2008年 私の新年こんなことから幕を開けた

若井 直樹(Naoki Wakai) 2008-01-07 17:10:35

 2008年。新しい年が始まった。フィリピンの多くの企業では、クリスマスから1月1日までが新年の休みになる。各家庭では、12月に入るとクリスマスの準備におおいそがしだ。もちろんこの時期には、あらゆるものの価格は高騰する。ニュースでも連日のように、肉、野菜、果物の市場価格が報道される。

 また同時に、海外で仕事をしているフィリピン人の帰国ラッシュを迎える。12月20日前後がピークだ。国内の労働事情が良くないために、実に多くのフィリピン人が海外に職を求める。カリフォルニア、ドバイ、香港、シンガポール、はてはノルウェイに至るまで、実に多彩な国で仕事をしているのだ。フィリピン人の天性の才か、多国語を身につけるのが非常に早い。職種としては、家政婦から工場労働に至るまで、やはり多彩だ。

 クリスマスには、日本ではケーキを食べることが多いがカソリックの国フィリピンでは事情が異なる。いったいなぜ日本ではケーキを食べるようになったのだろうか?バレンタインデーにチョコレートを贈るのも日本くらいのもので、海外では男性が女性に花を贈るものだ。まさに日本のこの習慣は、お菓子メーカーが作り上げた日本独特の習慣といえるだろう。こちらでは、クリスマスには“ハム”を食べる家庭が多いようだ。また、新年には、“パンシット(ビーフン)”やスパゲティを食べる。日本では“そば”を食べるが、その意味は全く同じで“長寿”を祈るのだそうだ。また、クリスマスには日本でいうところの“お年玉”を子供たちに提供する習慣もある。近所の子供たちが“パスコ(メリークリスマス)”といって近所の家の玄関先で歌を歌ったりしてお年玉をねだるのだ。

 とにかく12月はとても出費がかさむ月である。大量の消費。そこで問題になるのが、ATMのトラブルである。こちらのATMはメトロバンクなど一部の銀行が提供するATM機を除けば、基本的に“引き出し”を目的に提供されている。12月は20日くらいから、トランザクションが急激に増加し、あちこちで“OFFLINE”の張り紙をしたATM機に出くわす。こちらのATM機は基本的に24時間稼働している。また、あちこちでATM機の中の紙幣が不足し、トランザクションがキャンセルされる事態が発生する。それで利用可能なATM機を求めて走り回ることにる。プロバイダーにもよるのだが、まだまだ通信事情は良いとはいえない。企業内でインターネットを使う分にはそれほど問題を感じない(ただしサイズの大きなファイルなどをアップロードしたりダウンロードしたりする場合は別)が、まだまだ改善の余地はある。まだインターネット利用料も高価である。最高速の3Mbpsの回線だと、月額で3000ペソ(約8000円)もする。日本では、月額で8000円も支払えば、光ファイバーが利用できることを思えば、インターネットを利用料のもっとも高価な国の一つといえよう。利用者数は年々増加しておりやがて日本同様に低価格化するだろう(期待)。

 私は現在ある投資家のもとで、ある極秘のプロジェクトに参加している。その投資家の名は、「ダド・ボナタオ(Dado Banatao)」と言い、フィリピンでは有名な億万長者だ。フィリピンのカガヤンバレー(北部ルソン)出身、スタンフォード大学でPhDを取得、そしてシリコンバレーで半導体企業を起業し大成功を収めた人物だ。彼は、PCのいくつかの分野におけるパイオニアで知る人ぞ知る人物である。その後、Tallwood社に参画しベンチャーキャピタリストとなった、フィリピンの2大財閥を始め多くのファンドを運用し、米国の半導体関連企業を中心に投資している。また、彼の後輩でフィリピンのNarraVC社のトップであるパコ・サンデハス(Paco Sandejas)氏が運営するBGN(Brain Gain Network)を通じて、フィリピンにおけるハイテク分野で学ぶ学生と企業とを結ぶネットワークを形成している。1月4日、彼とBGNのメンバーとの間で、ハイテク分野に関しての研究発表および討論会が催され私も出席することになった。後半、ダド氏が4百万ドルをフィリピン政府に投資し進めているハイテク分野の学生支援プログラムの進行状況についての説明があった。その中でダド氏は、「この国のお金持ちがもっと真剣にフィリピンの将来を考えて投資すべきだ」と強い憤りを述べた。また、「なぜ未だにフィリピン国民は、多くの製品を自ら生産することを考えず、お金を出して海外企業の製品を購入しているのか」と興奮気味に述べた。「投資をして欲しいとの依頼がフィリピン国内からいくつもあるのだが、たとえば半導体を設計しプロダクションに落とし込むところまでできるデザイナーがこの国に何人いるか誰も答えられないし、政府もそういった統計調査すらしていない」「そんな状態でどうして投資家を説得することができるというのか」と。最後に、「でも心配しないでください。私はフィリピン人です。皆さんのそばいていつでもフィリピンのために仕事をする用意をしています。」と語った。

 私は感動した。こんな人がいる限りフィリピンは健全だと思った。しかし、もっと多くの政治家や企業家が、この国をよりよくし発展させていく努力をしていかないと........。道のりは長い。この国は、先進国からの依頼で長らくハイテク機器を製造してきた歴史がある。しかし、その中で人材を育成するという目立った取り組みが行われてこなかった。英語が標準で使えてこれだけ海外での職務経験者が豊富な国だ。まだまだ多くの可能性を秘めていると思う。

※このエントリはZDNetブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および ZDNet編集部の見解・意向を示すものではありません。

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