必ず届くお弁当

飯田哲夫(Tetsuo Iida) 2006-11-23 01:22:16

かつて我がインド人の同僚は言った、ムンバイでは自分の足で歩く必要がないと。なぜなら、自分で歩かなくても人の群れが押し流してくれるからであると。何を大袈裟なと思っていたが、その様を思わぬところで目にすることとなった。その映像が流れてきたのはラスベガスへ向かう飛行機の中。ナショナル・ジオグラフィックが大都市をフィーチャーした番組で、ムンバイの交通網を取り上げたもの。

3分おきに走っているムンバイの列車は、常に定員300%で、1Kmあたりの乗客数が世界最大であるという。しかも、電車のハンドルは「死者のハンドル」と言われるほどに、列車死亡事故が多い。それもそのはず、人々が道を渡るようにワラワラと線路を渡ってホームからホームへと移動してゆくのである。何と毎日10人が死に、数百人が怪我を負い、年間の列車事故の死亡者数は3,500人に達する。本当かと疑ってしまうが、列車の運転手はインタビューに答えて、事故が起きても電車は止められないと言う。そんなことをしたら、列車が遅れてしまうからと。それほどに乗客数が多いのである。

そんな通勤事情もすごいし、それをいかに改善するかが番組の本題なのだが、私の興味を引いてしまったのは、そんな列車を利用するインドの弁当配達人「ダバワラ」であった。インドでは、カーストや宗教などの違いによって食事の中身も変わるということで、自宅から職場へと弁当を配達する仕組が発達しているという。ムンバイでは、5,000人のダバワラが、何と毎日20万食の弁当を運んでいるのだ。つまり、朝には働き手がラッシュの中を仕事へ向かう。すると、それを追いかけるようにして、各家庭で作られた弁当が、これまた相変わらずのラッシュの中を追いかけていくわけである。

このダバワラの何が凄いかと言うと、完全なペーパーレスで運営されているということだ。まあ、ZDNetのブログなので、「システム化により。。。」と説明したいところではあるが、単に最初からペーパーレスなのである。何故ならダバワラに字が読める人は少ないので伝票があっても意味がないのである。ではどうやって配達先が判るかと言うと、弁当箱に書かれた色・数字・記号などによって行先が判別される。

更にすごいのは、ダバワラはSix Sigmaを達成していると言われていることだ。つまり、99.9999%の確立であなたの弁当は届くのだ。この道一筋27年のナマチャンドラサーテは言う、「これまでに一度も間違えたことはない」と。そもそも、カーストや宗教で中身が違うので、他人の弁当は絶対に食べないのだそうだ。

そういえば、イギリスのポスト・オフィスは郵便物の紛失が多いことで有名であったように思う。かつての宗主国も立つ瀬がない。Six Sigmaはテクノロジーにあらず。ITの国インドが愛するホームメイド・ランチとローテクノロジー。Wikipedia情報では、シリコンバレーでもインド人技術者向けにダバワラが活躍しているのだそうだ。

このダバワラの仕組、弁当箱は全て同じ形行先の識別ルールも全て同じ、そして家柄と宗教が符号するものしか受け取らない。しかも弁当だから1回だけ。これは標準化、暗号化、送達確認、と完璧なメッセージング・アプリケーションなのである、などと弁当箱のように飛行機に詰めこまれつつ思うのでした。

ちなみに、こちらダバワラのオフィシャルWebサイト。「New!」の情報、列車爆破事件で弁当配達に影響が出ているとする深刻なものであるが、確か何ヶ月も前のことだったような。。。

もはや本題に入るには前置きが長くなってしまったので、今回は前置きで終わり。

※このエントリはZDNetブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および ZDNet編集部の見解・意向を示すものではありません。

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