Podズルズル(Podslurping)が抱える課題と対策(1)

呉井嬢次(Johji Kurei) 2006-10-05 11:20:00

 携帯デジタル音楽プレイヤーから著作権のある音楽コンテンツを抜き出す行為が深刻な問題となってきた。お気に入りの曲を購入ダウンロードしても、事故や故障修理によって機器から曲が消えるリスクに対し、非力な個人消費者が立ち上がったのか。いや、従来から存在する違法行為の延長なのか。判断するのは時期尚早だ。次のターゲットは携帯電話だろう。

ポッドスラーピングは合成語

 携帯デジタル音楽プレイヤーから音楽データを抜き出す行為をポッドスラーピングという。ポッドは、代表的な携帯デジタル音楽プレイヤーであるアップル社iPodの略で、スラーピングとは、飲み物や食べ物をズルズルすする行為の意味で、ポッドスラーピングは合成語である。iPodに口をつけ、中から曲をズルズル吸い出しているイメージが思い浮かぶ。

ポッドスラーピングを恐れる業界

 有料で音楽をネットで販売している業界にとって、ポッドスラーピングは著作権違反行為であり、ビジネスモデルに風穴を空ける許せない活動で許しがたい筈だ。健全な音楽の創作活動を妨げる行為は、アーティストにとっても生活基盤を不安定にさせる。アーティストによっては、創作意欲の低下につながり、応援しているファンは悲しむことになる。

 また、ポットスラーピングの影響に懸念しているのは、今後この分野にビジネス展開を考えている業界だ。例えば、携帯電話で音楽をダウンロードできるサービスが存在するが、ネット対応の携帯音楽プレイヤーの市場を意識してビジネスをしている。新しい携帯電話は、大容量の記録媒体を持ち、高音質をセールスポイントとしている。

 そこでポッドスラーピングが行われると、これまでの情報投資が回収できないことになる危険性があり、経営上無視できないのは明らかだ。よって、ポッドスラーピングには、関連する業界、団体からの過剰な対抗措置が予想できる。

ポッドスラーピングに挑む人達

 その一方で、ポッドスラーピングに挑む人達がいる。ポッドスラーピングを支持する人達、ポッドスラーピングの防止する人達、そして少数だが、ポッドスラーピングの実現を試みる人達である。

 購入した音楽を手元に置いておきたい、色々な場所に応じて、適したデバイスで音楽を聴きたい人達は、ポッドスラーピングの支持者が多い。デジタル音楽の著作権保護機能は、利用範囲が限定されており、音楽データが格納されている記録媒体に異常がなくとも、再生するデバイスで発生した事故によって、購入した音楽データが消えてしまうリスクがあるからだ。私自身も、ネットで購入した後に故障が原因で消えてしまった辛い経験がある。あの時に、なんらかの方法でバックアップを取れなかったのか、ビジネスモデルを設計する時に、顧客に配慮してシステムの設計がなされなかったのか、ずいぶん考えた。そこで到達したのは、著作権違反を防止して、健全な創作活動を維持するにはメーカーの配慮に従って、顧客である利用者もある程度の妥協をすべきなのだろう、という漠然とした結論に至った。

 しかし、色々調べていくと、バックアップが簡単にとれることがわかった。バックアップ方法という情報を知らない者は、再び購入してコストを負担させられ、知っている者はバックアップ媒体からリストア(復元)して得をする。そんな現実が判明した。こうなると、個人的に保存する行為は自らのリスク管理であり、ポッドスラーピングは当然の行為であると支持する人達がいるのは、こうした事情だ。

 ポッドスラーピングが著作権違反の行為となると、その脅威に挑むタイプは、セキュリティ対策側の人達である。パソコン通信という20世紀に普及したコミュニケーションの頃から音楽のダウンロード販売は
行われ、色々なセキュリティ対策が採られていた。例えば、データの一部を反転させたり、処理を施して配信したり、電子すかしを埋め込む方法があり、ポッドスラーピングという新しい脅威は、まさにメシの種となる。率先して、ポッドスラーピングには挑戦している。そしてメーカーの中にもポッドスラーピングに挑戦している人達がいる。

 最後にポッドスラーピングの実現に挑戦する少数はは、新しい電子機器に組み込まれたシステムのセキュリティ機能を解除、回避させることに情熱を注いでいる。これは非生産的であり、マイナスのエネルギーである。そして違法に入手した音楽データは、無料でばら撒かれる。開発者は利用者に責任を押し付けている某P2Pソフトでは、著作権違反された音楽データが多数存在している。開発者はP2Pビジネスで稼ぐ一方で、問題を認識できない未成年のP2P利用者は音楽データをダウンロードして楽しむ。最終的には、すばらしい音楽を創作する活動を妨げている。

(続く)

※このエントリはZDNetブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および ZDNet編集部の見解・意向を示すものではありません。

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