Podズルズル(Podslurping)が抱える課題と対策(2)

呉井嬢次(Johji Kurei) 2006-11-18 11:41:00

 携帯デジタル音楽プレイヤーから音楽データを抜き出す行為をポッドスラーピングという。前々回では携帯電話へも波及する可能性を示唆したが、今回はポッドスラーピングのテクニックの一つであるダウンデートとその問題点を取上げる。

ダウンデートはバージョンを下げること

 ダウンデートとは、アップデートの逆で、特定のバージョンに戻すことをいう。通常のソフトウエア(OS、アプリケーション)では、セキュリティに関わる脆弱性、設計仕様上のバグの修正は、アップデートによって利用者に提供される。サービスパック、修正プログラム、セキュリティパッチ等、呼称は異なるが、どれも最新のバージョンにすることで、「アップデート」と言われる。

 ところが、稀にアップデートするソフトウエア自身に問題が発見されることがある。主な理由は、十分なテストが不足する場合、利用者が想定外の利用で支障が出た場合だが、その時は前のバージョンに戻す。これが「ダウンデート」だ。問題のあるアップデートを提供したら、ひとまずダウンデートした後に、改めて「正しい」アップデートを行う。これが確実なやり方だ(別な方法もある)。

もう一つのダウンデートの意味

 ところが、ポッドスラーピングの場合、ダウンデートはまったく別な意味を持つ。携帯デジタル音楽プレイヤーにポッドスラーピングすることが判明すると、メーカーは、機器のファームウエアを差し替えて、ポッドスラーピング対策を講じる。ファームウエアのバージョンアップとして行われる。同時に、それ以降に発売される音楽プレイヤーは、新しくなったファームウエアが搭載されている。

 著作権違反してでも、色々な音楽を聴きたい人は、同じ機種でも古いファームウエアを搭載している製品を買い求めることになるが、簡単に入手できない。善良な利用者は使い続けているし、中古市場も品薄になり値段も高くなる。こうなると新しいファームエアのバージョンを旧バージョンに下げるプログラムが登場してくる。これがダウンデートするソフトウエア(ダウンデート)で無償でインターネット上に公開されている。

ダウンデートによる2つの弊害

 ダウンデートによる弊害は2つある。まず、ポッドスラーピングが可能になることで、著作権違反を助長することだ。メーカーが修正するアップデートを提供しても、利用者が個人的にダウンデートするので強制力を持たない。通常の操作には影響を与えないので、従来の利用者の大半は、ファームウエアをアップデートしない(する必要性もないと思っている筈だ)。パソコンの利用者と異なって、年齢層も低い。アップデートをさせるには、通信コストの負担を強いることになり、アップデートを遠ざけている。

 もう一つは、バージョンアップにセキュリティに関わる脆弱性の修復が含まれていた場合、ダウンデートした利用者は不正アクセスなどの脅威にさらされるリスクが発生することだ。著作権違反は利用者本人の問題となるが、不正アクセスは第三者が利用者の音楽プレイヤーにアクセスされてトラブルが起きる。
利用者は被害になる。

 携帯機器の場合は満足なログ管理機能がないため、電子的な証拠を法的に確保する手法(サイバーフォレンジック)が効果的に使えない。つまり、ポッドスラーピングによるダウンデートは、セキュリティ面から避けるべき行為である。

 商用音楽データを不正に楽しむ為に、ダウンデートするリスクと引き換えにする行為は愚かなことだ。それを防止するには、ダウンロードするプログラムを根絶すること必要だろう。だが、元のバージョンに戻すソフトウエアの作る行為を不正な行為の助長として問えるのか、法的に難しいだろう。個人情報が漏洩し、バグを修正しないソフト開発者が野放しにされている現状をみると、裁判に任せる他はないのかもしれない。ポッドスラーピングの問題は、デジタル音楽市場が拡大する過程で生じた面倒な小さなノイズなのだろうか。

※このエントリはZDNetブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および ZDNet編集部の見解・意向を示すものではありません。

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