CAではITIL Practice Managerという役職に従事しているブライアン・ジョンソンが、2005年7月のitSMF Japan のカンファレンスに合わせて来日し、1週間滞在しました。その期間に、講演、講習そして交流会などを共にすることができましたので、その中で触れることができた、彼の人となりをお話してみることにします。
ブライアンがCAに入ってから約1年になります。CAにおいては、ワールドワイドな仕事と、企業活動に偏らない中立的な立場も維持することが強く求められています。 “Business Perspective Vol. 2”の執筆レビューを受け持っていることもあり、とにかく多忙なようです。
略歴
まずブライアンの略歴を紹介しましょう。
英国の政府機関のCCTA(Central Computer and Telecommunications Agency)に勤務し、ITILの元祖とも言われる、「政府のITインフラストラクチャ・マネジメント手法の実現性を立証するためのプロジェクト」に参加しました。まず、英国政府の国民貯蓄部門に初めてのITILの導入を成功させたのです。
1991年に設立された、itSMF創立者の1人であり、3年間副会長を務めました。設立に関する貢献とITILに関連する活動が認められ、1999年にはitSMF終身名誉副会長となっています。お手元にあるITIL書籍の執筆者を見て頂くとあちらこちらに彼の名前を見つけることができると思います。
CCTAを退職後Pink Elephant でITIL関連の書籍を企画、執筆し各種のツールの開発にも貢献しました。そして2004年の秋からCAでワールドワイドのITIL Practice Managerとして活躍しています。CAに入社して数カ月で、北米の大企業でのITILプロセス実装において実績を残したことには驚かされるばかりです。
詳細はこちらをご覧ください。
http://www.caj.co.jp/focus/itsm/brian/inside0508.htm
英国紳士
ブライアンとは「ITILプロセスのKPIの設定ワークショップ」「ITILのインストラクタとの交流会」「サービスマネージメント導入計画立案のワークショップ」のほか各種の交流会を共にすることができました。
まず彼に関して感じたことは、非常な紳士であるということです。もともと、イギリス生まれということもあり、決して控えめではないが、その場の中心になり続けないように気遣いをきちんとしているということです。
彼のワークショップでは、時として、発表者がそのセクションの主人公になってしまうのです。発表の内容に関してブライアンが質問することは、発表者が得意な分野でもっと説明したかったところを見抜いて、質問してあげるのです。発表者は、限られた時間のなかで冗長にならない程度の説明しかできないのですが、質問で水を向けられたことによって、より深い言及ができたことで満足感を味わえるのです。
たとえば、ITサービス継続性管理に関して「会社が金銭的利益を創出することがないプロセスなのに、どうして投資を行わなければならないか?」という問いかけに、会社の社会的責任とどのような貢献が期待できるかを明解に説明された方がいらっしゃいました。その方への視線が集中するわけです。
サービスレベルマネジメントに関して、「サービスレベルマネジメントのペナルティのあり方について?」ブライアンに対して質問された方は、ブライアンが、質問の内容についてもう少し詳しく聞かせてもらいたいといって尋ねたことに対し、今のペナルティ制度に関する不満と、自分なりのSLAの在り方を展開することになったのです。その質問者は自らの質問に関する回答者となり、その考えを支持されたことによって、気が晴れたようでした。また、同席者からの同意も得られ満足していらっしゃいました。
「ITILの導入はどこから開始すべきか」という議論においては、受講者からいろいろな意見が提示されました。ITILの導入は、各社の到達レベル、戦略、解決課題、文化により異なるものであり、プロセス単体であっても良いし、関連すると思われる複数のプロセスからでも良いし、一気に全部を行ってもかまわないという結論に到達するまでに、決してブライアンが主導的に纏め上げるということにはならなかったのです。皆が議論を進めていく過程で、ブライアンが時機を見て投げかける質問について考察することが大きな助言となるのです。結論を知ることではなく、結論に至る過程での“気付くこと”を大切にしていました。
Pink Elephantの講師でよく来日される方も、ブライアンについては、「彼と一緒に仕事をしたことがある人は、必ず全体的な視野を持つようになるし、建設的な意見を持てるようになる」と手放しで褒め称えています。決して、自分からはでしゃばらないが実力は誰もが認める、権力に執着はしないが自分の仕事に誇りを持っている、だからブライアンは終身名誉副会長なのです。
ITILに関連した知識だけでなく、広範な趣味と知識を有しているのには驚かされます。音楽、料理、スポーツといろんなことを良く知っています。交流会などで、参加できずにいる人がいると、趣味の話やら、旅行の話やら何らかのきっかけを彼自身が作ってくれるのです。そのグループの話が弾み始めると、彼はもうその場にはいないのです。
趣味はサッカーだと公言するだけあって、休日には有志で作ったサッカーチームのフォワードを任されているそうです。日本人と比べても、小柄といえるかもしれない彼ですが、毎週のようにサッカーの試合には出ているということでした。そしてこっそりと、「だから、長い海外出張はいやなのさ」とも言っていました。
CAでの役割
CAにおける自分の役目について
「CAはITILを初期の段階からサポートしてきた。しかし、顧客の目からそれが明らかに見えるようにしなければならない」
「社内にもITILのプロセス導入を行っていく。そのために有資格者を1,000名に持っていく」
と述べています。しかし彼は、決してそれを主導する主役には躍り出てきません。
CAの中で、ブライアンページという、彼のブログやITILに関連した情報を発信してもらおうという企画がありました。しかし、それは彼の一言でワールドワイドに、4半期に最低1件の投稿が義務付けられた、相互のコミュニケーションの場になったのです。もちろん、日本のわれわれもその呼びかけには名指しされていました。それはまた、今までITIL関連では名が売れていない日本のわれわれを、ワールドワイドに認知させることを意図した、ブライアンの心遣いでもあるのです。
印象的な言葉
ブライアンの滞在中に彼から聴いた言葉の中で、しばらく気になってしょうがないことがあったのです。
ITILの成功事例はいっぱい報告されているが、失敗例というようなものはないのかという質問があったときの彼の答がそれです。
「ありません。なぜなら、失敗したのはITILではないからです。」
と毅然と答えていたのです。ITILプロジェクトの失敗要因を扱ったホワイトペーパもいろいろ出ているし、ブライアンがそれを知らないはずもないのに、いったいどうして?
彼の自信に満ちた回答は、あの時だけは人を寄せ付けないものが感じられました。英国人ご自慢のジョークだったのか、本当にITILに関するプライドから発せられた言葉なのかと、しばらく疑問でした。今私なりに出している結論はこうです。あの毅然とした態度も含め、すべてジョークだったのだ、ということです。その裏づけになるのは彼の著書にありました。
IT Service Management FROM HELL ? A Guide to Worst Practices ?
著者:Brian Johnson, Paul Wilkinson 出版Van Haren
がそれです。ITILのブラックジョーク集ともいえる書籍です。
ブライアンはまた、ITILに関する最初のプロジェクトから、ITIL3と言われている新規予定のITILまで一貫してかかわることができた、たった一人であることを話すときがあります。そのときの彼は、誇らしげでもあり、彼とともに仕事を続けてきた人々への感謝とともに、寂しさが漂っています。とは言いながらも、今日もまた多くの人々に良い影響を与える活動をしていることだろうと思うと、あのバイタリティあふれる英国紳士のすごさを体験した一週間でした。
前田 隆
※このエントリはZDNetブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および ZDNet編集部の見解・意向を示すものではありません。
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