クラウドとどのように付き合えばいいのだろうか。今回は、これについて考えてみよう。
クラウドという言葉は、買う側、売る側の両者にとって、魔法の言葉となっている。魔法であるから、それは夢であり、希望である。難しいこの現実を解決してくれる呪文であり、こうなればいいなぁという理想の姿でもある。しかし、その実態は、はっきりとは分らない。
経済指標に明るい兆しが見え始めてはいるが、ITの現場は、まだまだ厳しい。むしろ、コスト削減の要求は、ますます厳しさを増している。しかし、どこのIT部門も既にやれることはやっている。いまさら、何をすればいいのか。
もはや「改善」では、埒(らち)が明かない。今までの当たり前を否定し、根本的な構造改革に取り組まない限り、これ以上のコスト削減は、無理。それが、現実だろう。
こんな時代だからこそ、クラウドは、魔法の言葉に聞こえる。その実態が、良く見えないが故に、魔法なのであって、望みをかなえてくれるのではないかと、夢だけが膨らむ。それが、クラウドへの想いではないだろうか。
売る側にしても、モノやヒトを買ってもらうことが厳しいことは、十分に承知している。だから、クラウドという呪文を唱え、買う側に魔法をかけようとしている。クラウドという新しい言葉を使えば、きらきらと輝いて見える。たとえ今までと同じものでも・・・。
彼らの魔法にかかってはいけない。表を飾る言葉に惑わされることなく、その実態を冷静に評価しなければ、夢に投資することとなり、結局は、これまでと何も変わらない結果となるだろう。
いままでのASPと何が違うのか?今使っている外部のデータセンターを利用したサービスと何が違うのか?
メリットは、いろいろと教えてくれる。では、どのような課題があり、何がリスクなのか?
「プライベート・クラウド」という言葉がある。インターネットのむこう側にある「パブリック・クラウド」ではなく、ファイヤーウォールのこちら側にクラウドを構築し、社内で利用する仕組み。それはいったい、今の社内システムを仮想化して使うこととどう違うのだろうか?
もし、こういう質問にソリューション・ベンダーの営業が、10分以内に納得できる説明してくれるのなら、じっくりと話しを聞く価値があるだろう。「ああ、それは仮想化のことですよ。」というようでれば、彼は何も分ってはいない。
ただ、魔法といえでも必ず一部の真実がある。可能性がある。だからヒトはそれを信じ、期待する。
かつて月旅行や宇宙ステーションは、魔法の世界の出来事でしかなかった。鉄腕アトムも夢の話である。しかし、その一部は、既に現実となり、私たちは、その恩恵を受けている。また、将来に向けた具体的なロードマップも示されている。だから、魔法だといっても、まったく意味のないことでもない。本質を正しく理解し、課題を見据えることができれば、大きな変革に役立てることができる。
IT部門にとって、クラウドがもたらす最大の変革とは何か。それは、IT部門のユーザー化であろうと思う。
システムを所有し、それを運用する役割は、縮小する。アプリケーションの導入や開発も少なくなるだろう。
IT部門は、クラウドから提供される計算能力、ストレージ容量、アプリケーション機能を使用し、その使用量に応じて代金を支払えばいい。
かつて、製造業は、自分の工場で必要な電力を、工場内の発電設備でまかなっていた。そうでもしなければ、安定した電力を確保できなかったからだ。しかし、現在そんなところは、ほとんどない。電力会社から安定して電力の供給を受けることができるからだ。今では、安全を担保するためのAVRや最低限の自家発電設備を持っているに過ぎない。
下の図をご覧いただきたい。

クラウドを利用すれば、こんなにも簡単にシステム資源を利用できる。見方を変えれば、ハードウェアやパッケージ・ソフトウェアの技術的な検討やそれに続く、導入や設定、パックアップ・リカバリー、システム監視といった運用管理に関わる技術力や力仕事からIT部門は、開放されることになる。
とすると、自分達のレゾンデートル(存在することの意義)は、どうなるのか。
IT部門のユーザー化は、いままで以上に戦略や業務への見識が求められることを意味する。企業の成長や体質を強化するために、ITをどのように活用するか。ユーザー部門のニーズに応えるだけではなく、経営や業務に対して、ITの活用を提言できなければ、存在意義はない。
実現する手段が、ITであるとすれば、それを所有するか、使用するかは、本質的な問題ではない。所有することが前提にあるから、そういう人材の育成や確保を考える。使用するならば、また違う人材育成が必要になるだろう。
経営者やユーザー部門にも、クラウドという言葉は、届いている。しかも、何度も何度も、その呪文を聞かされているので、その実態のいかんに関わらず、何かできるはずだ、もっと大きな変革がもたらされるはずだと、期待ばかりが膨らんでいる。
