感染者数の報告が減ってきているのは終息しつつあるのか、それとも症状が軽度なことが分かり病院に行かないようになってきたからなのか。医学知識に乏しい私に因果関係は測りかねますが、今日時点ではまだ新型インフルエンザ対策のためにマスクを着用している人を多く見かけます。かく言う私もその一人。花粉症持ちなこともありますが、気がつけば一年近くこちらへの投稿もできないほど多忙だったため風邪の予防に相当注意を払っており、いわゆる不織布マスクのお徳用パックを持っていたので、売り切れ続出の間も着用できていました。
ピーク時から最近までは、ニュースサイトのジャーナルやテレビなどで、マスクの品切れの報道とともに、日本における異常な騒ぎぶりに疑問を呈するコメントを多く見かけました。どこかの医者をひっぱり出してきて 「医学的に見て滑稽だ」 のようなことを言わせてみたり。しかしその主張にも納得できる論拠やデータが提示されることがほとんどなく、しかもそういう医者のコメントも切り貼り編集の跡が見え見えで、どうにも文脈が疑わしい。ということで、医学知識という決定的な情報が欠けていながらも、「騒ぎすぎ」 派の主張を分析してみることで、背景の真実を推測してみたいと思います。
各種ソースを総合してみると、「諸外国では冷静なのに日本では大騒ぎしているのはおかしい」 というのが基本論調のようです。まさにその騒ぎの最中にいる私たちにとっては、ニューヨークあたりの街頭インタビューで 「だれもマスクなんてしてないよ〜」 とアメリカ人たちにバカにされると、ついうっかり 「騒ぎ過ぎなのかな」 なんて反省したりします。しかしこの基本論調をよく見ると、どこにも客観的判断基準がありません。
この手のあやしい問題提起は、パーツに分解するとすっきりします。こんな風にです:
1. 「諸外国」 とはどういうところなのか?
2. 「冷静」「大騒ぎ」 とはどういう状態なのか?
3. 「おかしい」 とは何と比較しているのか?
1 の 「諸外国」 ですが、インタビューのほとんどはアメリカ、一部ヨーロッパ諸国といった感じです。アメリカ人に関して言えば、雨が降っても傘を差さないで平気な人たちですから、そんな頑丈で鈍感なヤツらと比べられても困るんですけども、それを除いて考えたとしても、彼らのインタビューからは 「マスクは風邪をひいた人がするもの」 であり 「元気な人がマスクをしていると変、罹患を疑われる」、という背景が伝わってきます。裏を返すと、「風邪をひいたらちゃんとマスクをする」 マナーが定着している国々、であるわけです。会議中やレストランなどでうっかり咳やくしゃみをしてしまうと、必ず謝りますしね。
2 の 「冷静」 か 「大騒ぎ」 かですが、皆さんの周りは大騒ぎでしたか?確かにマスクが売り切れていたという話は会社でも実際に聞きましたが、だからといって買えなかった人も別に慌ててはいません。売り切れ始めた当初、別のものを買うために薬局を訪れると、そこを出るまでの 10 分ぐらいの間にマスクを買いに来た人を 5 人ほど見かけましたが、皆一様に、入荷日など尋ねたり食い下がったりすることなくあっさり引き下がっていました。電車が事故で止まると必ずと言っていいほど駅員に無駄に怒りだす人がいるところから考えると、相当冷静というか、ある種の 「諦め」 なのかもしれません。そのうち 「ペーパータオルを使った手作りマスク」 なんていう話も登場したりして、しかし実際にそれを着用している人を見かけないところをみると、諦めも通り越してむしろちょっと楽しんでいるぐらいなのかもしれません。結局騒ぎ立てているのは、ネタ欠乏のマスメディアと選挙を控えた政治家ぐらいのもんです。
3 の 「おかしい」 は 「異常」 という意味ですから、正常ではないということです。では 「正常な反応」 とは何でしょう?
