ITILのサービスサポート、サービスデリバリにおいては10のプロセスと1つの機能(サービスデスク)が定義されています。通常の紹介ですと、「構成管理では…をして云々」といった説明が続くのですが、今回はちょっと切り口を変えて土台となっているプロセス・モデルについてお話したいと思います。

図1 サービスマネジメント体系
IT運用の現場で常に挙げられる課題をいくつか羅列してみました。
・不明確なオーナーシップ、目標
・使われないレポートの作成
・属人化した運用プロセス
他にも課題をあげたらキリがないかもしれません。列挙した課題とITILにおけるプロセス・モデル(下図)、日頃の活動で感じている運用現場の実情と照らし合わせながら、話をを進めて行きたいと思います。

図2 プロセス・モデル-ITIL書籍より引用
プロセス・モデルといわれてピンと来ない方は次のシーンを想像してみてください。
場所は「フランチャイズのハンバーガーショップ」
オーナは「調理長」
最終目標は「おいしいハンバーガーを手軽な値段でお客様にお届けすること」
KPIは「営業利益」
入力は「注文」
活動は「レジでの入出金」や「ハンバーグを焼く」
出力は「ハンバーガー」
リソースは「パン」「店員」
役割は「レジ係」「パン焼き」など。
このように考えると理解しやすいのではないかと思います(ちょっと極端ですいません)。
それでは始めましょう。
問題1 不明確なオーナーシップ、目標
■プロセス・モデル図との対応
・プロセス・オーナ
■現場の実情
・「残業を減らせ」という指示はでるものの、実際の活動は現場任せでコミットやサポートがおこなわれていないといったことが良くあります。こういった場合、指示の意図が現場まで届かず、現場サイドでは「彼らは現場がわかっていない」といった話題が酒の席で盛り上がったりします。
■コメント
・とってつけたような名ばかりのオーナでなく、十分な権限とスキルを持ち、目標を定め、プロセスに積極的に参画していくことができるオーナの任命が先決です。これにはシニア・マネジメントの十分な理解とコミットメントが必要ですし、また適切な人材の確保は非常に難しいでしょう。人材確保のためには場合によって教育、給与、人事評価などの検討も必要となるかもしれません。これがITIL導入は組織改革プログラムの着手であるといわれる所以です。
問題2 使われないレポートの作成
■プロセス・モデル図との対応
・プロセスの最終目標
・品質パラメータおよび重要業績評価指標(KPI)
■現場の実情
・レポート作成時には仔細な項目まで入力しなければならない。ところがレポートは誰にも読まれていない。この場合、レビュー時に思いつきや鶴の一声による設定値(良し悪しはその時々ですが…)が設定・追加されることがあります。
■コメント
・目標とKPIの乖離や不適切なKPI設定が良く見受けます。
「オペレーションコスト削減→インシデント削減」と「インシデント削減→オペレーションコスト削減」
どちらが正しいでしょうか? あべこべになっていませんか?
・「サービスサポート」「サービスデリバリ」においてはKPIの例が記載されています。さらにに「サービスマネジメント導入計画立案」にはより進んだレベルのKPIや重要成功要因(CSF)が体系的に記載されています。
問題3 属人化した運用プロセス
■プロセス・モデル図との対応
・プロセス
■現場の実情
・各自が運用しやすいようにシステム毎に部分最適がおこなわれ、さまざまなマニュアル、インターフェースを作成してきました。その結果として個人の経験や技術に頼った運用が進められ、いざ運用プロセスの整備を開始しようとしても、なかなか先に進まないといったことがあります。
■コメント
・マネジメント、プロセス、アクティビティ(活動)、プロシージャ(手順)の複数のレイヤが混沌の状態にあることが良く見受けられます。特に日本ではプロシージャの詳細にこだわりすぎる傾向があると感じています。今までは個々の高いスキルで現場の問題を解決してきましたが、下位レイヤでの最適化に限界が見えてきたのが昨今の状況といえるでしょう。ITILやCOBITのような上位レイヤのベストプラクティスやフレームワークに注目が集まっているのは、コンプライアンスや法規制だけが理由ではなく、関心が部分最適から全体最適に向かっていることが理由の1つと考えています。
以上3つ課題について例を挙げて紹介しましたが、他にも「常に火消し作業に追われている」とか「現場のヒーローにほとんど頼っている」などは、順にプロセス・モデルの「リソース」「役割」に関する課題に結びつくかと思います。
あなたの企業のIT部門では、こういったプロセス・モデルが整備されていると言えるでしょうか?他業種(たとえば建築業や飲食業)に比べ、ITの世界でのプロセスはまだまだ未成熟であるというのが実情ではないでしょうか(もちろんすでに最適化を完了しているIT部門もあります)。
更なるサービスの可視化、コスト削減を目指す上で、こういったプロセス・モデルと実情を比較することで、今まで見えていなかったことや改善すべき点が見えてくるのではないでしょうか?
(三部 佳彦)
※このエントリはZDNetブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および ZDNet編集部の見解・意向を示すものではありません。
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