Brian Johnson来日レポートでふれた『ITIL導入の効果は?』皆さんのお考えはいかがですか。ITILが求めているのは、プロセスの改善が継続的にできる会社の文化を築き上げることです。継続的改善を求めてサービスの品質面からプロセス指向でアプローチするのが基本的な考えなのです。
そのプロセス指向のアプローチですが、いざ実施しようとするとパタリと手が止まってしまいます。プロセスを作らなければいけないのです。いつもどおりに、現状分析から始まります。どこからどんな情報が集まってきて、データセットがそろったときになにかの条件をトリガとしてロジック通りに処理をするわけです。ということになると、ついつい処理速度であったり、計算精度であったりといったものを評価尺度にしたくなります。バグの発生頻度とか、プロジェクトの予算管理だとか、納期管理などと、技術のブレークスルーの状況に合わせてどんどん開発系の方に目が向いていくわけです。
当然、開発環境を受注してしまうと、実稼働環境も開発環境に準じたスペックで大規模に納入できることになるし、開発ツールもハードに関連して売れるしコンピュータメーカにとってはとても都合のいいお話だということです。そうこうしているうちに、システムのメインテナンスもしなければならない、日常の保守もあるということで、開発にだけ投資をしているわけにもいかず、運用に継続的に費用が発生することがわかってきた。開発を受託できたら、ハードも保守も芋づる式についてくるわけです。こんな背景で、ソフトウェアの“1円入札事件”が起こったこともありました。
話しは変わって、皆さんはプロセスを設計したことがありますか。プロセスの設計は、今話したような、現状分析から行くと、ろくな事は起こらないのです。まず、“出力”からなのです。ある処理の結果として何が欲しいかが一番重要なのです。この出力として欲しいものは何かを決めるもとになるのが、ビジョンであり、設定されるプロセスのゴールなのです。ですから、出力は必ず計測可能なものを設定しなければならないのです。メトリックスという計測基準というものが必要です。
それでプロセス指向でアプローチする領域がどこで必要かと考えてみると、皆さんご存知のとおり、開発にもプロセスはあります。ソフトウェア開発のプロジェクトが効果的、効率的に行えるようにするために、開発の種々のプロセスの成熟度を上げていこうというものもあります。ソフトウェアCMMと言われているものですね。業務プロセスもあります。プロジェクト管理も、環境マネジメントも多数のプロセスが必要になります。
プロセスは、並列に接続したり、直列に接続したり、分割したり、統合したりということができるので、出力は同じでも、Aさんが作ったプロセスと、Bさんが作ったプロセスがまったく同じに出来上がることはまずありません。でも、たいていはそれなりに使えてしまうのです。なぜかというと、プロセスは繰り返して使用することができて、改善をかけやすいというのが特徴だからです。
ある程度形になっていれば使えるものなら、理論的な考察と、経験的修得結果から一般的に使えるプロセスを用意できれば、すごく便利です。それぞれの組織が、それぞれの組織の成熟度にあわせて使えるし、ターゲットもそれぞれのレベルに適したものが設定できるから、願ったり叶ったりというわけです。何も苦しんで、プロセスを作りこまなくても、便利なプロセス化されたものがあるじゃないですか。そうなのです、だからITILがベストプラクティスといわれているわけです。
ITILに準拠していれば、用語は定義されているし、プロセスの出力、入力、定義も一般的な形で表現されているし、コミュニケーションのベースが出来上がっているということです。ITILのファウンデーションの資格を取得されている皆さんは、それが保証されているということですね。
ITILの効果は、会社がそれぞれ目指しているものによって異なるし、それぞれのプロセスの成熟度は会社のカルチャによっても違いがあるのです。ビジネスの業種によって、どのプロセスが重要かということは、理論的にも経験的にもわかりますが、どのプロセスから始めるべきかについては、アセスメントをしないとわからないですね。十人十色、千差万別といいますが、まず同じことはないです。同じ会社でも時期が違えば変わっています。アセスメントを行う人によっても結果は違います。
アセスメントの結果を見て、『ヒアリングでこんなことを言っているのは誰だ!』『どいつも、こいつもろくな仕事をしてないな!』と、犯人探しだとか、けなし合いになってしまっては、改善もなにもなくなってしまいますから、ちょっと押さえていただくことにして、先に進めることにしましょう。
ITILの効果は、
・現状を受け止める度量を大きくしてくれる。
・言うこと聞けと叱られていた連中の成長がわかってくる。
・心配していたのは自分だけでないことにホットする。
もしかして、そんなこところに効果が出ているかも・・・。
“ITサービスマネジメントのサービス品質を継続的に改善していく企業文化を形成すること。”がITILのマネジメント領域まで含めた目的であり、こういった企業文化を築ければ、競争優位に立つことができるということです。次回は、ビジネスとITサービスの関連についてお話したいと思っています。ITサービスと企業のビジネスとの関係を理解する、相互理解の必要性まで迫ってみたいと思います。
前田 隆
※このエントリはZDNetブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および ZDNet編集部の見解・意向を示すものではありません。
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