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あなたの名前で売れますか? - AppExchangeの正式リリース

飯田哲夫(Tetsuo Iida)   2006年1月23日

イギリスの大手スーパーマーケットでは、製造元のブランドで売られている商品が非常に少ない。ほとんどの商品が、そのスーパーマーケットのブランドで売られており、製造元の名前で売られているのは、ケロッグやコカコーラのように非常にブランド力の強いものに限られる。これは、リテーラーが巨大化した結果、リテーラーのブランド力が製造元のブランド力を上回ったために生じた現象である。

さて、ソフトウェア業界においては、Salesforce.comが、「AppExchange」と呼ばれるソフトウェアのオンデマンド・マーケットプレイスを正式にオープンした。参加するソフトウェア企業はAdobeやSkypeのようなメジャーどころから、聞いたこともないソフトウェア会社まで160に及ぶ。果たしてこのソフトウェアのオンデマンド・マーケットプレイスはイギリスの流通業界で起きたように、ソフトウェア会社のブランドを消し去るのだろうか?

AppExchange

AppExchangeは、Salesforce.comが同社のASP型CRMソフトのプラットフォーム上に構築した、アプリケーションの共有・配布の仕組で、CEOのMarc Benioffは、これをiTunes Music Storeになぞらえた。ソフトウェアのタイプにより、オンデマンドで利用するものもあれば、ダウンロードしてオフラインで利用するものもあるようである。160に及び企業がソフトウェアを提供し、ダウンロードは既に1,500を超えているという。

AppExchangeのページを実際に覗いてみると、まるでAMAZONの書評のように、ユーザー評価に基づいてアプリケーションのランキング情報が掲示されている。internetnews.comは、Salesforce.comの話として以下のように伝えている。

 

"...the company hopes that a wide range of applications will compete for a place in its ecosystem..."

 

う〜ん。これでは、まるでスーパーマーケットで製造元企業がシェルフ・スペースを争っているのと全く同じ状況である。しかも、そこでは大手企業も中小企業も同列に並べられてしまうのである。

SOAの世界での競争

AppExchangeのオンデマンド・プラットフォームは、そこで提供されるアプリケーションをWebサービスで連携させたSOAの実現を可能とする。そして、以前から指摘されていたことであるが、SOA環境下においては強大なセールス・パワーを持たなくても、SOAプラットフォームを提供するベンダーの傘下において中小の優れたソフトウェア企業がマーケットに参加し易くなる。

AppExchangeにおいても、多くのソフトウェア会社はメジャーとは言えない企業である。これらの企業は、自らのブランド力ではなく、Salesforce.comのブランド力のもとに自らの製品を市場に送り出すわけである。しかし、このSOAプラットフォームが強大化していけば、今はメジャーと言われているソフトウェア会社もプラットフォームのブランド力に飲み込まれていく可能性は否定できない。先ほどの引用の続きには、こうある。

 

"...salesforce.com also announced a partnership with Tata Consultancy Services, an IT consulting, services and business outsourcing company based in India. Tata will develop and deploy business applications on AppExchange, starting with a series of call management applications to extend salesforce.com's Service and Support offering."

 

もし、この話にあるように、Salesforce.comがAppExchange上でアプリケーションの提供範囲を拡大していけば、他のソフトウェア会社は自らのブランドではなく、全てSalesforce.comブランドの製品を供給するようになってしまうかもしれない。

生き残りの策

そうした中、イギリス流通業界を参考にすると、ソフトウェア企業の生き残り策は2つある。一つは、強力なブランドを作り上げ、販売チャネルに対する交渉力を維持すること。ケロッグのないシリアルの売り場は、シリアル売り場ではないというくらいに。あるいは、ノンブランドとして、オンデマンド・プラットフォームへ効率的に製品を供給する裏方に徹するかだ。それはそれで立派なビジネスにはなる。

しかし、ソフトウェア・インダストリーは、もちろん流通業界とは異なる。単品で消費される消費財と違って、ソフトウェアは組み合わせて利用される。そこには、SOAのインテグレーション・ビジネスがある。また、全てのソフトウェア領域がSOAに馴染むかどうか、という点の見極めも重要だ。

Salesforece.comはどうか?

AppExchangeは、ソフトウェアのサービス化の動向をリードしている。それゆえに、そこから派生して起きることが、ソフトウェアビジネスの将来を占う上で重要だ。一方、以前のエントリーでも触れたが、Salesforce.comもCRMソフトの領域においては、オープンソースであるSugarCRMに追われる立場にある。

しかし、今回提供されるAppExchangeは、CRMビジネスの先行者として確立したユーザーベースの上に成り立つ付加価値であり、競合他社が容易に真似のできるものではない。そうした点においても、AppExchangeは評価できるだろう。しかし、今後SugarCRMのユーザーベースが拡大を続けたときに何が起きるかはわからないが。

※このエントリはZDNetブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および ZDNet編集部の見解・意向を示すものではありません。

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