「若手や中堅の優秀なエンジニアが、この一年で3人辞めてしまいました。来月もまた一人やめる予定です。いったい、どこに問題があるのでしょうか。」
あるSIerの経営者から聞いた話です。私はこう答えました。 「楽しくないからじゃないですか?」 先週のブログでも書きましたが、コンピューターが、まだまだこれからという時代は、コンピューターを導入することが、業務のイノベーションをもたらしていました。SIerがシステム・ハウスと言われていた時代です。まだまだこれからの時代ですから、新規の導入や開発が仕事を支えていました。また、運用・保守も時代を先取りした仕事であった様に思います。当然、新しい技術を走りながら取り込んでゆくことが当たり前の時代でした。 その後、情報システムが企業内で一巡し、業務で広く使われるようになるころには、ユーザー企業は膨大なシステム資産を抱えることになりました。そうなると、新規開発は少なくなり、業務の変更や拡大に合わせて既存システムを手直ししながら使うことが当たり前となってゆきました。IT部門予算の7割から8割が既存システムの運用や保守に関わる費用となってしまったのには、このような背景があります。 当然、運用・保守の仕事量が増えてゆきます。SIerも潤沢、継続的にある既存システムの保守、運用の仕事をするほうが、新しい請負開発でリスクを冒すより、安定した収益を得られることになります。そんな時代背景の中で、この会社も大手の下請けとして、リスクの少ない派遣や準委任の仕事を増やしてゆきました。 景気が良かったときは、仕事はありましたから業績を伸ばすこともできました。しかし、国内需要の減退、技術のコモディティ化とオフショア利用の拡大により、[人]X[単金]では利益を出せず、厳しい状況に追い込まれています。 新しい技術にもっと挑戦すべきだと申し上げても、今の人間を食べさせなければならないから簡単には無理だといいます。 若いエンジニアが新しいことをやりたいといっても、品質が保証できないからだめだとチャンスを与えません。そして、そういう志のある若いエンジニアも若い=安い労働力として、既存システムの保守対応の仕事をさせているのです。 新しいこと、イノベーションに関わることは、楽しいことです。それができる会社でなければ、良い人材も育たないし、魅力ある商品やサービスは生まれません。SIerにとっては、良い人材こそ、魅力的な商品です。高い技術力だけではなく高いモチベーションも併せ持った人材こそ、SIerにとっての最良の商品ではないかと思っています。 「優れた人材の育成=優れた商品の開発」への投資を渋るSIerとは、新製品開発のための研究開発に投資をしない製造業と同じ話です。いずれお客様から見放されてしまいます。 この会社の若い皆さんと話してみると、トレンドや新しい方法論については、ほんとうによく知っています。やりたいといっているのだから、やらしてあげればいいのです。しかし、それをやらしてくれない上司への不満が、特に優秀な人たちのモチベーションを下げています。 年配の管理者や経営者が、あれはだめ、これはだめ、、ああしろ、こうしろと言う姿を見ると、再就職が難しいのでなんとか会社にしがみつきたく自分の存在感を示したいが故に、そんなことを言っているのではないかとさえ思えてしまいます。その一方で、チャンスのある優秀な若者たちは、「やってられないよ」と去ってゆく。会社が楽しくないのです。こんな現実に、今まさに直面しているのではないかと感じています。 改めて言うまでもないことですが、管理者や経営者は、自分の組織を、あるいは、自分の会社をどうしたいのか、そしてどんな価値をお客様や世の中に提供したいのかというビジョンをしっかり示してほしいと思います。そして、方法論は若い人に任せてみればいいのではないでしょうか。 若いからと言って、かれらは決して自分のことしか考えない人たちではありません。もっと会社をよくしたいと熱く語ってくれます。そういう若い人たちを信頼し任せてみるべきなのです。 「優秀な若い人が辞める」のは会社が楽しくないからです。裏返して考えるなら、優秀な若い人たちは、お客様があるいは世の中が、今何を求めているかそしてこれからどうなるかを知っている人たちです。そういうことに取り組めないことは、自分の成長にとって価値がないし、この会社も長くはもたないと本能的に感じているのでしょう。だから楽しくないのです。 