ハサミ型シュレッダーとデルで考察する競争優位

飯田哲夫(Tetsuo Iida) 2006-08-19 08:18:37

新しいビジネス企画を打ち立てるのは結構難しい。日々の業務に忙殺されて新しいアイデアには枯渇しているのが実情だ。そんななか、会社の同僚であるM田君が、「情報セキュリティーソリューションでいいのがあるんです。是非うちの会社でも取り扱ましょう!!」と言って来た。

おぉ、さすが若手のホープだ。それでそれでと見せてくれたのが、このプロダクト

あぁ、我が社は社員教育の根本から見直さねばならない。そう、競争優位性の何たるかをしっかりと押さえる必要がある。

さて、先週はHPデルが対照的な四半期報告を行った。特にPC分野において、HPはデルのシェアに肉薄した。デルは価格競争で収益面でも振るわなかったが、一方のHPはコスト削減で収益を大幅に改善した。かつては圧倒的な強さを誇っていたデルの低コストモデルであるが、その競争優位性が失われつつある。

競争優位性とは

一般に競争優位とは、以下の3つの条件を満たすことによって成立すると言われている。

1. 顧客にとって価値がある

2. 競合他社より収益性が高い

3. 容易に真似が出来ない

新しいビジネス企画を考えようとしたとき、この3つの条件を満たすのは意外に難しい。大抵はどれか一つが抜け落ちてしまうものである。そして、それがビジネス企画としては致命的な欠陥となることも多い。例えばさっきの「ハサミ型シュレッダー」。顧客にとっての価値はありそうだから"1"は良い。大量に仕入れれば低コストで仕入れられるだろうから"2"も満たせるかもしれない。が、皆がアフィリエイトで販売しているものを売ったところで、「真似が出来ない」どころか自分が真似をしているわけである。競争優位性の中でもいかに模倣を防ぐかということは、安定的なビジネス展開を考える上では重要だ。

デルの場合はどうか

8月18日付けの日本経済新聞夕刊に、今回のデルとHPの明暗を取り上げた記事がある。そこでHPの戦術が解説されているが、人員削減や収益性の高いノートPCへのフォーカスに加え、「デルの在庫管理手法を研究して取り込んだ」とある。つまり、これまでデルの競争優位の根幹であった、効率的なオペレーション・モデルが奪われてしまった可能性がある。つまり、デルからしてみれば"3"が失われてしまったために、価格競争に巻き込まれ、"2"の収益性も揺らぐこととなった。

真似の出来ないビジネスとは

デルの事例を見ると、模倣の困難さというのは競争優位性の根幹を成すものだというのが良くわかる。では、真似できないモノとは何なのだろうか。いくつかヒントとなりそうなものを挙げてみたい。これは別にすべてを満たす必要があるものではない。

第一に稀少であること。対象は人材、資源、場所、株主、特許などビジネス上の資源となり得るものなら何でも良い。例えば、ユニークな人材や特許というのは判りやすい例だ。また、主要顧客と同じビルに入居しているというのも、ある意味稀少価値が高い。競合他社からしてみれば、空室が出ない限りは真似できない。あるいは、主要株主がビジネス上の核となっているケース。これも容易に獲得できるものではない。

第二に複雑であること。これは、外部から見て判り難いということだ。デルのオペレーション・モデルも、真似されるまでには結構時間が掛かったことを考えれば、外から見れば判り難いと言える。数多くのサプライヤーと国境を跨って連携し、それをITシステムで統合するモデルは、容易に構築できるものではない。複雑さにも、技術的な複雑さもあれば、ビジネススキームの複雑さなど、いろいろ考えられる。

究極の競争優位

が、最も真似の出来ないモノとは、実は企業文化であろうと思う。こればっかりは、変えようと思って簡単に変えられるものではない。なんだか良く判らないけど、次々と新機軸を打ち出してくる会社というのがある。それがある特定の個人のみに依存しているのであれば、それほどの脅威ではないかもしれないが、それが企業文化に根付いたものであるならば非常に手強い相手とみるべきだろう。

では、ハサミ型シュレッダーを提案するM田君がいるISIDの企業文化ってどうなの? 

ところが、純粋階段が好きな飯田もハサミ型シュレッダーでは大喜び。

あぁぁぁ。

※このエントリはZDNetブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および ZDNet編集部の見解・意向を示すものではありません。

SpecialPR

  • デジタル変革か?ゲームセットか?

    デジタルを駆使する破壊的なプレーヤーの出現、既存のビジネスモデルで競争力を持つプレイヤーはデジタル活用による変革が迫られている。これを読めばデジタル変革の全体像がわかる!

  • 「奉行シリーズ」の電話サポート革命!活用事例をご紹介

    「ナビダイヤル」の「トラフィックレポート」を利用したことで着信前のコール数や
    離脱数など、コールセンターのパフォーマンスをリアルタイムに把握するに成功。詳細はこちらから