脳力の開放

飯田哲夫(Tetsuo Iida) 2005-09-02 01:23:21

ヨーロッパで人気を博している"Big Brother"というテレビ番組がある。元々は他人同士であった人達を10人集めて共同生活をさせ、彼らを24時間モニターし続ける。その生活はインターネットで常時覗き見ることができる。視聴者が投票によって人数を徐々に絞っていき、最後まで残った人が優勝となる。くだらない番組なのだが、そこで起きる出来事は、人間生活の縮図であるが故に、ついつい見てしまうのである。オンラインゲームの話題についつい興味を引かれてしまうのも、その世界がゲームの住人によって繰り広げられる政治・経済の縮図のように見えるからかもしれない。ということで、再度オンラインゲームの話題を。

先日は韓国人ゲーマーがゲームをやり続けて死んでしまった話を書いたが、今回はゲーム内で強盗を働いた中国人が日本で警察に捕まるという、これまたリアルとバーチャル、そして国をも跨った話についてである。このニュース"Student Arrested For Robbing Another Player Inside An Online Game"と題されて、InformationWeekで見つけたのだが、読み進んでみるとニュースソースは毎日新聞、そして事件は香川県で起きていた。しかし、ゲームは韓国のNCsoftの開発した"Lineage II"、そして、オリジナルの毎日新聞によれば、捕まったのは中国人留学生であった。

さて、オンラインゲームの中で強盗をするために、犯人は特殊なプログラムで強力なキャラクターを作っていた。これを使って奪うのはゲーム内で流通する通貨やゲーム・アイテムである。犯人はこれらを奪ってeBayのようなオークションサイトで販売し、リアルマネーを獲得する。過去のニュースを紐解けば、強盗以前にもオンラインゲームの世界でのオフショアリングもあれば、投資銀行設立なんていう話もある。強盗の話を聞くと、ゲームの世界そのものも、悪い面も含めて妙にリアルになっているが、ゲーム人口の拡大によってリアル経済との繋がりもますます強くなっている。

では、リアルとバーチャルがどこまで接近していくのか興味を引かれるが、既にコンピューターと脳を直結させるというのはかなり実用に近いところまで来ているようなのである。池谷祐二氏『進化しすぎた脳』によると、脳の電極からの指令でものを動かすなんていうネズミの実験の話が載っている。脳に刺した電極と吸水器を連動させることで、ネズミが水を飲みたいと思うだけで水が出るような仕組みが出来てしまうという。人間に対する臨床実験では、体が麻痺してしまった人への応用が考えられているという。これは裏を返せば、電極を通して脳に対して指令を与えるということの可能性も示唆している。先の本には、ネズミの行動を電極を通してコントロールするなんていう話も載っているが、幸いこちらにはまだ人間での臨床の話は出ていない。

我々のマン・マシン・インターフェースは今のところ、目・手・耳といったところだが、こんな間接的インターフェースを通り越して、脳直結のインターフェースが実現したらどうであろうか。先ほど紹介した本のタイトルは「進化しすぎた脳」であったが、その意味するところは、肉体が脳の制約になっているということである。著者は、もし人間の手の指が20本あれば、我々の脳はそれらを操ることができるだろうと予測する。もし、それが事実なら、脳がコンピューターに直結されることで、新しい「指」を手に入れたなら、人間の脳は更なる力を発揮するのかもしれない。あるいは、逆に高性能なグリッドとして使われてしまうのかも。。。 

リアルとバーチャルの近接は、脳がコンピューターを間接的に操るうちは、あくまでリアルのアナロジーとしてのバーチャルに留まるが、脳がコンピューターに直結したとき、その境界は喪失し、進化しすぎた脳の力が解き放たれるに違いない。恐ろしくもあるが、是非体験してみたいものである。

さて、久々に釣り好きの方はこちらもどうぞ。

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