究極のコモディティ化の後に訪れる脱コモディティ化 - 岐路に立つデル

飯田哲夫(Tetsuo Iida) 2007-12-23 11:21:38

米国や英国における大手リテーラーのサプライヤーに対する強さは尋常ではない。『ウォルマートに呑みこまれる世界』によれば、ウォルマートによる価格圧力の結果としてビジネスそのものを破壊されてしまうサプライヤーもあるという。ボリュームは確保したが、結局それが収益に結びつかず、研究開発投資を行う余裕もなくなりビジネスが痩せ細ってしまうというのだ。英国の最大リテーラーであるテスコにおいては、陳列される商品にテスコのプライベートブランドが占める割合が非常に高く、サプライヤーが独自ブランドを販売するには強いブランド力と独自性が求められる。

これは、スケールを獲得したリテーラーが、バイイング・パワーを最大限に発揮した結果であると言えるだろう。それゆえに、これらの大手リテーラーを販売チャネルとして選択することは、完全に諸刃の剣であり、スケールは確保できるかもしれないが、ビジネスを破滅に追い込んでしまうリスクを背負うことになる。とはいえ、これらの大手リテーラーは中小のリテーラーを薙ぎ倒しながら拡大してきたために、それ以外の販売チャネルの選択肢は決して多いわけではない。

デルの選択

最近その大手リテーラーを販売チャネルとして活用し始めた大手パソコンメーカーがある。デルである。デルはご存知の通り、コモディティ化したパソコンのビジネスをオペレーションの効率化を追求することで成長させた。研究開発は最小限に押えつつ、直販モデルで既成の部品を効率よく組み上げて販売する。その効率性に経営資源を集中することで高収益を確保するのである。

しかし、そのデルも最近はHPなどの競合他社の躍進に陰が薄くなってきている。そこで図られたのが今回の販売チャネル改革である。これは、デルを特徴付けてきた直販モデルからの脱却であり、ビジネスモデルの大きな転換を意味するだろう。なぜならば、デルはウォルマートベストバイカルフールテスコなど、大手リテーラーを販売チャネルに次々と加えており、もはや実験的に行っているとは言い難い状況にあるからだ。

ビジネスモデルをなぜ変えるか

これは即ち、大手リテーラーを販売チャネルとして持つことでボリュームを確保することが可能となる一方、流通コスト、リテーラーへのマージン、絶え間ない価格削減圧力といった問題に直面することとなる。直販モデルとは大きく異なる負担である。冒頭で紹介した通り、大手リテーラーとの取引は諸刃の剣であり、他の有力な販売チャネルを持っているならば、あえてスケールを追い求めることのメリットは慎重に判断されるべきものである。

特にデルの場合、オンラインの直販モデルが確立されているが故に、なぜ敢えて大手リテーラーとの取引を開始するのか疑問である。しかし、そこにはコモディティ化の道を邁進したパソコンがコモディティを究めたが故に脱コモディティ化したことに要因があるのではなかろうか。

パソコンをコモディティ化させ、誰もが保有するものとするにあたり、大きな貢献をしたのはデルであったろう。そしてパソコンは多くの人がその時間を費やすメディア媒体となった。すると、それだけの時間を使うメディア媒体をコモディティ企業であるデルから買うのでは物足りなくなってくる。結果として店頭販売の重要性が高まり、オンライン直販というデルのブランドは相対的に下がらざるを得ない。毎日使うものだからこそ、ちょっといいもの、人と違うものが欲しくなる。

これは単なる仮説に過ぎないが、このように考えると、単にリテーラーを使って販売チャネルを確保するだけでは収益性が高まることはないだろう。デルというブランドをコモディティ・ブランドからクオリティ・ブランドへと転換させられるかがポイントではないだろうか。(などと言っている私のパソコンはデルなのでした。)

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