最近、米国の法律(SOX法)の日本版が情報システムに影響を与える可能性を指摘する声が聞こえてくる。確かに、米国では同法が施行されたものの、対応できない企業が相次ぎ、膨大なIT投資を余儀なくされた。しかし、日本では米国の企業で起きた問題ほど、深刻な問題とはならないだろう。
米国のSOX法とは
SOX法と呼ばれるSarbanes-oxley法は、米国企業のずさんな経営が引き金となって策定された法律だ。同法は、企業の会計制度にメスを入れることによって、監査法人の行動を厳しく制限し、経営者には情報開示を求めている。監査法人が独立性を確保して、企業に対して適正に行動していれば、何も問題はなかった筈だ。SOX法によって、情報システムにまで影響を与えたことで、会計制度が情報システムに影響を受けやすい、つまりITを抜きにして、この問題を解決できないことを証明したともいえる。
SOX法が情報システムに与えた理由
では、SOX法の何処がITに影響を及ぼすのだろうか。幾つかあるが、最も影響を与えたのは、404条にある「内部統制の管理」である。企業は財務諸表を作成するが、その手続きを定めて、毎年評価することを定めている。この「手続き」は、内部統制という言葉が使われているが、それを具体的に文書化することを意味する。つまり、普段行っている仕事のプロセス(起案、承認など)を文書化することを求めている。技術者が製品を設計したり、プログラムを書く時には、当たり前に行っている設計図面、仕様書などを作成する。しかし、このような手続きを、会計処理の視点から作成しない企業が多かったのだ。SOX法は2002年7月に施行されて、2004年度の財務諸表には適用しなければならないので、時間的な猶予ない。そこで頼りにしたのがITとなったのである。
SOX法で直接影響するのは一部の企業
とはいえ、SOX法の対象となったのは、すべの企業ではない。ニューヨーク証券取引所などに上場するほんの一部の企業しか対象となっていない。この頃は、ITバブルが弾けた時期と重なって、このチャンスに飛びついた企業も多い。さて、内部統制をITを使って管理するとは、どういうことなのか。わかりやすく言えば、社内手順を電子文書化し、プロセスを含めて管理することである。そのプロセスには通常の業務プロセスだけでなく、例外的なプロセスも含まれる。業務に変更が生じた場合も、文書化しておかなければならない。状況に応じて対応が求められる企業では、手続きの変更は多い。その度に文書を作っていては、仕事にならない。よってITの助けを借りる、つまり、情報システムが協力し、SOX法に対処したのである。
日本の企業は大丈夫
問題は日本の場合だ。米国で上場している企業がSOX法に影響を与えることは当たり前だが、東証、大証などに上場している企業にも、金融庁は独自のSOX法を準備している。今年7月に企業会計審議会がホームページに試案を公開したことで明らかとなった。これによれば、幾つか異なる点がある。
・時間的な余裕がある
米国では法律が施行されて、わずか2年の余裕しかなかったが、日本では未だ法律が施行されておらず、試案の段階で2008年度または2009年度頃を予定しているので、時間的な余裕は十分残されている。もちろん、何もしなければ、話は別だ。このブログを読んだ経営者は、次年度IT計画を練っている情報システム部門責任者に「日本版SOX法対策は含まれている?」と確認すればよいだろう。
・罰則がない
米国企業がSOX対応に追われた理由の一つとして、罰則の存在がある。罰金100万ドルまたは10年の懲役、罰金200万ドルまたは20年の懲役などが1106条に明記されている。しかし、日本版SOX法の試案には、罰則が明記されていない。日本版SOX法を策定するにあたり、日本ではエンロンのような巨大企業による問題が発生していないこと(国内の化粧品会社による粉飾会計問題は、エンロンに比べれば規模が小さい)、社会的な倫理より、企業的倫理が優先されていることが背景にあるのだろう。米国の場合、法令順守(コンプライアンス)という観点からも、企業は急いで対応した。それでもSOX法施行後、最初の年次報告書の提出期限を守れなかった企業は20社を超えたのである。日本版SOX法の草案で法律になれば、企業は罰則を恐れる必要はない。そのため、対応を見送る企業も増えてくるだろう。
以上の点から日本版SOX法が企業に与える影響は小さいといえる。ただし、企業が何もしなければ、同じような問題が起きることは間違いない。情報セキュリティー対策は、技術的な視点も大切だが、時には、情報システムに影響を及ぼす可能性も事前に察知し、対応しなければならないのだ。
SOX法
http://news.findlaw.com/hdocs/docs/gwbush/sarbanesoxley072302.pdf
※このエントリはZDNetブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および ZDNet編集部の見解・意向を示すものではありません。
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