今回は、ちょっと趣向を変えてITILとビジネスの関連について言及してみようと思います。ITILスミレ本といわれる『ビジネスの観点』が出版されていますが、ビジネスとの関連をうまく表現しているものが提供されていないと感じています。私が独自に作成した“樽のモデル”を使って、ビジネスとITサービスの関連を解説してみます。
【概要】
ITサービスとビジネスの関連を表しながら、ITサービスをプロセス指向のアプローチで実施するモデルを表現したもの。プロセス間の重要な情報であるSLAとCMDBによって束ねられている。

【解説】
ITILを実装する場合、企業のビジョンが大きく影響を与えることになります。アセスメントの結果として、各プロセスの成熟度が判明します。明確にされたプロセス毎の成熟度をそれぞれ考慮したうえで、ビジネスとして何を求めるか、どの程度のレベルが要求されるかが調整、設定されます。各成熟度をプロットした、レーダチャートで表示されるのが通常です。
この樽のモデルは、木片がそれぞれのプロセスを表しています。木片の長さがプロセスの成熟度と、企業の文化的指標を表しています。単に成熟度が高いから長くなるということではなく、企業の要求レベルに対する貢献度、到達の度合いを考慮することが必要です。また、密着度がプロセス連携の度合いを表すことにたとえることができるでしょう。
中に入れるべき物質が何であるか、がまさしくビジネスそのものです。容積がビジネスの規模です。そして、これらのプロセスが緊密に連携し、共通の認識で共通のデータを扱えるようにするのが、2本の箍(タガ)の役割です。
1本は構成のモデル、サービスのモデルとそれらに関連したデータを適確にマネージメントすることが要求される構成管理データベース(CMDB)です。また、もう1つは、ビジネスの目標を達成できるように、ITサービスの品質を維持し改善する基本となるSLAです。最後に、これらビジネスが、底抜けのままで放置されないように、しっかりとしたセキュリティの下支えがはまっていなければならないでしょう。
プロセスはどれか1つを選んでもそれなりの効果をあげることができます。全プロセスが的確に実装されれば、最適化された状態で価値連鎖を生むようになるところまで到達できます。まずは、ビジネスをよく理解することが必要です。この樽で汲むものが液体であれば、木片同士は密着し、漏れないようにしなければなりません。しかし、ビー玉であれば、それに関する要件は軽減されるでしょう。もし、貴重品を入れるとすれば、蓋付きで施錠できるようでなければならないでしょう。ビジネスをよく理解することが、サービス提供の器としての要件を把握する上で重要なことなのです。
サービスデリバリは戦術的プロセス群と言われ、ビジネスの成功に的を絞り、カスタマー・リレーションシップ・マネージメント(CRM)の観点からアプローチしていきます。ビジネスが成功することにどれだけITサービスが貢献できるか、ビジネス環境の変化に対して追随できるか、サービス改善プログラムを活用していくことになります。現状のリソースの活用、将来を見越した計画、いざというときの対応計画が必要です。
サービスサポートは運用的プロセス群と言われ、ビジネスへのインパクトを最小にすることに焦点を絞っています。カスタマー・サティスファクション(CS)を重要視しています。提供しているITサービスの機能低下や不具合によるビジネスに与える影響がなるべく少なくなるように考慮しています。インパクトが時間的に積分されるのを避けるために、できるだけ早く復旧できるように注力します。インパクトが回数で積み上がっていくのを抑えるために、再発防止策として根本原因を解消します。これを適切に実施するためには、サービスを構成しているアイテムをマネジメントすることが重要です。
ITILを導入するときにビジネスの理解を忘れないようにしてください。ITサービスマネジメントはITILの導入が目的になってしまうと、会社のビジョンとは違ったゴールが設定されてしまい、ビジネスを成功に導くこと、ビジネスへのインパクトを最小にすることができなくなってしまいます。気をつけましょう。
前田 隆
※このエントリはZDNetブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および ZDNet編集部の見解・意向を示すものではありません。
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