地球温暖化を防ぐ仮想化技術

徳田浩司(Koji Tokuda) 2007-02-05 03:20:54

地球温暖化が問題となっている。2月頭に、国連と科学者で作る「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)が、地球温暖化に関する最新の報告書をまとめた。それによると、このままいけば、今世紀末には、地球の温度が6.4度も上昇するそうだ。そのため、北極と南極の氷が一部解けて、海水面は59センチ上昇し、ハリケーンカトリーナのような大きな台風が今後も増えたりとか、いろいろな問題が生じるようだ。BRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)と呼ばれる人口の多い国々で急速に工業化が進み、化石燃料の消費量が急増している。CO2を大量に排出し、ますます温室効果を高めてしまう。なるべく化石燃料を使わずにすることが必要で、効率的なエネルギー利用に対し、さまざまな努力と工夫をすることが求められる。

ITの領域でも、エネルギー対策が、ビジネス上の大きな課題として、取り上げられるようになってきている。

一つは、パソコンに使われるCPU。シングルコアからデュアルコアへの移行は、集積化の問題以上に、熱の問題がクローズアップされたためと聞いている。

データセンターの発熱の問題

更には、データセンターも同じ悩みを抱えている。熱の処理が大きく問題になってきているのだ。その対応策は、かなり真剣に議論され始めており、シリコンバレーでもいろいろなところで、話題となっている。

「仮想化技術」(OSとか関係なしに、1台のサーバで複数の仮想マシンを実行する技術)を持つVMWareというツールのユーザグループの会合に参加したときの話をご紹介したい。

仮想化というものがどういうものなのか知りたくて参加したのであるが、その技術に対する期待はどれほどか、そのニーズがどこから来ているのか、はじめてその真相を知った。

電力会社によるデータセンターの仮想化技術導入へのインセンティブプラン

いくつかプレゼンがあり、そのうち一社は、PG&E(Pacific Gas & Electric Company、カリフォルニアの電力会社)であった。PG&Eが仮想化技術と何の関係があるのだろうか?おそらく、PG&Eが社内システム向けに仮想化技術を使った、事例紹介をするのかな、と最初は思ったのである。しかし、実際にはそうではなかった。仮想化技術を使うのは、データセンターが多く、出席しているのはさまざまな企業のデータセンターのエンジニアたちであり、彼ら向けに、一つのインセンティブプログラムを宣伝したのだ。データセンターにおいて仮想化技術を使ってサーバの消費電力を少なくすることができたら、削減できた電気料金の一部について、特別リベートを支払うというというのだ。

その名も、Virtualization/Server Consolidation Projects Incentive

http://www.pge.com/biz/rebates/hightech/htee_incentives.htmlである。

なぜ、仮想化技術と電力会社が関連するのか?話を聞いているうちに、大変大きな問題に直面しているということがわかった。データセンターは、たくさんのコンピュータが格納されており、通常のオフィスの何十倍、何百倍もの電気を使う。そのため、発熱量は膨大で、コンピュータの水冷、ルームの空調など、大量の電気と水を使う。データセンターは、ストップが許されない。そのため、サーバは何重にも冗長性を持たされ、大量の空き容量を持つことになる。ここに、仮想化技術を使って効率的な設備の運用ができれば、サーバ数を大幅に減らせることができる。そうすると、設備投資額の減少につながるばかりか、大量の熱を発するCPU数を減らすことができるために、CPUに供給する電力の削減が可能となり、更には、空調や水冷用の電気代も減らすことができる。エネルギーの削減効果は非常に大きいのだ。このインセンティブプランはバックがいて、政府の補助金がスポンサーになっているということであった。

シリコンバレーには、IT企業が多く、たくさんのデータセンターがある。他のプレゼンターや、出席企業からも、データセンターの熱処理が非常に大きな問題になっているという言葉が聞かれた。それを解決する手段として、仮想化技術が期待されているのだ。

