ソフトウエア特許で日本企業が600万ドル支払うことに

呉井嬢次(Johji Kurei) 2007-06-19 11:43:00

 既に無効となったGIF特許によって、アクセスは、ユニシスへ600万ドル支払うことをホームページに掲載した(6月18日現在)。ユニシスの持つGIF特許は2004年6月20日に日本で失効しているが、裁判が起こされた2004年9月時点では、未だ効力を持っていたからだ。
 ある日、特許料の支払いを求められたら、どうしますか?その対策せずに経営者は安泰だろうか。

「1キロ先を見通せる目」を持つには

 600万ドルと言えば、TVドラマ「600万ドルの男」を思い出す。昔の子供達にとっては夢のような金額だった(当時の金額に換算すれば、1ドル300円だから18億円)。今では、1ドル123円として計算して、約7億4000万円の支払いとなるが、それでも企業にとって大金だ。それだけに特許が企業に与える影響を軽視するわけにはいかない。

 GIF特許によって600万ドル支払う経緯は、アクセスのプレスリリースを読んでもらえればいいが、ソフトウエアを設計、開発する企業が注意すべき点は何か、そこを教訓にしておかなければ、今後も特許による訴訟に巻き込まれる危険性がある。

 http://www.jp.access-company.com/news/press/2007/070615_01.html

 ソフトウエア開発に10年間も従事していれば、GIF特許を代表とする特許ビジネスの処し方は知っていると思う。しかし、インターネットが身近に存在して育った世代にとって、オープンソース、Linux環境が当たり前となると、知的所有権の世界が異質な世界に思えても不思議ではない。
 世の中の特許を相手にした仕事を経験すると、え?こんなものが大企業から出されているの?なんて事がたくさんある。例えば、

・業務の流れを電子化し、承認を得る仕組み
・フォルダやディレクトリを表現する方法
・電子ファイルにすかしを追加する技術

 このような仕組みは、既に一部で製品化されていたり、オープンソースとして存在する。しかし、特許は存在する。そんな大企業が取得していて、かつ、オープンソースを支援しているという理由で、大丈夫と思う経営者やエンジニアがいる。

 異質と思う現実を知らないで、そんな特許を拝借してシステム作ってしまうと、直ぐに問題は起きない。ジックリ調べ挙げてから、タイミングとしては、システムで金を儲けてたあたりから、特許を片手に大手企業の法務部門の担当者がやってくる。そして、儲けたお金は、右から左へと流れていき、手元には・・・となる。

知的所有権に関する授業を受けたことがありますか

 知的所有権に関する知識を十分に持たないエンジニア、管理職、そして経営者が多い。ソフトウエアライセンス違反さえしなければ、仕様通りに作れば責任はないと思っている。その背景として、理系の大学では、技術を教えるが特許を含む知的所有権の保護する方法を体験していないことにある。

 一つのアイデアを特許として形になるには、幾らかかるのか、その為に必要な文書の書き方は、論文の書き方とは大きく異なる。また、文献の調査方法と特許の調査方法とも違う。オープンソースが何かを教えることは重要だけど、その前に、過去の知的所有権について、知らないと社会に出てから困ったことになる。

 一部の企業は、そんな現状を知っているので、入社後に改めて知的所有権について教えている。ところが、若い企業では、入社したら即戦力として現場に配属されてしまう。ITの環境に満悦するエンジニアにとって、特許なんて無縁になる。

特許を避けたがる日本の経営者にも責任あり!

 実は、特許に関する知識を持っていないのは、エンジニアや管理職だけの問題ではない。知的所有権に関する知識をエンジニアに持たれてしまうと、困る経営者も多い。退職した従業員が発明した特許による裁判を起こし、支払いを求められることを恐れている。

 エンジニアは知的所有権において馬鹿であればよいわけではない。オープンソースによって世の中に貢献するのも良い。しかし、他人の特許という地雷を踏むことによって、企業が被害を被らないことを考えれば、経営者は従業員に対して、知的所有権について正面から向きあうべきだろう。

ソフトウエア特許を顧客が出して手足が出せないケース

 一つ面白い例を挙げよう。企業A社に勤務するプログラマXが、顧客Bとのプロジェクトに参加し、プロジェクトの完了と同時に勤務先A社を円満退職した。それから1ヶ月後に顧客Bは、プログラマXによって作成された仕組みで特許を取得したことをA社は知った。

 その詳細を調べてみると、顧客Bの担当者と共にプログラマXが特許に名前を連ねていた。企業Aは、特許に関する社内規定が十分でなく、それに対して企業Bは法務担当者が存在していた。結局A社は、この特許に手出しすることはなかった。社内で特許という芽を育てておきながら、受託開発で甘んじるしかなかった。ちなみにA社の経営者は、そんな事情も知らず、プログラマが一人退職した程度にしか感じていなかった。

 さて、顧客BとプログラマXは、どんな取引をしたのだろうか。報酬が600万ドルだったら、右腕を強化してコンクリートを砕く能力を身につけたかもしれない。ただ、逃げ足は時速100Km並に速かった。

 特許にまつわる話は、なかなかインターネットでは見つからない。だけど、決して異質な世界の物語ではない。リアルな世界の話である。

※このエントリはZDNetブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および ZDNet編集部の見解・意向を示すものではありません。

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