インディアン伝承シャンプーは効くのか? - 髪と企業の境界線を巡って

飯田哲夫(Tetsuo Iida) 2006-09-30 16:54:51

髪が抜けることへの男の恐怖心は非常に強い。歳も30を越える頃から周囲には脱落者が出始め、父親の頭部を思い浮かべながら最早他人事ではない事に気がつくのである。そして、飽くなきチャレンジが繰り広げられる。顔と頭部の境界線である生え際を巡る争いは激しい。そして、我が友人は(私じゃなくて)、また新しいチャレンジを始めた。

秘伝のシャンプー

ネイティブ・インディアンの伝統から生まれた「インディアン伝承シャンプー」がそれである。インディアンには薄毛がいないと言う。本当か判らないが、我々のイメージするネイティブ・インディアンは、馬上で黒々とした長髪を風に靡かせている(ような気がする)。この商品の宣伝文句によれば、ネイティブ・インディアンは髪を非常に大切にするが故、秘伝の天然エッセンスを髪につけるという。そして、このシャンプーはそのエッセンスを配合しているから力強い髪が生えると。我が友人は言う。3ヶ月待てと。

境界線を巡って

その結果はまた3ヵ月後の報告するとして、こうした飽くなきチャレンジが行われる背景には、頭髪の境界線が揺らぐことへの心理的抵抗の大きさというものがある。なかなかその事実を受け入れられないのである。そして(ここまでじゃなくて、ここからが本題)、同じように企業の境界線の揺らぎに関しても、我々は容易にその事実を受け入れることが出来ない。しかし、周りを見回す限りにおいて、その境界線は揺らぎつつある。しかし、しっかりした境界線を持つ過去の記憶が忘れられない人々に、それを受け入れろと言うのはなかなか難しい。

パーティシペーション・エイジ

CNETにサン・マイクロシステムズ藤井さんのインタビュー記事が出ていた。サンが提唱しているパーティシペーション・エイジについて語っているが、最近サンの業績が回復傾向にあることから、その言葉の説得力が増している。例えば、サンの商用ソフトのオープンソース化に関して、藤井さんはこのように説明している。

ソフトウェアは、多くの人々に使っていただかないと良いものにはならないし、イノベーションも起こりません。そのため、まずオープンソースで敷居を低くし、無償版も用意するなど利用者のボリュームをもたらし、そこから商用サービスへと誘導するビジネスを展開します。

よく知られている通り、サンの開発したSolarisというOSは、オープンソース化され無償ダウンロードが可能となっている。しかしながら、それは必ずしもサンのハードウェアでのみ利用されているわけではない。それが、競合他社のハードの上で利用されているケースも少なくないのである。つまり、競合他社の利になることは一切するまいと境界線を引いてしまえば、Solarisのオープンソース化は実行できない。

また、サンの強化するコミュニティ支援活動に関しても、自社の境界線を強く意識すれば実行することは難しいだろう。なぜならば、コミュニティに企業の枠はなく、そこには競合他社の社員もいるだろうし、コミュニティの成果は競合他社ともシェアしていかなくてはならないからだ。

オープン・イノベーションとの関わり

サンの提唱するパーティシペーション・エイジが心に響いてくるのは、イノベーションのオープン化が進んでいるからだと思う。社内に閉じたイノベーションから、社外へ開いたイノベーションへとシフトすることで、イノベーションの速度を上げることができる。サンはそのオープン・イノベーションのインフラを提供することで、その上にビジネスを構築しようとしているのである。それ故に、企業としての境界線は緩い。

しかし、株主に対して一見競合他社にも利するような行動を納得させるのは難しい。しかし、それ以上に境界線を曖昧にするというのは心理的な抵抗が大きいものである。でも、一度抜け始めた髪が元に戻らないように、一度緩んだ企業の境界線は最早元には戻せない。エンタープライズ向けのインディアン・シャンプーは売っていないのである。

+++ちなみに、私の家系は先祖代々頭髪が無く、インディアン伝承シャンプーの成果に期待するところ大である。しかしながら、私はインディアン伝承シャンプーをここで宣伝する意図は全くなく、ご利用は皆様の責任でお願いしたい。

※このエントリはZDNetブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および ZDNet編集部の見解・意向を示すものではありません。

SpecialPR