SNSのプラットフォーム戦争と釣り

飯田哲夫(Tetsuo Iida) 2007-11-11 10:45:31

陸釣りはストイックである。特に東京近辺の海岸線はコンクリートで固められ、その風貌は極めて単調だ。例えばこの写真にあるような極めてストイックなコンクリートの塊が我々のプラットフォームとなる。この一見単調としか思われないプラットフォームの上で様々なドラマが(自分の場合、大抵悲劇)が演じられるわけである。

そんなわけで、私はプラットフォームが好きではない。しかしながら、ビジネスにおいては、プラットフォームを握るものが勝者となるケースが多々ある。ここ最近、SNSのプラットフォームとして注目を集めるのがGoogleの提唱する標準API「Open Social」である。

Facebookプラットフォーム戦略

プラットフォームのオープン化で先行したのはFacebookであった。最大のユーザー数を誇るMySpaceへの対抗策として、プラットフォームをオープン化する手法は、商用アプリケーションのオープンソース化に似ている。つまり、開発者コミュニティを形成することでシェア拡大を目指そうというものだ。これに対するMySpaceの反撃が噂されていた矢先に、Googleが「Open Social」を発表し、MySpaceもそれに便乗することが明らかとなった

コモディティ化とプラットフォーム

今回のSNSビジネスのプラットフォームへの情熱は、SNSが徐々に成熟化しつつあることの証でもある。ソフトウェアのビジネスはユーザーベースを増やすことでライセンスフィーやサービスフィー、あるいは副次的な広告収入等を受け取ることで成り立つ。そのため、ユーザー獲得へ向けた機能の強化合戦が始まり、それが行き着くところまで行き着くと、メジャープレーヤーとニッチプレーヤーの棲み分けが出来てくる。

その後はサービス自身は徐々にコモディティ化して差別化が難しくなるので、マーケットシェアのビジネスへと移行し始める。この段階に至るとプラットフォームが重要になる。つまり、プラットフォームを握ることでマーケットを押えることが可能となるからだ。Facebookはプラットフォームを公開することで、Facebookを中心としたエコシステムの構築を試みたと言える。

SNSのシェア争いにおける特異性

しかし、今回のプラットフォーム競争には、Googleが絡んでいることにより、いびつなものとなっている。まず、プラットフォーム競争の構造が、「Facebook」対「Open Social」であり、これは「Facebook」対「Facebook以外」の様相を呈している点。第二に、Facebookの対抗軸がMySpaceではなく、Googleから出た点。第三に、「Facebook」対「OpenSocial」は、「Microsoft」対「Google」でもある点。

もしMySpaceが対抗軸を出していればプラットフォーム競争の様相を呈していたであろうが、Googleが登場したために皆その力になびいてしまい、プラットフォームというよりは標準化の動きと呼んだ方が良い状況となった。そのため、Googleの登場により、プラットフォーム競争は「非標準」対「標準」の戦いという様相を呈するに至った。かつ、FacebookがMicrosoft陣営であるが故に、今回の動きは、代理戦争とも見ることができるのである。

勝者は誰か

間違いなくGoogleであろう。標準化をGoogleに握られた以上、「Open Social」はGoogleが提供するであろう様々なサービスのプラットフォームとして今後機能することになる。続いてユーザーである。標準化により使い勝手は向上するであろうから、ユーザーはそのメリットを享受できる。SNSは皆一律に標準化に対応するのであるから、「Open Social」に乗ることでいきなり大きくシェアが伸びたりすることはないだろう。ただ、対応しなければそのペナルティは大きい。

こう考えると、MySpaceが安易に「Open Social」に乗ってしまったのは、SNSビジネスとしては主導権をGoogleに渡してしまったようなもので、ちょっと面白みに欠けたのではないかと思ったりもする。SNSプレーヤーが主体の競争というよりは、既にMicrosoftやGoogleが主体の競争の局地戦に過ぎないといった印象すらある。このままでは、SNSというビジネスが、私の釣りと同じように、ストイックな悲劇に陥ってしまう懸念が生じるのである(全く余計なお世話)。

先日、ついに釣りのプラットフォームを船に移すという暴挙に出たが、これまた堤防に負けず劣らずストイックであった。目の前には海原が広がり、自分の釣座から動くことすら叶わない。でも、プラットフォームを変えると得られるものの大きさも違うんだけどね。

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