サービス時代の到来と人口減少の影響(4) ? 米国社会で日本を凌駕する韓国 より続く
前回に引き続き、韓国の国際化について、国際ビジネスコンサルタントで、ブレインストーム・ワールドワイド株式会社代表取締役の石崎 浩之氏(Hiroyuki Ishizaki)との対話をご紹介したい。
海外に積極的に進出し世界を席巻するサムスン
石崎:企業レベルでも、よく言われるのが、サムソン(Samsung)の飛躍。日本の大手家電メーカの純利益額上位10社を合計しても、サムソン電子一社の純利益の半分にも満たないし、それをばねにした将来の収益源作りである設備投資額でも格段の差がついています。こうした状況で、日本では2007年に外資系企業による株式交換での三角合併M&Aが解禁になるのですが、そうすると時価総額の低い企業の外資系企業によるM&Aが盛んになるといわれています。これが施行されれば、例えばソニー(SONY)のように外国人持ち株比率が50%を超える(注:2006年3月末で50.1%)企業は、潤沢な現金や高い株価を持つ外資系企業からTOBされる可能性が飛躍的に高まるわけです。私がサムソンの経営陣だったらどうするか。真っ先にソニーとの合併や買収を検討しますね。
徳田:私自身も、サムスンはすごいというのを実感したことがあります。シリコンバレーから2時間ほど南に離れたところに、ゴルフ場のペブルビーチで有名な、モンテレーという町があります。2004年に半導体のメモリーの学会がそこで開かれ、私もそれに参加しました。米国で開かれた会議でしたが、最大の参加チームが、サムスンでした。国際会議の場で、英語に慣れずしどろもどろな質疑応答をする日本人と、堂々と流暢な英語で発表する韓国人との対比が非常に印象的でした。論文の発表数と参加人数を見ると、その企業が今後、どれだけその市場で勢力を増すのか、一目でわかりますね。それにしても、ソニーがサムスンに買収されることは、日本人にとって非常に怖いと言うか、考えたくない話です。しかし、可能性としてはいつなのでしょう?
「ソニーがサムスンに飲み込まれる」のはいつ?
石崎:「ソニーが買収されるなんてまさかそんなことが」、「ありえるわけない!!」と否定するのは簡単です。でも、現実を例にとれば、IBMのパソコンを現在製造販売しているのは中国のレノボ社ですから。THINK PADには今でもIBMのマークが入っていますが、もはやブランドロゴに過ぎません。国内でさえ、10年前には想像もつかなかった、三井と住友の合併が起こっているわけです。別に今年、来年といわず、5年や10年のスパンで見たときに、日本の大手メーカがサムソンに吸収されるということは、十分に起こりえるでしょう。ソニーがサムソンの一ブランドになる日、来て欲しくはありませんが、国際化が急速に進展するビジネス界においては、経済的合理性が優先されますし、その意思決定権を有するソニーの株主は、すでに過半数が外国人なのです。
徳田:それに関連してですが、「2007年は「サービス」時代の幕開け」という話を新春の記事として書いたところ、それを読んだ、メーカで研究者をしている友人からも、サービス化に成功した例として、IBMを上げていました。逆に、足かせになったというか不要になったものとして、「プロダクト」が取り上げられ、結局PC部門を売却したのです。その売却先が、中国企業だったわけですよね。もちろん、「例えば」の話ですが、同じように、ソニーが今後も、ハードでの差別化に固執し、サービス化へのシフトに失敗するならば、韓国企業に買収されるというのは、ありえない話だとは決して言い切れないと思います。ソニーのウォークマンの牙城を崩した、シリコンバレーのアップル社のiPodもハードビジネスと思われがちです。確かにハードの成功が基盤にはなっています。しかし、当初から、音楽、映像の配信とのセットで、既にサービス化にシフトしています。その証拠に、社名から「コンピュータ」を外してしまいました。もちろん、時代とか環境の違いによるものはありますけれども、過去の成功であるハードの付加価値提供に固執したウォークマンとの最大の違いだと思います。
余談ですが、アップル本社のあるクパチーノ市の6割がアジア系住民と言われています。本社の近くにある小学校は、カリフォルニア州でトップを争う成績です。なんと8割がアジア系住民で、インド人、中国人、韓国人の移民の子供たちです。彼らのお父さんお母さんの中には、アップルを支えている優秀な社員がたくさんいるのです。「移民」と言う方法で、世界中から、特にアジアから、優秀な頭脳が集められているのですね。残念なことに日本人はほとんど対象外ですけれども。。。そういう人たちの子供だから、もともとずば抜けて頭がいいし、親たちと同じように、半端でないぐらい猛勉強しているのです。ああ、だからアップルは復活したのだと、納得しましたね。いずれにしても、ソニーの巻き返しを期待していますよ。
韓国への認識不足を改め、日本企業も見習うべきではないか
徳田:話を戻しまして、確かに韓国企業の強さを実感はします。しかし、国際的な経営とかそういう観点で、韓国企業に本当に底力があるのでしょうか?
