「コーポレート パフォーマンス マネジメント」 は 「企業業績管理」 なのか?

米野宏明(Hiroaki Komeno) 2008-05-18 17:22:07

前回は 「目標」 のあいまいなとらえ方について考えてみましたが、今回は目標以上に実に怪しい単語である 「管理」 について考察してみます。

IT 分野の輸入物キーワードには XX マネジメントなんていうのが多いですが、もともと IT 用語は全般に輸入物が多いため、ビジネス サイドの聴講者がいるようなセミナーのアンケートなどでは必ずと言っていいほど 「横文字ばっかりで分かりづらい」 などとコメントをいただくものですから、IT ベンダーの Web サイトなど眺めてみますと、例えば私の専門分野の1つである 「コーポレート パフォーマンス マネジメント」 は 「企業業績管理」 のように表現されているケースが多いようですね。個人的には非常に気に入らない訳なので極力使わないようにしていますが、まあでも、なんとなくそれっぽい雰囲気は醸し出していますし、ブランディング戦略上使わざるを得ない場合もあります。ただ、バズワードとしてはやや陳腐化しかけている感じで、違いを出すために 「次世代の戦略的企業業績管理ソリューション」 なんて言う人もいたりして、そのうちイマドキ風に 「戦略的エンタープライズ業績管理2.0」 なんて言ってみたりする人も出てくるかもしれません。ああ、この 「戦略的」 もまた怪しいんだよなあ。かと思えば逆に、外人は非常によく使う 「Visualization」、ちょっと前は 「可視化」 もしくは 「視覚化」 と訳すのが一般的でしたが、最近はもっぱら 「見える化」 です。ユルい感じがウケるんでしょうか。

本題から外れてしまいました。今回のポイントは、「Management」 は 「管理」 なのか、ということ。前回同様、和英辞典で調べてみると、「管理」 は 「支配」 という意味合いで administration や management、control、supervision などが訳語として挙げられています。また 「保管」 という意味で charge や care も挙げられています。国語辞典で調べてみると、「管」 は 「つかさどる」、「理」 は 「おさめる」 の意味があるそうです。それこそアパートの 「管理人」 のように、鍵をかけて回ったり決まりを守らせたり、という役回りが主たるイメージと理解しておけばよさそうです。

一方 Management を英和辞典で調べてみると、「経営」 や 「管理」 のほかに、「取扱い」 や 「操縦」、「やりくり」 や 「手際良さ」 などという意味も持っているようです。英英辞典ですと、administration of business や managers as a group といった、役割や人を表すもののほかに、handling of something successfully という意味が書かれています。全体としては 「うまいことする」 っていう感じなんでしょうかね。決まり事を守るという雰囲気よりも、もうちょっと前のめりな気がします。

つまり、「管理」 と 「Management」、もちろん意味に接点があるから訳語として割り当てられているのですが、中心点はかなりずれていると思うのです。「管理」 の中心点はどうやら 「Control」、すなわち日本語での 「制御」 に近い。一方 「Management」 は 「操縦」、つまり Control というより Steering 的な意味合いに中心があるように思えます。この訳語のミスマッチにより、例えば 「コーポレート パフォーマンス マネジメント」 を 「企業業績管理」 と訳してしまうことで、とても大きな誤解が生まれます。本当は 「組織能力の操縦」 と訳すほうが、よほど意味が近いはずです。

私見ですが、「企業業績管理」 という日本語が醸し出す意味に基づいて英訳すると 「Enterprise Results Control」 であるべきではないでしょうか。そして多くの 「企業業績管理」 ソリューションと呼ばれるものは、「成果の監視と共有による現場モチベーションの向上」、つまり文字通りの 「業績管理」 をスタートラインに置いている点で、Corporate Performance Management の本質とは出発点が異なるのです。以前のエントリーにも書きましたが、組織の活動を 「監視」 することと 「統制」 することでは雲泥の差があります。組織の持つ能力を最大化するために、組織全体で戦略、現状、見通しを共有し、統制のとれた組織にすることがパフォーマンス マネジメントの目的であり、決して業績を制御することではない (もちろんそんなこと出来るわけもない) のです。

パフォーマンス マネジメントも 「やる気にさせる化」 ぐらいのユルさのほうが正しく伝わるのかもしれませんね。

※このエントリはZDNetブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および ZDNet編集部の見解・意向を示すものではありません。

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