「SIerにとってのイノベーションって、なんだろう。」
酒を酌み交わしながら友人がそんな疑問を投げかけてきました。
「ジョブスのような新しい技術やライフスタイルのトレンドを生み出すことがイノベーションだというのであれば、日本の多くのSIerは難しいだろうなぁ。しかし、単金の安さや仕事の品質ということだけでは、もはや利益を生み出すことが難しくなりつつある。SIerができるイノベーションって、なんだろう。」
そんな会話をしながら、ふと頭をよぎったのは、そもそもイノベーションとはどういう意味なのだろうかという疑問です。考えてみれば、私自身この言葉をしっかり追求したことがありませんでした。ありきたりの解釈として、革新や改革という程度にしか理解していないとは、情けない話しです。そこで自分なりに、調べてみることにしました。
innovationの語源を調べると15世紀のラテン語innovatioに行き着くようです。inは「中へ」、novaは「新しい」、これらを組み合わせて、自らの内側に新しいものを取り込むという意味になるのだそうです。
ただ、これが今のように、「物事の新機軸を打ち出す」、「新しい切り口で新しい活用法を創造する」というような意味が与えられたのは、20世紀前半に活躍した経済学者シュンペーターに始まります。彼は1912年に著した『経済発展の理論』の中で、イノベーションを「新結合(neue Kombination)」と呼んでいます。また、新結合を生み出す実行者を「アントレプレナー(entrepreneur)」と呼んでいます。
また、シュンペーターはイノベーションを以下の5類型に分類しています。
少々おこがましいのですが、私としてはこれに加えて、新しい体験の創造 つまり、「感性のイノベーション」も付け加えたいところです。
例えば、iPadやiPhoneのようにユーザー・インターフェイス(UI)からユーザー・エクスペリエンス(UX)が新たな経済的価値を生み出す時代になりました。それは、機能だけではなく、デザインが購買行動に大きな影響を与え、新しいライフスタイルを生み出す現象です。そう考えると感性もまたイノベーションのひとつの類型に入れてもいいように思います。
さて、我が国では、イノベーションのことを、「技術革新」と言い換えられることが多いようです。これは1958年の『経済白書』において、イノベーションを「技術革新」と訳したことに由来しているといわれています。高度成長時代の当時を考えれば、経済発展は技術によってもたらされるという考えが普通でした。しかし、本来の意味は、もっと広範な経済活動全般に適用される言葉として使われています。
またシュンペーターは、「イノベーションは創造的破壊をもたらす」とも語っています。その典型として、イギリスの産業革命期における「鉄道」によるイノベーションを取り上げています。彼はこんなたとえでそれを紹介しています。
「馬車を何台つなげても汽車にはならない」。つまり、「鉄道」がもたらしたイノベーションとは、馬車の馬力をより強力な蒸気機関に置き換え多数の貨車や客車をつなぐという「新結合」がもたらしたものだという解釈です。
これによって、古い駅馬車による交通網は破壊され新しい鉄道網に置き換わってゆきました。それが結果として、産業革命を支えるものになったというのです。ここで使われた技術要素は、ひとつひとつを見てゆけば必ずしも新しいものばかりではありませんでした。例えば、貨車や客車は馬車から受け継がれたものです。また、蒸気機関も鉄道が生まれる40年前には発明されていました。つまり、イノベーションとは新しい要素ではなく、これまでになかった新しい「新結合」がもたらしたものだというのです。
これを、今の私達のビジネスに置き換えて考えてみると、「オンプレミス・システムを何台もつなげ、膨大なサブシステムを組み合わせても、情報システムの問題は解決しない」ということになります。
IT予算の圧縮とTCOの増大に苦悩する情報システム部門にとって、もはや既存の組み合わせでは対処しきれない状況になっています。だからこそ、今までのオンプレミスとスクラッチ・アンド・ビルドの組み合わせではなく、その一部をクラウドに置き換え、あるいはその他の新しいテクノロジーと既存の仕組みとを組み合わせた「新結合」を実現すること。それが、情報システムにおけるイノベーションということになるのでしょう。
このイノベーションは、これまでの情報システム部門の役割を大きく変えることになるでしょう。システム技術や運用管理はクラウドに置きかわり、より上流のシステム企画や業務ロジックへの期待が高まります。そこに役割を果たせない人は、淘汰されてゆくことになります。そして、従来の役割に固執するSIerもまた、同じ運命をたどることになるでしょう。ここにも創造的破壊が待ち受けています。
これに対して、お客様の課題を業務や経営の視点で見直し、様々な新しいITテクノロジーを組あせてお客様にとって最適な解決策を作り上げることがSIerにとっての価値と言うことになります。
これはまさに「ソリューション」そのものです。SIビジネスにおけるソリューションとは、シュンペーターのいう「新結合」なのです。
換言すれば、ソリューションとはお客様にとってイノベーションそのものだと言えるでしょう。
当然、そこにはこれまでの常識を破壊し、新しい仕組みを受け入れさせる「創造的破壊」が伴います。ただ、それがなければイノベーションがもたらされないのであれば、受け入れざるを得ないことなのです。
また、シュンペーターは、新結合を生み出す実行者をアントレプレナーと呼んでいるわけですが、これは今で言う「起業家」と言う範疇に留まらず、より広い関与者を意味しているようです。とすると、SIerもまた、ソリューション、すなわちお客様にイノベーションをもたらすアントレプレナーと言うことになるのかもしれません。
少々強引な解釈ではないかというご批判は、甘んじて受けさせていただきます。ただ、SIerにとって、このような解釈は、改めて自分たちの役割を考え直すきっかけになるのではないでしょうか。
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FAE
>ジョブスのような新しい技術やライフスタイルのトレンドを生み出すことがイノベーションだというのであれば、
彼の業績は、ライフスタイルのトレンドを生み出したのではなく、みんなが本当に楽しい事って何?を突き詰めただけ。生み出すつもりなんて無かった。それを周りはあ〜だこ〜だ判った様な事ばかり云ってる。そんな本質に気づきもせず、一部のマスコミの都合の良い情報に振り回されていては本当のインベーションなんて判る訳が無い。
2012年01月29日
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