組織は、それが生まれた瞬間にイノベーションの壁になっている
これは、一條和生*徳岡晃一郎両氏の共著である『シャドーワーク―知識創造を促す組織戦略』からの引用である(188ページ)。同書は、外部環境が変化のスピードを加速させる中で、フォーマルな組織活動から、個人に依存したインフォーマルな創造的活動(シャドーワーク)に企業の競争力の源泉が移りつつあることを指摘する。つまり、社内・社外を跨る共創関係を作り出せる「プロデューサー型」社員の重要性が増していると。しかしながら、機能別に編成された組織を無視した活動や、インフォーマルな外部とのコラボレーションは、既存の枠組みを超えるが故に、既存組織からは認められにくい。
本書は、日産、シマノ、グーグルなどにおけるケース・ステディーを詳述しながら、いかにしてシャドーワークがイノベーションを生み出しているかを例証するとともに、その当事者たちがいかに組織内の壁を突破するのに苦労したかが語られる。後半部分においては、シャドーワークの障害に立ち向かうための示唆、また逆に企業としてそれを促進するためのマネージメント手法が説かれる。その中にIBMを立て直したルイス・ガースナーの言葉が引用されている(193ページ)。
偉大な組織は原則にのっとって、みんなが行動する組織です。つまりルールではなく、原則にのっとって動く組織です。
この言葉にシャドーワークを可能ならしめるヒントがあるように思う。つまり、何をすべきかという原則に基づいて行動する限りにおいては、無用にイノベーションの芽を摘むようなことにはならないはずなのだ。しかし、ルールを遵守することが目的化したとき、シャドーワークは完全に否定され、イノベーションの芽は摘まれてしまうのである。
ここ数年のSI業界を振り返ってみれば、リスクとコスト・コントロールの厳格化が進む中で、ルールでがんじがらめになってきたというのが現実である。つまり、シャドーワークを行う余地がどんどん無くなってきたのだ。そうした状況下において、オープンソースという社外での共創活動が活発化したのは象徴的とも言える。そして、多くのITベンダーがこうした外部の共創活動の成果を活用しようと積極的にオープンソースに取り組んでいるのが今の状況である。
しかし、オープンソースに取り組んでいること自体が、シャドーワークの活性化を意味するわけではない。既にそこにあるオープンソースというものをビジネスに組み込むだけならば、これだけオープンソースの価値が認められている現状にあっては、フォーマルなマネージメント・プロセスの上で実現することも可能である。イノベーションの発露としてのシャドーワークが活性化できるか否かは、むしろ社員が共創活動そのものにどのくらい与することが可能であるかにかかっているだろう。
『シャドーワーク』を読んでみると、前回のエントリーでも紹介したSecond Lifeの試みも、まさにシャドーワークの賜物であると思わざるを得ない。SIベンダーというちょっとSecond Lifeとは直接には繋がらない企業において、オフィスを建設して会社説明会までやるというのは、実は結構大変なのである。これが実現したのは、既存の事業部門の枠組みを越えて関心を持った社内外のメンバーによるシャドーワークがあればこそである。
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