成功者

secondlife 2007-09-13 08:00:00

気づくとランチタイムは終わり、女性客の集団がチラホラと引けていた。

しかし留まることなく別の客が入ってくる。メニュー表も新しいものに変わっていた。

これからこの店はフードメニューを最小に絞り、カフェの時間帯に変わるのだという。

「ところで、このイタリアンがなぜこの場所でこんなにも人気なのか。匠君はどう思う?」

食事を終え立ち上がった俺に須藤さんは声を掛ける。

「デザートが美味しい」

俺は即答する。

「まさに、ではこの店のターゲットは?」

そう言われ、俺は始めて店内をぐるりと見回した。

白を基調とした清潔感溢れる店内に品よく置かれている緑の植物。さりげなくおかれた洋書の絵本にインテリア。高い天井一杯に取られたウィンドウ。そしてサンサンと陽の光が降り注ぐテラス。

全体を見回すと控えめだけどリッチな雰囲気が溢れ出ている。

そして俺は気づいた。

俺たちを抜かして数組の男性客を除き、客は全て女性だったのだ。

「分かるだろう?ここは女性客をターゲットに絞っている。こんなオフィスビルの真ん中にサラリーマン相手じゃなく。女性しかみていない。この店で男性は付属品なんだ」

余りの断言に僕は思わず反論をする。

「男性が付属なんて、オフィスビルが並ぶ中では全ての人に受け入れられるメニューの方が有効の様な気がします」

「では、カレーメニューのあるラーメン屋で君はラーメンを注文するかね?もしくはカレーを。腹がへっていれば一度は入るかも知れない。しかし毎日の様に来て、人に教える事はしないだろう。凄いんだ、ここの店はどんなメニューでも置いてある!……なんてね」

須藤さんの演技が余りにも迫真だったので、俺もさくらも思わず笑い出してしまった。

確かに、ラーメンを食べるならラーメン専門店の方が美味しい気がする。嬉しそうに話す須藤さんはまるで自慢げに続けた。

「女性の目は厳しい。期待以下なら散々言われるが、一度気にいってもらえるとリピーター客になる。そして口コミだ。ランチで価格を下げ、デザートの味を覚えてもらうと、カフェ帯の割高なデザートでも来てくれる。夜はまた本格イタリアンに戻り……デートや接待で使ってもらう。その為には常に居心地のよくセレブリティな雰囲気。何より重点のデサーとの研究と追求、それの全てがブランディングに繋がる」

「なるほど…この店はターゲッティングに成功した例なんですね!まさに僕の目指すのはこの店の戦略なんだ!」

声をあげる俺に須藤さんは嬉しそうに微笑み、俺の手から会計の表を取り上げた。

「ここは僕にご馳走させてください」

慌ててそう手を出すと、須藤さんは俺の手を優しく制した。

そしてにっこりと笑い、一言。

「いいんだよ、ここは僕の店だから」

(このブログの著者でもある大槻透世二さんがSecond Lifeでの「ものづくり」を紹介する「Second Life 新世界的ものづくりのススメ」。第25回は、『テクスチャアニメーション応用2』。こちらもご覧ください)

※このエントリはZDNetブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および ZDNet編集部の見解・意向を示すものではありません。

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