1ヶ月前に吉祥寺を歩いていたら、ヒゲ剃りを貰った。正確には、替刃式のヒゲ剃りのホルダーに刃が1つ付いたものを貰った。別に流行のバズ・マーケティングを狙ったキャンペーンなんかではない。男が「髭剃りはやっぱりSchickだよね」とかいう会話を交わすことはないのである。
貰うのは2回目、刃の枚数も2倍
私の後ろで貰った人は、「やった〜、得した」と喜んでいたが、貰うのが2回目である私は、「あぁまたやられてしまった」と思うのである。前回貰ったのは5年前か、あるいはもっと前だったかもしれない。前回は渋谷、やはりShick。その時は2枚刃であった。そして今回は何と4枚刃。5年以上も使っているヒゲ剃りのホルダーは、いい加減汚い。だから新しいのを貰ったら、やっぱり古いのは捨てる。
そして、そろそろ刃を替えたいなと思ったときに、改めて思うのである。あぁ、また完璧にロックインされたと。ヒゲ剃りホルダーなんて、何個も買うわけないし、タダでもらったんだから、それを使い続けるものである。そして今回、刃が増えた分だけ替え刃も高い。そして、当然のように、ITっぽく言えば、下位互換性はないのである。つまり、2枚刃は4枚刃用のホルダーには装着できない。
プリンターのカートリッジ
このヒゲ剃りの話で連想してしまったのが、プリンターのカートリッジである。先日(10/31)の日本経済新聞朝刊にキャノンが、カートリッジのリサイクル品を販売する業者に対して訴えを起こしているというニュースが取り上げられていた。同様のニュースがHPでもあった。結構前から議論されているテーマだが、プリンター・メーカーが特許を保有するプリンター・カートリッジに、インクを再充填してリサイクルするのが特許侵害に当たるのか否かという話である。
リサイクルといえば、環境に易しく良い話と思えるが、プリンター・メーカーにとってはビジネスモデルが崩れるのでまずいのである。プリンターは、一度買えば当面同じものを使い続けることになり、その間は何度もインクカートリッジを買い換える。先ほどのヒゲ剃りの替刃と一緒である。つまり、ロックインされてしまうのだ。それゆえに、プリンタ本体の価格を抑えつつ、カートリッジで収益を上げるというモデルは、ビジネスとしては十分合理的なのである。
プリンターは、購入時にカートリッジがいくつか付いてくるので、カートリッジが意外と高いことに気が付くのは購入後しばらく経ってからとなる。だからといって、消費者に安いリサイクル・カートリッジを買われては困るのである。なぜなら、プリンター・メーカーは、カートリッジからの収益をビジネスプランに盛り込んでいると思われるからである。ヒゲ剃りホルダーを無料で配ったのに、誰も替刃を買ってくれない、といったような状況になってしまうのだ。
顧客ロックインの限界
とはいえ、最近は写真を家で印刷することも多くなって、プリンターのヘビーユーザーもかなり増えたのではないだろうか。とすると、消費者の側も賢くなって、プリンターを初期コストだけでなく、カートリッジも含めたランニングも合わせて見るようになってくる。環境への意識も徐々に高まり、ごついカートリッジが使い捨てという方が不自然に見えてくる。そんな違和感を感じるポイントが、ロックイン戦略の限界ではなかろうか。
ならば、いっそのこと、カートリッジの仕様を公開して、いろいろな会社にカートリッジを作らせてカートリッジの低価格化を推し進めるメーカーが出てこないものだろうか。そのかわり、このプリンターメーカーはカートリッジからの収入が限定的となるため、プリンターの値段を上げることになる。でも、ヘビーユーザーなら、カートリッジの安いこのプリンターを買うかもしれない。
顧客をロックインする戦略というのは、ある一定のレベルまでは供給側のビジネスモデルを安定させ、顧客側と供給側の双方にメリットをもたらす。しかしながら、それが一定のレベルを超えると顧客側には徐々に不信感が芽生え始める。そんなポイントが、ロックイン型ビジネスがそのモデルを転換すべきタイミングなのかなと思う。これは、今のIT全般でまさに起こりつつあることでもある。
ところで、ヒゲ剃りの替刃ももうちょっと安くならないものですかね。5年後には8枚刃にロックインされてしまうのでしょうか?
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