リスクは「回避する」ものではなく「取る」もの

米野宏明(Hiroaki Komeno) 2007-11-26 18:00:00

いまだに 「低リスク高リターン」 な投資、なんてものに引っかかる人がいるんですよね。確かに手口は進化していますが、根っこはいっしょ。リターンが保証されている投資であると信じ込ませるために、いろんなシチュエーションが用意されているだけの話で。「M資金詐欺」 ってご存知ですか?株屋の世界では有名な詐欺の手口ですが、GHQが日本軍から接収し今も秘密裏に運用されているというウワサ、徳川埋蔵金やら、ロスチャイルドのなんちゃらと同じレベルの話です。その運用団体の秘密メンバーになると高利の運用ができるのだけども、その資格を得るには社会的な信用を持っていることの証明、つまり頭金が必要、だなんて。まさに 「だまされるほうが悪いんですよ(ボイスチェンジャーを通した声で)」 というやつですが、数年おきに騙される人が必ずいるから不思議。これってどうも、「リスク」 というものを理解していないからではないか、と思う次第。

「リスク」 と 「リターン」 は対義語じゃありません。リターンの対義語は 「ロス」、リターンとロスの 「幅」 がリスクなのです。投資用語では 「ボラティリティ」、統計用語では 「分散」 とも言います。つまり、低リスク高リターンな株なんてないのです、リターンはリスクの 1つの側面ですからリターンが高いものはリスクも高い。お得な保険なんてないのです、保険会社は高度なリスク計算の上で保険料を算定しているんだから我々なんかよりずっとうまくやっていますよ。今がチャンスのお得なマンション投資なんてあるわけないのです、あれは単に個人にリスクを肩代わりさせているだけの話。だいたいね、低リスクで高リターン、千載一遇のお得な投資を赤の他人に勧めるわけないでしょ。そんなのあるなら自分でやりますって。こんなの、投資の鉄則です。

リスク=危険=損失だと思ってしまう人が多いのです。だからひたすらリスクを回避しようとする。以前のエントリーでも書きましたが、Excel が内部統制上危ないと聞けば、Excel をやめて業務システム組もうなんて話になるのです。でもリスクは収益と損失の幅であり、収益機会を得るにはリスクを取らなければいけない。リスクは回避するものではなく、できるだけ事前に把握し対処方法を用意しておくものなのです。こちらはリスクマネジメントの鉄則。

常識であるはずのこの感覚、でもちゃんと持っている人って、意外に少ないな、と思います。ソリューション提案などしていますと、日本のユーザーは特に 「実績のある」「事例がある」 ことを非常に重視されます。安定した機能が欲しいという意味ではまだ理解できますが、同業他社が使っていることを判断基準にするのはちょっと疑問。もっとひどいのは、出来合いの機能やテンプレートがあることを重視すること。どうせ自社に合わせてバリバリにカスタマイズすることになり、結局最初から作ったほうが早かったじゃん、というオチになりがちですが、なぜか何度も同じ轍を踏みます。ベストプラクティスといえば聞こえはいいですが、実績がありテンプレートがそろっているアプリケーションなんて、単なる人の後追いでしかないのにね。パフォーマンス マネジメントの話をしているのにすぐに使える Dr. Sum のほうがいいとか、ナレッジ マネジメントの話をしているのに最初からいろいろついている Cybozu のほうが便利とか言われると、もうほんとがっかり、ばかばかしくて反論する気にもならない。インフラコストだからしょうがない、というならそれでもかまいませんが、IT 投資で競合他社に打ち勝とうというのなら、ぜひ考え直すことをお勧めします。IT 投資だって低リスク&高リターンなどあり得ません。一見そう思えるのなら、その高リターンは単に、他社に引き離されていた分を多少取り戻したに過ぎないのです。そしてそれまでの遅れは間違いなく機会損失を生んでいます。

これが欧米ですと、新製品の発売前の実地テストにお金を払ってでも参加しようという企業が、驚くぐらいたくさんいるのです。彼らの言い分は、「マイクロソフトの開発者自身が導入展開を手伝ってくれるから」「他社に先駆けて最新の技術を手に入れられるから」 だそうで。十分認識したうえでリスクを取ってリターンを手にしているのです。残念ながら日本ではそういうケースは圧倒的に少ない。正直なところ、日本人に染みついているメンタリティだと思うので、あと10年は変わらないのでしょう。そんな市場でプレーしている日本のIT業界が世界に出ていけないのも、しょうがないのかもしれません。

ちなみに、そんな数少ない 「冒険者」 の事例紹介を今週金曜日の Microsoft BI Conference で紹介しますので、ご興味ありましたら是非ご参加を。あと 3日、ようやく私の肩の荷が下りる日も間近です。

米野宏明@マイクロソフト

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