仕事と作法

前川賢治(Kenji Maekawa) 2007-09-13 17:05:23

 先日、お会いしたお客様(不動産関係)にこんなことを言われました。

「今の世の中、利回りだけでは物件は売れないんです。たとえばその物件を所有する喜びを価値として提案するといったように、お客様の期待を超えるような驚きがないと、お客様は話を聞いてくれません。」

 なるほど、IT業界ではソリューションによる価値提供(バリュー・プロポジション)という考え方が久しく言われていますが、他業界でも同じような発想が求められているのだなぁと感じました。

 前回、企業が持つ製品や技術をソリューションとして顧客に提示するには、組織内での情報共有が欠かせないと書きましたが、まさに新たな価値を生むために、社内の情報環境を刷新したいという考えを強くお持ちでした。

 さて、情報共有はやらないよりもやったほうが100倍はいいに決まっているのですが、かといって何をやってもいいというわけではなさそうです。たとえば会議資料の扱い方ひとつでも、資料をプリントして全員に配布するやり方は、カバンに入れて持ち帰る途中で電車に忘れてくる人が出てくることを考えると、情報漏洩のリスクを抱えてしまうことになります。

 会議室にパソコンとプロジェクタを設置して、セキュアなファイルサーバーから資料をアクセスしてスクリーンに投影するようにすれば、若干の投資は必要ですが、情報の共有が図れるとともにセキュリティも確保されます。この場合、資料が手元にないと不安だ、という考え方を改めなければならないのはもちろんですが。

 このような仕事のやり方や進め方そのものを、僕は「仕事の作法」と呼んでいます(脱線:作法と聞くと、プログラマの皆さんならカーニハンやパイクらが書いた「プログラミング作法」を思い出されるかも知れませんね)。資料を紙で配るのも作法のひとつなら、セキュアなサーバーを立てるのも作法のひとつです。作法次第で、仕事の効率も、得られるセキュリティも、大きく違ってきます。いい作法を社員間で共有できれば、強くてスマートな会社が生まれるでしょう。

 最近多くの企業が「内部統制」の確立を進めていますが、いきなり大上段に構えるのではなくて、こういった作法の一つひとつの積み重ねによって自然と企業内に統制の風土が生まれると考えてみてはいかがでしょうか。「神は細部に宿る」なんてことをよく言いますが、日々の仕事の進め方の中にこそ多くのヒントが隠されているのです。

 では、ITの役割は何か。それは作法を支援することです。ITシステムが使いやすく、しかも、ある決まった仕事のスタイルを従業員に巧みに強制するような仕組みがあれば、きっと仕事の効率も上がり、情報も共有され、セキュリティも確保されるでしょう。

 となると重要になってくるのが情報システム部門の役割です。いつも基幹システムのメンテナンスでいつも怒られているばかりで、それが習い性になってしまっている担当者も少なくないようですが、仕組みを作って仕事の作法を仕切る大事なポジションにいることも確かです。技術屋の僕としては、作法を作り出して仕向けるという面でも、情報システム部門に求められる本来の仕事への回帰が少しでも進んで欲しいと思っています。

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前川@ドリーム・アーツ

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