それに応えなければならないIT部門は、大いに困惑しているだろう。「いやいや、まだまだ実態はありません。慎重に考えなければ、結局は高いものにつきますよ。」という説明で、果たして納得してくれるだろうか。もし、私が経営者なら、「こいつは、できない奴だ!」と評価するだろう。
ソリューション・ベンダーの甘言に惑わされてはいけない。現実を冷静に見極めなければいけない。
それは、クラウドを否定することではない。クラウドのユーザーとして、本質と課題を整理すること。システムの所有者としての役割を捨て、使用者の視点から、ITの戦略的活用と業務改革のイニシアテイブをとること。
クラウドとは、IT部門にとって、構造を改革する以上に、意識を改革する武器となる。この認識を持つことが、クラウドとうまくつき合う前提となるだろう。
--------------
よろしければ、こちらもご覧ください。
「ソリューション営業プロフェッショナル」
http://pro-eigyo.blogspot.com/
ITソリューション営業のためのお役立ちブログ
※このエントリはZDNetブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および ZDNet編集部の見解・意向を示すものではありません。
- 前のエントリー: 使えるIT営業を見分ける3つのポイント
- 次のエントリー: 「ソリューション」という言葉の本当の意味
「ベテランIT営業が教える「正しいITの使い方、営業の使い方」」 のバックナンバー
-
「仕組みとしての見える化」と「環境としての見える化」
プレーヤーが、マネージャーの役を任されたとき、まず最初に戸惑うことは、「見るべき範囲」の違いであろう。 プレーヤーであれば、自分の担当するお客様であり、自分のやっていることのみを見ていれば... -
「信頼されない営業」になるための5つの方法
-
大手元請企業は、中小の下請企業を使わなくなる 【タイトルを変更しました】
-
ソリューションと昇進が、会社を弱体化させ、人を潰している
-
「プレーイング・マネージャー」という言い訳
- ベテランIT営業が教える「正しいITの使い方、営業の使い方」 一覧へ »
企画特集

-
事例 VMwareでデータセンターをクラウド化
富士通の開発環境を効率化したクラウドのノウハウ -
身近な業務をCRMが変革!
実は、埋もれた情報が鍵だった -
新しい視点のレンタルサーバが誕生!
スタートアップ企業、開発者に最適なそのポイントとは? -
アプリケーション仮想化 3つの課題
最新のCosminexus V8.5の知られざる実力 -
経営統合後の事業損益構造の見える化を実現
SAS Performance Managementの導入事例紹介!! -
仮想環境のバックアップは難しいのか
効率的なバックアップへの2ステップを解説 -
仮想化をダメにするストレージの実態
求められるストレージ正常化のキーワードとは? -
利用者の理想を追求した最新レンタルサーバ
サイト制作事業者がその評価結果を徹底レポート! -
御社はまだフリーの転送サービスですか?
大容量ファイルの受け渡しに「ルール」と「安心」を -
DBのパフォーマンスに困ってませんか?
既存のデータベース環境に追加するだけで性能が2倍に -
レガシーアプリケーションの稼働どうしてる?
互換性の問題、あなたはどう考える?意見募集中! -
アンケートから見るセキュリティ対策の実態
8つの機能が中小企業の情報資産を守る -
通販サイトのアクセス集中からの危機を救う
4つのケーススタディからWebシステムを徹底解説 -
ビジネスを支えるWebシステム最前線
システムトラブルの6割が、ソフトウェアに原因あり
-
13. ソースチェック
この4分間のビデオでは、Intel Parallel Studioの一部であるIntel C++コ... -
14. OpenMP 3.0
この3分間のビデオでは、Intel Parallel Composerで利用可能なOpeMP 3.0...
新着企業動向
-
「Digi Embedded Technology Forum 2010 Tokyo」を開催
ディジ インターナショナル -
「見える化」による社内情報共有・活用のポイント 〜 大手企業の成功事例公開 〜
リアルコム -
【EMCジャパン Tech Communityサイト】ITの全体最適化はインフラから
EMCジャパン -
メールセキュリティSaaS『Mail Luck!セキュアタイプゲートウェイ』
NTTPCコミュニケーションズ(ネットワーク事業部) - 企業動向一覧へ»
斎藤昌義(さいとう まさのり)
