュはリアルキャッシュに戻らないのである。

しかし、本来リアルキャッシュの価値を持たないオンラインゲームの中の通貨とリアルキャッシュの為替マーケットも成立している時代、果たしてリアルキャッシュの方が本当に価値があると言えるだろうか?

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