石崎:日本人の中には、韓国に対する誤解、認識不足がいまだにあるような気がします。日本よりも先に、断固とした国際化に着手した分だけ、経営手法も技術も、何年も進んでいる面が多々あるということがあまり知られていません。今後は、単にアメリカの企業だけでなく、韓国企業の動向を注視していくことは必須でしょう。もっと明確に言えば、これ以上韓国に引き離されるようでは、5年後、10年後の国際社会、国際ビジネスにおける日本人、日本企業のプレゼンスは、大幅に低下してしまうということを、現在直面している現実として、それに対するアクションを即座に起こす必要があります。国内ではいざなぎ景気を超える景気回復という言葉で、危機感が薄弱になっているようですが、世界全体の視座からみれば、日本人、本当に、本当にやばい状況だと感じています。
徳田:身近に韓国人など優秀なアジア人がたくさんいて、彼らの実力を間近で感じている私としては、同感です。
石崎:だからこそ、一人の日本人として国内外でプレゼンスを発揮していけるよう、頑張っていきたいものです。というより、そうしなければ、本当に国際社会で埋没し、没落していくだけでしょうね。
徳田:どうも大変有意義なお話ありがとうございました。私も日本企業の海外展開を、米国側からお手伝いしたいと思います。
サービス化と人口減少の時代に対応して、海外進出・海外展開に踏み出すべき
いまだに、アジアの企業はパクリだと陰口を言う日本人もいるが、その議論は正しくないと思う。現に、先の国際学会でも、未来の先端技術を一番多く発表していたのがサムスンであったわけである。仮にそうだとしても、簡単に真似されるものしか提供できていないということを意味する。そういう企業は、ソリューションとしての「サービス」が劣っているどころか、彼らが自慢する「プロダクト」すらその程度だ、ということを自ら宣伝しているようなものである。深く反省すべきだと思う。反対に「サービス」化の時代では、自分が作るよりも、外国企業が提供するものの方が安く品質が安定しているのならば、本来は、喜んでどんどん採用すべき話である。なぜなら、競争力のある品質の高いサービスを提供できる企業は、クライアントにソリューション力を認めてもらって、それなりの価格を維持しながらも、コスト削減を実現できるからである。彼らは決して競争相手ではなく、友好的なパートナーなのである。
また、国内市場成長の限界を打ち破るべく、国際市場に打って出た韓国企業や、ローカル社員の活用で言葉の壁を乗り越えたインド企業など、積極的に海外に出ることで、成長を果たし、将来的な基盤を固めつつある事例はたくさんある。これら外国企業の取組み状況を研究することで、サービス時代の到来と、人口減少の時代を迎えるにあたって( 「シリコンバレーからの年賀状?IT業界の抱える構造的問題」 ご参照)、今後の対応策について、さまざまなヒントが得られるのではないだろうかと強く感じた。
本シリーズについてのご意見・ご感想は、下記までよろしくお願いします。皆様のご意見は、また折に触れてご紹介したいと思う。
(徳田浩司 koji.tokuda at www.fusion-reactor.biz)
※このエントリはZDNetブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および ZDNet編集部の見解・意向を示すものではありません。
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