秋である。テレビではユニクロのカシミヤセーターのCMが流れ始めた。4,990円からである。ルディー和子氏「マーケティングは消費者に勝てるか」によると、 本来は高級品であるカシミヤをコモディティ化させたのはユニクロであるという。ユニクロがは2003年に低価格のカシミヤセーター60万枚を売り切り、他社も追随したためにカシミヤセーターが一気に値崩れしたということのようだ。そんななか、IT業界のユニクロであるデルは、InformationWeek誌に言わせると、パソコン版のレクサスを売り始めたのである。
デルの高級品
実に違和感のある響きである。ちょっとInformationWeek誌の言葉を引用してみよう。
In unveiling its "Lexus" line of PCs that are priced as high as $6,000, Dell Computer is targeting the carriage trade...
これは、デルが9月28日より発売を開始した「XPS」と呼ばれるハイエンド・シリーズについて書かれた記事の一部である。記事はXPSをトヨタのレクサスに喩え、富裕層をターゲットにしているとしている。
CNETの伝えるところによると、デルはPCの売上の成長率が鈍化しつつあり、それがハイエンドモデルの強化に繋がっているのではないかと言う。
ちなみに、トヨタがレクサスを国内へ投入した背景にも、国内市場の利益貢献度を高めたいという目論見があったという。とすれば、デルもトヨタも、収益率を向上するための高級モデルの投入といえるが、何かこの両者の間には決定的な違いがあるような気がする。
冒頭に引用したユニクロも更なる成長を目指して、NYにデザインスタジオを設立するなど、商品力強化に余念がないが、それでもユニクロが金持ち向けの高級品を売り出すとはちょっと考え難い。
ちょっとこの3社を比較して、「デルの高級品」という響きが持つ違和感について考えてみよう。
ユニクロとデルの違い
ユニクロがカシミヤをコモディティ化した、という表現に象徴されるように、ユニクロは基本的には高級品を自分達の低価格領域へ引き込んでくるというやり方だ。そしてその裏にはオペレーションの徹底した効率化がある。デルも基本的には同じことをやってきたわけで、デルが手がけたは製品はコモディティ化するよう運命づけられる。あるいは、コモディティ化できるものしかデルは取り組まないのである。
今回もこれまでの流れと同様に、ハイスペックなマシンをコモディティ化する流れと捉えれば良いのかもしれないが、デルのホームページでもXPSは、「飽くなき高スペックと拡張性を追い求めたハイパフォーマンスモデル」と紹介されているし、価格レンジもレクサスと揶揄されるほどにこれまでのものより高いのである。
レクサスとデルの違い
では、高級品を高級品として売るレクサスとデルはどう違うのだろうか。トヨタはレクサスを日本に展開するにあたって、あえてトヨタとはブランドを分離してホテル並みと評される販売店と接客を実現している。ホームページもトヨタ車がtoyota.jp配下にあるのに対し、レクサスはlexus.jpと完全に独立しているのである。つまり、価格も製品もオペレーションも全て高級志向で統一している。
一方、「飽くなき高スペックと拡張性を追い求めたハイパフォーマンスモデル」であるデルのXPSは、メニューがDimensionシリーズとは数ミリ離れているのみで、あくまでデルブランドであるし、販売方法も当然オンラインである。商品のみが高級志向となったということである。
違和感の源泉
という感じで3社を比べてみると、デルの高級品に漂う違和感の源が見えてきた。つまり、コモディティ化された製品を効率的なオペレーションで販売することに強みを持つデルが、コモディティでない製品(高級品)を販売しようとしている、しかも、効率的には販売できない相手(富裕層)に販売しようとしている、のが妙なのである。
とはいえ、これはあくまで違和感の原因を推測してみたまでで、実際にはデルは今回の製品も十分にコモディティ化してくれるのかもしれないし、ハイエンドの製品もしっかりオンラインで売り抜くかもしれないのである。どう期待を裏切ってくれるのか楽しみである。
※このエントリはZDNetブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および ZDNet編集部の見解・意向を示すものではありません。
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