電力の安定供給を求めてオレゴンに新データセンター建築中のGoogle

データセンターと言えば、Googleを思い出した。MountainViewにある、あるクライアント企業に通っていたときのこと。歩道に鉄のふたがあり、おなじみの「Google」の小さなロゴの入った文字盤が張られているのが目に入った。うん、何だろう、と思った。それほど遠くない場所にGoogleの本社があるので、どうやらデータセンター(の一部?)が近くにあるようだ。しばらくすると、その文字盤はなくなっていたので、おそらく、本社と結ぶ地下ケーブルか電力線が埋まっていて、下請工事会社が、場所がわかるように、目印をつけていたものだと思う。急増するトラフィックに本社スペースだけでは不足し、近隣のビルまで拡張を繰り返しているのだろう。

Googleでは、何十万台という大量のサーバが動いているそうである。コストを削減するために、ハイスペックなもので構成されているわけではないという話だ(いま明かされる、グーグル・データセンターの秘密ご参照)

サーバがダウンすることを嫌い、ハイスペックなサーバを取り揃えると、コストは膨大となる。それでも、何十万台とあれば、必ずダウンするものが出てくる。それならば、最初からある一定数はダウンすることを前提に全体のシステムを構築できれば、安いサーバを使ってシステム構築ができる。それには、高度な分散化技術などが必要となり、社内の技術者が独自に開発した、仮想化技術や、オートノミックコンピューティングの技術などで対応しているようである。

現在、新しいデータセンターを建設中であり、場所はコロンビア川に近いオレゴン州ダレスだ(フォトレポート:グーグル、巨大データセンターを建築中ご参照)。世界中のサーバのうち、ここにどれだけ集められるのかわからないが、想像を絶するような巨大な規模のもののようだ。ここを選んだ理由の一つとしては、光回線と、安い電力供給、冷却用の水が得られることが挙げられている。さすがのGoogleでも、シリコンバレーで拡張するには、新しい発電所の建設が必要だと噂されたぐらいで、その技術を持っても、もはや限界に近づいているのだ。以前に、データセンターで火事が起き、消防車が何台も駆けつけたという話があり、やはり、大量の「熱」の処理が大きな悩みとなっているようだ。

ちなみに、データセンターの冷却については、私自身も非常に驚いた経験がある。銀行員時代、銀行のデータセンターを見学したことがあるのだが、運用監視員はみんなヘッドフォンをつけて会話をしていたのだ。冷却水とファンが回っていて、「ゴー」と言う騒音がものすごく、大声を出さないと声が全然聞き取れないほどだった。それだけ、大量の電力を消費する。ましてや、Googleは、YouTubeを買収し、今後は、画像や動画データを積極的に取り込めば、爆発的にデータ量は増えるわけで、世界最大規模のデータセンターになるのは間違いない。そこに必要なエネルギーは相当なものである。電力節約に貢献できる技術開発に期待したい。

仮想化技術のユーザグループには、データセンターのオペレーターや関連のエンジニアがたくさん参加していた。このプログラムの宣伝だが、いろいろと活発な質疑応答がなされ、参加者は大いに興味を持ったようである。仮想化技術は、氷何トン分だろうか、地球温暖化防止に貢献できるのだろう。

(徳田浩司 koji.tokuda at www.fusion-reactor.biz

追 記

9月1日追加情報

9月1日、旧中央青山の流れを組む、あらた監査法人と、みすず監査法人は業務を開始した。これは、旧中央青山監査法人の業務停止が8月31日で終了したことを受ける。

提携先である米国プライスウォーターハウスクーパースが「あらた監査法人」を設立し、900人強でスタート。一方旧中央青山監査法人は、「みすず」に名称変更し、た業務をを再開した。

みすずは、2500人。約3500人強いた旧中央青山監査法人のうち、約1000人が減少したそうである。一方、「あらた」は約900人でスタート。契約上場企業数はみすずがが3割減の580社、あらたが約400社だそうである。

旧中央青山の受け皿ができてひとまず安心である。ところでJ-SOX法であるが、対応の遅れは否めず、幸か不幸かガイドラインの発表も遅れており、中央青山の業務停止の影響は表面化はしていないが、どんどん対応が後ろ倒しになり、あとでそのツケが回ってくる可能性がある。

(徳田浩司 koji.tokuda at www.fusion-reactor.biz

Mr.Sam Nakane, formerly the CEO of SAP Japan review my entry and sent an email

Plese see it as following.

