情報遅延によって生じる経済的損失

呉井嬢次(Johji Kurei) 2005-08-02 23:17:00

 リアルタイムに入手した情報が、実は既に古い情報だった。ブロードバンドで入手している情報の中には、古い情報がまぎれこんでいることがある。先日、こんな体験をした。あるウイルス対策ソフトの定義ファイルの存在を知人から聞かされ、該当定義ファイルをパソコンに適用したら、もっと新しい定義ファイルが適用済みだった。画面には、古い定義ファイルである注意が表示された。もちろん、知人に悪意はない。新しいウイルスが猛威をふるっているので、親切心から教えてくれたのだ。ただ、新しく登場したウイルスを改良した亜種についてまで、配慮する余裕がなかったのだ。

ウイルスを改良した亜種

 新しいウイルスが登場すると、そのウイルスを解析して、チョコチョコっと手を加えて別なウイルスが登場する。これが亜種と呼ばれ、新しいウイルスが広まりだすと登場してくる。この頃にはワクチンメーカーから定義ファイル(パターンファイル)Aが入手できるので、パソコンに適用すればウイルスの感染を防止&駆除できる。亜種にも色々あって、バイナリエディタでメッセージを変更する程度であれば、適用したウイルス対策ソフトで防げる。
 しかし、亜種によっては、ウイルス対策ソフトを回避させる手を加えた亜種がある。そうなると、ワクチンベンダーは次なる定義ファイル(パターンファイル)Bを作成し、配布する。つまり、パソコンユーザーは、定義ファイル(パターンファイル)AとBの両方が必要となる。AとBが登場する時間差は数時間以上の間隔が生じることだってある。つまり、野菜や魚のように鮮度が重要なのだ。鮮度が落ちた野菜や魚なら、値段も安くなっているし、見た目でもわかる。でも情報セキュリティーの世界では、提供されているサービスが値引きされることもないし、ユーザー自身が区別するのは容易ではない。同じセキュリティ費用を出していても、早くサービスを受ける仕組みができていなければ、経済的に損をする、なんて考えるのは少数だろう。しかし、情報遅延はウイルス対策に限った話ではない。

情報遅延が悪用される事件

 インターネットでリアルタイムでコンテンツを見ていても、実際には数秒から数分ずれることがある。この遅れは、ネットワークを流れるデータを受信側となるパソコンによる処理時間だけではない。ネットワークの負荷を下げるために、効率的に配信する仕組みで、中継地点でデータを圧縮したり、分散して配信する処理時間も影響する。ネットワークが混んでいると、遅延時間は時間が経つにしたがって遅延時間は延びていく。10分以上の遅延が発生することだってある。もちろん、遅延が発生させない仕組みも存在する。遅延が起きない仕組みを導入すれば、コストもかかる(結果として利用者への利用料金に反映する)。もちろん、パソコンを使っている利用者は、そんな対策に気づかすにコンテンツを見ている。

 これを悪用すると、こんな詐欺が成り立つ。インターネットによる賭けを申し込む画面、賭けの模様をインターネットで中継する。すると情報遅延によって、先に結果が判明しても、中継した画面では賭けが始まっていないので、ウェブで賭けを申し込む顧客(カモ)が出てくる。顧客はインターネットで賭けの模様が中継されているので、実際に賭け進行している錯覚に陥る。賭けの結果を知ってから、買った方に賭ければ、必ず勝つ。こんな詐欺が実際に起きている。賭け事は何でも構わない。他のメディアで情報が入手できない環境に顧客(カモ)を置くか、情報を制限された賭けであればいい。外国の競馬、外国株式市場を中継し、ウェブで申し込むことが可能なら、理論的には可能かもしれない。犯罪の手助けをするつもりはないので、見破るコツ、見破れないコツは差し控えるが、情報システムに関する知識と想像力を組み合わせれば、空想の世界は広がっていくだろう。

情報遅延の法的な制約の必要性

 これから、インターネットによるオンライン株取引、電子入札、電子調達など、情報の遅延によって影響を及ぼすサービスが増えていくかもしれない。現在は、情報遅延によって引き起こされる経済的な損失に興味をもっていなくても、被害を未然に防止する上で、将来は、遅延許容時間をルール化する動きが出てくるに違いない。パソコンのセキュリティー対策は、ウイルス対策で安心していないだろうか。現在、インターネットに接続されたパソコン、携帯電話からでもアクセス可能なサービスがある。数年後に情報遅延が発生していた、なんてことで経済的な損失を被らないようにしたいものだ。

※このエントリはZDNetブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および ZDNet編集部の見解・意向を示すものではありません。

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