1、2 で明らかにしたように、「風邪をひいたらちゃんとマスクをする」 ことを前提とした 「それでもかかっちゃったらしょうがない」 という諦観含みの冷静さ、が正常な反応と言うことなのでしょう。この件に関してリスクマネジメントの専門家などが述べるように、欧米諸国の対応方法と照らし合わせれば、罹患のリスクとコストおよび機会損失のバランスが取れていない、と言われれば確かにその通りです。しかし、それはあくまで前提が同じだった場合に限ります。
普段、口にハンカチどころか手もあてずに、意図的と思えるほどに大きな声を出しながらくしゃみをするおじさん、落ち着きなく携帯電話を操作しながら咳き込む若者など、よく見かけます。アメリカでもダウンタウンの外れの裏通りでそんな感じの人を見かけたことがあります (多分マリファナの吸いすぎで喉が荒れているだけですが)。道徳教育が未熟な人はお行儀よく咳やくしゃみをしない傾向がある、と考えてよさそうです。つまり、季節の変わり目などの時期に真っ先に風邪をひくようなうっかり者はマスクもせずに周りに菌を撒き散らすので、そんなうっかり者から病気をうつされるのが嫌なしっかり者は少しでもその確率を下げるためにマスクをする、という構図です。
したがって、この状態を 「騒ぎすぎ」 と称するのは正しくありません。先の構図に従えば、この段階に至って新型インフルエンザに感染する人が、その発症初期の段階でマスクをしてくれる可能性は低いと考えるのが自然であり、自己防衛のための当たり前の反応と言えるでしょう。この状況を変える必要があるのなら、風邪をひいたらマスクをする、という当たり前の行動を社会のコンセンサスにする、という教育が必要です。もちろん個人レベルで実践できている人もいるわけですが、皆が、風邪をひいてマスクをしないことが 「恥ずかしいこと」 に思えるようになるための社会全体の教育をリードする最大の責任は、社会を導く公の存在であるはずのメディアと政治家、つまり騒いでいる張本人にあるはずです。
※このエントリはZDNetブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および ZDNet編集部の見解・意向を示すものではありません。
- 前のエントリー: BI スキル不足という課題
- 次のエントリー: 続・新型インフルエンザは 「騒ぎすぎ」なのか?について分析的に考えてみる
「大競争時代のBI活用術」 のバックナンバー
-
SharePoint 2010 がもたらす BI 革新 - 第 1 話 : Excel Services によるワンストップ BI システムの展開
2010年上半期中に一連の Office 2010 製品群の一部として SharePoint 2010 の提供が予定されています。このご時世にも関わらず、SharePoint 2010 の製品紹介セミナーを開けばことごとく満席になってしまうほど大... -
続・新型インフルエンザは 「騒ぎすぎ」なのか?について分析的に考えてみる
-
BI スキル不足という課題
-
「コーポレート パフォーマンス マネジメント」 は 「企業業績管理」 なのか?
-
目標管理がもたらす弊害、の正体
- 大競争時代のBI活用術 一覧へ »
企画特集

-
経営統合後の事業損益構造の見える化を実現
SAS Performance Managementの導入事例紹介!! -
仮想化をダメにするストレージの実態
求められるストレージ正常化のキーワードとは? -
アプリケーション仮想化 3つの課題
最新のCosminexus V8.5の知られざる実力 -
事例 VMwareでデータセンターをクラウド化
富士通の開発環境を効率化したクラウドのノウハウ -
DBのパフォーマンスに困ってませんか?
既存のデータベース環境に追加するだけで性能が2倍に -
レガシーアプリケーションの稼働どうしてる?
互換性の問題、あなたはどう考える?意見募集中! -
利用者の理想を追求した最新レンタルサーバ
サイト制作事業者がその評価結果を徹底レポート! -
仮想環境のバックアップは難しいのか
効率的なバックアップへの2ステップを解説 -
身近な業務をCRMが変革!
実は、埋もれた情報が鍵だった -
通販サイトのアクセス集中からの危機を救う
4つのケーススタディからWebシステムを徹底解説 -
新しい視点のレンタルサーバが誕生!
スタートアップ企業、開発者に最適なそのポイントとは? -
御社はまだフリーの転送サービスですか?
大容量ファイルの受け渡しに「ルール」と「安心」を -
アンケートから見るセキュリティ対策の実態
8つの機能が中小企業の情報資産を守る -
ビジネスを支えるWebシステム最前線
システムトラブルの6割が、ソフトウェアに原因あり
-
7. ホットスポットと同時並列性分析について
この3分間のビデオは、Intel Parallel Studioの一部であり、アプリケー... -
8. Valarray
この5分間のビデオでは、Intelコンパイラの1次元Valarrayデータ構造に対...
新着企業動向
-
「Digi Embedded Technology Forum 2010 Tokyo」を開催
ディジ インターナショナル -
SANS SECURITY 560「Network Penetration Testing and Ethical Hacking」
NRIセキュアテクノロジーズ -
【EMCジャパン Tech Communityサイト】EMC Celerra Technical Primer:ビジネスの継続性とデ...
EMCジャパン -
WisePoint
ファルコンシステムコンサルティング - 企業動向一覧へ»
米野宏明(Hiroaki Komeno)