若者たちが会社に感じる楽しさ=会社の成長性の尺度 と考えてみてはどうでしょう。 忙しくてもチャレンジできる会社は楽しい会社です。一方で「優秀な若い人が辞める」会社は、楽しくないのです。そんな会社は、いずれ時代の流れに取り残され、衰退の道を歩みはじめるのではないでしょうか。 ■ ITソリューション塾[第8期] ■ 自社製品の性能や機能については話せとも、世の中の常識と自社製品との関係は話せません。 そんな営業をお客様は、信頼するでしょうか? では、どうすればいいのでしょうか。よろしければ、こちらをご覧ください。 場所:東京・市ヶ谷 期間:10月5日から12月7日 毎週水曜日 18:30~20:00 全10回 費用:9万4千5百円/一括 内容はこちらをご覧ください。
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斎藤昌義
みなさん コメントありがとうございます。様々なご意見に、改めて気づかされること多々です。naotoさんのご指摘の通り、テクノロジーだけが成長の基盤ではないということは納得です。何がお客様にとっての価値なのかを追求すれば、それは必ずしもテクノロジーだけの問題ではありませんよね。それも含めて、様々なチャレンジができる環境こそ、また、それが成功体験や自分たちの成長を実感できるものであれば、「楽しい」と感じることができるように思います。
2011年09月26日
naoto
優秀な若い人が辞める理由は「楽しく無いから」は全く以て同意です。
IT業界もそろそろ「新しい技術」に囚われるのを止めるべきかなと思っています。
「うちの会社はクラウドビジネスをしてない」「買収などで会社をドラスティックに事業拡大すべきでは」など若い人達は技術以外にビジネス面でも目先が広がっていると思います。
一方で、保守運用ビジネスへの技術者の派遣で会社は「食える」けど、若い人は技術的な成長が見えないから辞めガチだったりして。
もう皆さんが気が付いていると思うのですが、新しげなビジネスや積極的なビジネス手法でもITとしての根幹部分はもう殆ど違わなくなってきたと感じています。
商社のビジネスはもう新しくないけど、若い人の多くが期待して入社しているし、会社人を続けている。「総合商社」も「専門商社」もしかり。もう既に商社としての根幹がある。市場の大小、成長性のよしあしはあるけど、自動車メーカーもそう、書籍販売もそう、印刷業も同じ。
新しいとか、革命的とかそんな部分じゃなくて、本質的なやりがいというものをITよりも歴史のある業界の先輩社員や経営者は分かっているし、実行しているんですよね。
もし、国内IT業界の経営者の多くが「会社の成長性の尺度」を見いだせずにいたとしたら、小さな市場になってしまっても致し方ないかなと思っています。
2011年09月26日
FAE
「楽しくないからじゃないですか?」
そう。まさに楽しくないんです。ただし、40歳台以上の人たちが持っている楽しいと云う基準と。これより若い人たちの持っている基準は明確に違います。この違いを良い悪いで議論する事は「赤と青どちらがきれいな色か?」と云う議論に近いものがあり、結論を出せるようで出せる物ではありません。
『「優れた人材の育成=優れた商品の開発」への投資を渋るSIer』
マイクロソフトが勝ち組かどうかの議論をしている時代であればこの図式も成り立ったでしょうが、もう現在では今更何の話をしているの?という疑問さえ起きない時代になっています。MacやLinuxがあるじゃぁないか!と云う人に限って”昔は良かった”という時代の人たちで、業界一般としてはWindowsの存在は空気、水の存在に等しいという事が現実ではないでしょうか?幾らIBMがLinuxにコミットしていると云っても所詮はWindowsではない’ニッチな’世界での小さなパイを如何に大きく見せてみんなを呼び込むかという事に腐心しているに過ぎませんよね?それが証拠にIBMでさえWindowsをベースにしたシステムを抜きにしてはSI活動は不可能なのですから。
facebookへお誘いを頂いておりますが、私の考えとしては、匿名、もしくは”アバター”を許容するインターネットの長所を削ることになると考えますので、お答え出来ません。
2011年09月23日
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