Tobacco as a Service (TaaS タース)とUnderground as a Service (UaaS ウァース)

飯田哲夫(Tetsuo Iida) 2008-06-02 01:46:43

最近イギリスの話題と言えば、何はともあれ物価である。とは言え、やり玉に挙がるのは煙草と地下鉄。最近は吸わないとうか、自分で買わないので知らないが、イギリスの煙草は5ポンドくらいするらしい。日系ヴェリタスの4/6号でJT Internationalの取締役エディー・ピラー氏のインタビューが載っていたが、同氏は煙草を当初3ポンド(600円)に値上げする際にはどうなるか心配だったらしいが、結局5ポンド(1,000円)まで上げても大丈夫で、7〜8ポンド(1,400円〜1,600円)くらいまで上げても販売量は落ちないだろうと豪語していた。凄い。

Tobacco as a Service (TaaS タース)

煙草というのは、ある意味ロックイン効果の強いプラットフォーム・ビジネスである。一度吸い始めると体の中にベースが出来上がってしまうので、ちょっとくらい価格が上がったところで簡単に止める訳にはいかない。そのプラットフォームの上に喫煙サービス提供しているようなもので、煙草の販売自体が独立していないところがポイントである。スイッチングコストが高いので、それを下げること自体がビジネスになるくらいなのだ。プラットフォーム・ビジネスの価格弾力性は凄いのである。

ちなみに、私のイギリス在住時、煙草の値段は4ポンド(800円)くらいで、結局止めることは出来なかった。一応止めたのは、日本に戻ってきてからのソーシャル・プレッシャーの方が余程大きかったのである。

Underground as a Service (UaaS ウァース)

さて、もう1つイギリスで価格弾力性が強いもの。それは地下鉄(イギリスではUnderground)である。数年前でも1.5ポンド(300円)くらいしていたように思うので、そもそも高かったが、今は初乗り4ポンド(800円)だから異常である。煙草といい勝負なところが面白い。日常生活の必需品の臨界値を試すとこのあたりの金額なのだろうか。

しかし、地下鉄は煙草とはちょっと違う事情がある。日本のSUICAやPASMOと同様の非接触型ICカードである「オイスターカード」が普及しており、こちらだと従来並みの値段で地下鉄に乗ることが出来る。ガイドブックなどでは、オイスターカードを使うと割安で地下鉄に乗れると書いてあるが、むしろオイスターカードを使わないと割増料金を取られると言った方が正しいだろう。

オイスターカード普及の過程を知らないので、ここからは推測だが、地下鉄の値段を4ポンドまで上げないとオイスターカードが普及しなかったのではないだろうか。生活としてのプラットフォームである地下鉄だけに、多少値段が上がったところで、顧客は文句を言いながらサービスを使い続ける。辛抱強い国民性も相俟って、地下鉄料金が煙草と同じ臨界点である4ポンドに至るまで、オイスターカードの本格的普及には至らなかった。それにしても利便性ではなく、価格弾力性の限界を追求することで普及に至ったオイスターカードというのも凄いものである。

プラットフォーム・ビジネスの強さを実証するなら

プラットフォーム・ビジネスの強さを実証するなら、ここはやはり値上げをしてみるしかない。最近の流行であるSaaSやPaaS、そのビジネスモデルの本来的な強さは値段を上げた時の価格弾力性によって実証されると言えるだろう。その時顧客が減らなければ、そのビジネスモデルは極めて強靭であったと言えるが、その時にそのサービスが担う役割は良くも悪くも公共財に近いものであり、社会的責任も大きいのである。タースとウァースがその最も顕著な例であろう。

**本当はオイスターカードからモバイルペイメントの話に繋げて、ZDNet主催の「エンタープライズ Mobile Conference & Demo 2008」を紹介する予定でしたが、出来上がってみると煙草と地下鉄の話になってしまいました。皆さん、Mobile as a Service(MaaS マース)ですよ!! 出張中に風引いて熱があるので勘弁して下さい。

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