グリッドコンピューティングと企業組織のアナロジー

飯田哲夫(Tetsuo Iida) 2005-10-15 23:25:49

最近、グリッドコンピューティングが新しいフェーズに入りつつあるような実感がある。この分散型の処理形態、組織論と重ねてみると、これからのビジネスのあり方を示唆しているようで面白い。

グリッドコンピューティングの現在

新しいフェーズに入りつつある、といってもあくまで個人的な実感なので、グリッド技術に携っている方からすると鈍すぎるのかもしれない。しかし、業務系システムでの実案件でも出てきているし、日本HPが金融グリッドセンターを立ち上げたのもニーズの高まりが背景にあるということだ。

日本では個別システムをターゲットとしたものが中心のようであるが、欧米の事例ではグローバルベースでコンピューティング・リソースをシェアするものも出ている。例えば、このニュースでは、Bank of Americaの投資銀行部門が、3000台のマシンを連結したグリッド環境を構築したことが報じられている。更には、そのコンピューティングパワーをグローバルベースで利用しているということである。

こうしてみると、グリッド技術も学術利用からビジネスユースへ、そしてアプリケーション・レベルからエンタープライズ・レベルへ、ローカルからグローバルへとその活用が拡大していることが見て取れる。

"More than Moore"としてのグリッド

前回のエントリーで"More Moore"と"More than Moore"というコンピューティング・パワーの拡大へ向けた二つのアプローチについて触れた。"More Moore"は、ムーアの法則に則ってトランジスタの集積率を高め、一つ一つのコンピューターの力を強化していく方法である。"More than Moore"は、ムーアの法則には則らない、それ以外の方法ということになる。

さて、グリッドコンピューティングとは、比較的安価なコンピューター、場合によっては個人用のPCなどを連結し、これらに対してジョブを分散して投入し、並列処理を行わせることを言う。一つ一つは大したことなくても、全てが並列で処理を進めることにより、強力なコンピューティング・パワーを引き出すことができる。つまり、これは"More than Moore"なやり方ということになる。

組織論とのアナロジー

グリッドコンピューティングといえば、ついつい大量の安価なサーバーを連結させることで実現しているGoogleのデータセンターの話が思い起こされる。"More Moore"ではなく"More than Moore"を実践しているわけだ。そして、そのGoogleは、全社的にBlogを導入して社員間の連携が図られているというのも有名な話である。

一つの企業を考えたとき、より優秀な人材を採用し、社員を徹底的に教育したとしても、それはムーアの法則を追い求める場合と同様に、徐々に費用対効果が見合わなくなってくるポイントがあるはずだ。それならば、社員教育はほどほどとして、社員間の連携がよりうまく行くようなネットワーク型の組織を作った方が、トータルの力が発揮される可能性がある。

とはいえ、人材をローパワーのCPUと考えれば良いと言っているわけではない。より専門性の高い業務領域においては、組織のサイズよりも一人一人の人材の質がより重視される。また、組織が大型化しても、メンバーの強みに多様性が無ければ組織としての力が発揮されることもない。

しかし、グリッドコンピューティングのアナロジーで言えば、チームワークのない優秀な人材を集めた企業より、チームワークに長けたほどほどに優秀な人材を集めた企業の方が、高いパフォーマンスを出すに相違ない。グリッドコンピューティングでは、ジョブを制御するグリッドミドルウェアの役割が重要になるが、グリッド型組織においては、グリッドをマネージするスキルがより重要になるのである。

おまけ

ところで、今週、駐車場で車の窓を何者かに割られてしまいました。窓はすっかりグリッド模様でかなりへこみました。触るとボロボロ崩れるあたり、一度芯を失うと一気に崩壊するのもグリッドの怖さかなと思いました。

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