時空を超えるGoogleのビジョン

飯田哲夫(Tetsuo Iida) 2005-07-31 19:17:35

Google Moonが公開されて10日になる。オンライン上で10日前の話題に触れるのは、気が引けてしまうのだが、Googleのここ最近の動きから感ずるところがあり、敢えて取り上げてみる。ここ最近の動きと言っても、話題には事欠かないGoogle関連動向の中でも以下の3つをネタに議論してみたい。

・自らのビジネス領域を"Information Industry"と定義してみせたGoogle CEO Eric Schmidtの発言

 (詳しくは6月のエントリー「グーグルが提案するオンデマンド型ナレッジ共有」を参照下さい)

・書籍のデジタル化プロジェクト "Google Print"

・地理情報のデジタル化 "Google Maps" "Google Earth" そして "Google Moon"

時空を超えるデジタルデータ

さて、Eric SchmidtはGoogleのビジネスをIT IndustryではなくInformation Industryに属すると定義した。そして、その広がりをデスクトップ、イントラネット、ウェブという切り方をしているが、これは検索者から見た領域の定義である。一方、その検索領域の中に検索対象物が多いほど、Googleの存在意義は大きくなる。そこで、Googleは検索可能なデジタルデータを自ら作り始めた訳である。

書籍のデジタル化は過去のナレッジを時間を越えてデジタル・データとして蓄積していくことの試みである。一方で地理情報のデジタル化は、位置情報を空間を越えてデジタル・データとして蓄積していくことを目指している。つまり、Googleは時間と空間の両軸からデジタル化を押し進めているわけだ。あるいは、目に見えないもの(知識)と目に見えるもの(地理)のデジタル化であるとも言えるかもしれない。

Googleのビジョン

さて、検索エンジンからスタートした企業が、単にそこにあるものを検索することに満足せず、検索対象となる領域そのものまで拡大していくという行動原理はどこから来るのだろうか。しかも、書籍であれば大学の蔵書まで、そして地理情報であれば月にまで及ぶ徹底ぶりである。そして目指すところは"Universe"である。

今回、Google Moon自体を単なるお遊びと思った人も多いだろうが、私が興味を引かれるのは、現段階でのGoogle Moonそのもの以上に、2069年にGoogle MoonとGoogle Localを一体化するという構想である。つまり、2069年には月面上でのローカル検索が必要となるくらいに月面は開発されているということを前提としている。2069年は、人類が1969年に月に降り立ってから丁度100周年ということである。(ちなみに、1969年に生まれた私は100歳まで生きればGoogle Localで月面旅行のためのホテル探しをGoogleで行えるかもしれないわけである。こちらは、どうでもいい話ではあるが…)

ビジネス・プランというのは往々にして現在から出発して、3年後、5年後とキャッシュフローを予測していくものだが、そんなやり方で2069年に月面上での検索を可能にする、とか月面上に研究開発センターを設立するなどというプランは出てこない。これこそ50年後、100年後に実現したいビジョンを先に持ち、そこから現在へ遡って今成すべきことを実行するという発想の転換が必要になる。Google Copernicus Centerはまさに今、求人中であるが、冗談でありそうであって冗談でないかもしれないのは、将来のビジョンがあるからである。Google Copernicus Centerの求人広告に以下のような一節がある。

With the establishment of the Copernicus Center, Google's mission has grown beyond "organizing the world's information and making it universally accessible and useful." Our new goal is to "organize all the useful information in the universe and serve it to you on a lightly salted cracker."

つまり、Googleはその検索対象を地球上の我々の世界から宇宙へと拡大することを目指し、その具体的な第一歩を踏み出そうとしているわけである。

Googleから学べること

Googleは自らをInformation Industryに位置づけIT Industryと一線を画したが、IT Industryに今欠けているのは、こうしたビジョンであるかもしれない。顧客へ提示できる30年後、50年後のビジョンが弱いがゆえに、顧客にとっても、そこで働く者にとっても魅力が薄れているように見える。ここ数年苦境続きのSI業界などは、現在を起点とするビジョンを立てても実に寂しいものとなる。いっそのこと50年後のIT業界をまず思い描くところからスタートしてみたいと、Google Moonは思わせてくれるのである。

ところで、余談であるが釣りの好きな人はこちらもどうぞ。

※このエントリはZDNetブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および ZDNet編集部の見解・意向を示すものではありません。

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