PSEマーク問題からの教訓

呉井嬢次(Johji Kurei) 2006-03-30 17:48:00

 他人事だと思ったことが、我が身にふりかかることがある。経済産業省の発表資料を読んでいたら、自分のシンセサイザがビンテージ品リストに載っていた。まだ使える電子楽器が勝手にビンテージ(古くて価値があるもの)に選ばれ、妙な気分である。

家電製品、IT家電の境目

 さて、テレビが見れるノートPCが発売され、音楽やビデオを編集できる高性能なソフトウエアが発売される現在、PSEマークの対象にIT機器が載る日がやってくるかもしれない。IT機器の場合は、メーカーが毎年新製品を出荷し、ソフトはバージョンアップを繰り返している。そのうち、ビンテージIT製品がPSE対象に入り、機器リストには数千機種が載る時代がやってくる(かもしれない)。

無意味でも維持された制度

 こんな冗談のような事が、実際に起きた国がある。まだ東西冷戦の頃、西ドイツは国外から持ち込むノートPCを輸出入規制に違反してないかチェックしていた。空港の職員は、世界中で発売されているノートPC一覧を片手に、真偽を判断していた。さすがに、今では行われていない。日本では、情報系の資格試験で電卓の使用を一切禁止せず、持ち込み禁止対象の電卓一覧を作り続けていた。試験官は、リストを片手に受験者の電卓を調べていた。PSEマークの「特別承認に係る電気楽器等一覧」も、ビンテージものが追加されていく、、、いやな予感がする。

合理的な利用が選ばれる

 これとは逆に、米国では資格試験で使用を許可した電卓を指定している。CFA(公認金融アナリスト)資格試験では、HP 17bII+、BA II PLUSが指定されている。PCが一人一台に普及したとはいえ、操作性、携帯性、使用可能になるまでの時間の短さ−−などの理由から、電卓を選ぶ人も多い。

 情報セキュリティ分野でも、あえて古いOSを選択するケースがある。最新OSではCPUに負担が高く、処理速度が落ちる為だ。僅かな処理能力を稼ぐために、サポートが切れたMS-DOSを選ぶ。そんなマニアックな世界は特殊だが、OSが余計な処理プロセスを除き、正確性を求めるベンチマークの測定するニーズは多い。例えば、他社セキュリティ製品と比較する資料には、同じ条件で評価することが要求される。

 また、数年前に購入したPCを使っている企業では、ウイルス対策ソフトのバージョンアップで使用するメモリ使用量が増えて業務アプリケーションが動かない現象が起きた。最新版ソフトウエアであれば、脆弱性が修正されている利点がある一方PC本体にメモリ追加、CPU交換の追加投資が要求される。しかたなく、その企業は、リスクを保有して、旧バージョンで使用していた。

利用者の声を聞こう

 利用者にはいろいろな事情がある。それでも必要な規制なら、作る必要がある。しかし、利害関係者には十分な告知を行う必要があるのは、企業のセキュリティ責任者にも同じことがいえるだろう。新しいセキュリティ基準を作って、合格したPCに「適合シール」を貼り付けている企業も多い。PSEマークによる騒動は、他人事ではないのだ。

特別承認に係る電気楽器等一覧
http://www.meti.go.jp/press/20060330004/20060330004.html

※このエントリはZDNetブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および ZDNet編集部の見解・意向を示すものではありません。

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