ドレスコードはビジネススーツ - 金融カンファレンスとJavaOneのギャップと共通点

飯田哲夫(Tetsuo Iida) 2006-10-16 00:39:31

今年の5月にサンフランシスコで開催されたJavaOneでは、このGoslingの写真を見ても分かるように、Tシャツでも全然OK。スーツなんか着ていようものなら入場させてもらえないのではないかという雰囲気であった。登録するときにもらえるカバンも背中から背負うデイバッグ・タイプ。

しかるに、今週参加してきた金融カンファレンスであるSibos(サイボスと読みます)は、こちらの写真の通り、とにかくスーツなカンファレンスなのである。実際、ドレスコードとしてビジネス・スーツ(Business attire)と指定されているので、Tシャツでは入れてもらえない。もらえるカバンもビジネスバッグ・タイプであることは言うまでも無い。

外見上全くことなるこの2つのカンファレンス、以外にも本質的なところでは似たような議論が展開されている。そのあたり、少し紹介してみたい。

Sibosって何?

SWIFT(スイフト)という国際金融のためのネットワーク運営会社がある。普段あまり耳にすることは無いだろうが、最近ちょくちょくテロ関連の記事で新聞にも名前が出てくる。SWIFTとは、銀行を中心とした金融機関が共同出資して設立した国際金融取引のためのネットワーク運営機関で、世界206カ国、約8,000の金融機関が加盟している。SWIFTは、銀行間の送金指示や取引確認などのメッセージを安全に交換する仕組を提供しており、もし皆さんが銀行で海外送金を依頼したとすれば、その指図がSWIFTのネットワークを通って海外へ伝達されていることはほぼ間違いない。それゆえに、アンチ・マネーロンダリングという文脈の中で、SWIFTの送金メッセージを監視すべし、といった議論が新聞記事として出てくるのである。

そのSWIFTが、年に1回カンファレンスを1週間にわたって開催する。そのカンファレンスがSibosと呼ばれている(何かの略らしいが、正式名称不明)。今年はオーストラリアのシドニーで開催され、5,000人以上が世界中から集まったというからすごいものである。しかも全員スーツ着用のスーツ・コミュニティである。

コチコチのテーマだが

スーツ着用で議論するのだから、テーマだってもちろん固い。欧州における決済システムの統合、金融システムにおける中国とインドの役割、銀行と企業のネットワーク接続などなど。システムとは不可分なテーマではあるが、ビジネス観点からの議論が中心で、技術的にフォーカスした議論は非常に少ない。あえて挙げるとすれば、メッセージフォーマットのXML化くらいであろうか。

しかし、ちょっと見方を変えてみると、このビジネス寄りの議論が多分にテクノロジーの影響を受けていることが見て取れる。例えば、この金融ネットワークのビジネスは、完全にスケールメリットの上に成り立っており、参加者数と交換されるメッセージ数が増えないとネットワークの利用料金が安くならない。それゆえに、このネットワークの発展は、そのコミュニティ開放の歴史であると言っても良い。銀行から証券、証券から機関投資家、そしてついに一般企業にまでその門戸を開放しつつある。

インターフェースの標準化と金融機能のコモディティ化

そして、コミュニティの開放と同時に行われてきたのがインターフェースの標準化である。つまり、参加者同士がコミュニケーションし易いように、通信方法と交換されるメッセージ・フォーマットを標準化する努力が続けられている。しかし、その標準化の範囲の拡大は、結果的に金融機関の囲い込みビジネスを制限し、金融機能のコモディティ化に繋がってきた。例えば、先に挙げたようにネットワークが一般企業にまで開放されると、企業との間の通信自体は付加価値を失い、さらに上位レイヤーでの付加価値提供が勝負の土俵となる。まるで、ソフトウェアの領域で起きている標準化とコモディティ化の流れと同じなのである。

とはいえ山積する課題

とは言いながら、この金融コミュニティにも課題は多い。何と言っても固さ勝負のネットワークなので、変化のスピードが非常に遅い。全員が共通ルールの上でデータ交換を行うので、オープンソースのように新しいリリースが次々出るということは有り得ないのである。つまり、市場変化のスピードと技術革新のスピードに付いていくのが非常に難しい。

また、金融機関は国ごとに厳しく規制を受けている業種であるだけに、国境を跨った統一的サービスの提供が結構難しい。例えば、DHLで荷物を海外に送ると、その配送ネットワークはDHLが全て構築しており、荷物がどこにあるのか逐一インターネットで追うことが出来る。しかるに、海外送金に至っては、国ごとに地場の決済銀行が異なっていることが多く、電子的に処理されるにも関わらずステータスを捉えることが難しい。

そんな中、今回のSibosのパネル・ディスカッションでよく聞かれたのが、ノンバンクに対する銀行のバリューが何であるかという議論であった。例えばPayPalの決済サービスや、英国のスーパーマケットの提供する金融サービスを競合と捉え、それらに対抗するにはどうすれば良いか、という問題意識が今更ながらに行われている。JavaOneが極めてオープンソースを強く意識したカンファレンスへと変化してきたように、Sibosもオープンな世界へと目を開くことが求められているのではなかろうか。そろそろドレスコードを取ってもいいかも。

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さて、話題は変わりますが、Seasar2のチーフコミッタであるひがさんが10/14(土)に結婚されました。心より祝福致します。(スーツ・カンファレンスの後だけに私は乾杯の挨拶でコチコチとなってしくじりました。。。)

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