"Middle-up & down? No, Top-down is better! Email From Mr. Sam Nakane"

http://blog.japan.zdnet.com/tokuda/a/2007/01/middleup_down_n.html

And you may have some kind of risk regarding your business with Japanese companies because of J-SOX.

Please see my new entry as below,

"Business Checklist Working With a Japanese Company - May be requested for J-SOX compliance, Suddenly"

http://blog.japan.zdnet.com/tokuda/a/2007/01/a_business_chec.html

話が英語教育に脱線したついでに、関連して興味深い記事を発見したのでご紹介したい。

英語教育、韓国は教科書暗記…フィンランドでは英会話 (東亜日報2006年9月14日)

フィンランド語は、世界の語族の中で、韓国語、日本語、モンゴル語などとともに「ウラルアルタイ語族」に分類され、「インド・ヨーロッパ語族」である英語と語順、文法などで多くの違いがある。

フィンランド教育研究所のポイアラ教育顧問は、「フィンランド語は、前置詞、冠詞などがなく、英語と非常に異なる言語だ。英語を学ぶことは本当に難しいことだが、フィンランド人はみな、英語の大切さを十分知っており、学校で英語をよく教えるので英語が上手だ」と堂々と説明した。

ヘルシンキでは、タクシーの運転手も、英語で日常的な会話ができる。小学生から中年の紳士まで、道で会ったフィンランド人に英語で道を尋ねた時、通じない場合はほとんどなかった。みな学校で学んだ英語の実力だ。

フィンランドでは小学校3年生(8歳)から英語教育がスタートする。母国語の骨格が完成しており他言語に影響されにくくなった年齢で、更に、外国語を習得するにはぎりぎりセーフという絶妙なタイミングだ。ちなみに韓国は小学校5年生(10歳)ということで、ちょっと遅い。それに比べて日本は現在中学校からで12歳。手遅れである。

そういえば、私も思い当たる節ある。あるシリコンバレーのIT企業のエンジニアがたくみな英語の使い手ですっかり米国のネイティブスピーカーだと思い込んでいた。しかし、出身を聞いて見ると、実はフィンランド人だった。英語などインドヨーロッパ語族はSVO(主語+動詞+目的語)構造であるが、日本語、韓国語、フィンランド語は、SOV(主語+目的語+動詞)構造で、構文がまるっきり異なり、これらを母国語とする国民は、英語を習得するのがもっとも不得意だ。彼は相当な努力をしたのだろうが、フィンランドの教育制度のおかげでもあろう。

国際経済競争力のランキングで、フィンランドは2006年は2位で、2001年から2004年までトップだった。一方、日本は7位で後塵を拝している。フィンランド企業としては携帯電話のNokiaが有名だが、英語教育の成果として、IT立国として成功しているフィンランドを、日本社会も見習うべきだ。

仮想化技術とは少し異なるが、ちょうどZDNetに、サンマイクロから、データセンターの消費電力削減ソリューションの解説があったので、ご紹介したい。

データセンターと地球環境の課題を解決する新機軸

Sun Fire & CoolThreadsサーバ

http://paper.japan.zdnet.com/abstract.htm?wpn=1520&tag=zp.co..

このホワイトペーパーでは、具体的な事例で、コスト算定がなされていて、イメージがわきやすいと思う。これによると、サーバ自身の消費電力に比べて、冷却に必要な空調コストは、なんと4,5倍もかかるそうである。さまざまな技術やピークの平準化などの工夫を凝らしてサーバーをまとめ、CPU数を減らすことができると、大幅にコスト削減効果があるわけだ。やはり、熱の問題は大きくコストを左右し、真剣に議論されるわけである。

※このエントリはZDNetブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および ZDNet編集部の見解・意向を示すものではありません。

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