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脱線いたしま〜す 「あの頃は会社をやめる事ばかり考えていた」

八木大造(Daizo Yagi)   2008年4月30日

 数週間前、クレオの新人研修で講師をする機会があったんです。ボクが動機付けをしなきゃいけないのに、明るく元気な新人さん達に逆に勇気付けられちゃった。講義が終わり、扉が閉まりかけたエレベータに飛び乗ったボクは、目的階のボタンを押しながら自分の新人の頃を思い出した。

 20年前のことです。横浜市営バス36系統。その朝はいつもと違う感じでした。運転手さんは自分の声で次の停留所を案内している。

 当時のボクは高校を出て働き始めたばかりでした。SEの見習いとして、銀行のオンラインシステムを開発するプロジェクトに配属された。JCLやCOBOLの汎用機の時代です。うん十、うん百億円の総予算と、数百人で手分けをして開発している大プロジェクト。上司から「きっと、良い経験になるから」と言われ希望を持ってスタートした。でも知識も経験もないボクには、自分のやってる作業の意味が分からないし、先輩には毎日どやされるし、あの頃は会社をやめる事ばかり考えていました。

 運転手さんを見ると、自分とそんなに年が変わらないことにまず驚いた。「きみも大学行かずにやってるのかい?・・・お互い、つらいねぇ・・・」しかし運転手さんの動きはキビキビしていた。案内の声にもハリがあった。どーやら停留所の名前は全部暗記しているようだ。道がカーブにさしかかれば「右へ曲がります。お気をつけ下さい。」と言ったりする。他の年配の運転手さんが同じ様にやっているのをボクは見たことがなかった。終点の東神奈川駅では降りる乗客一人一人に「ありがとうございました!いってらっしゃいませ!」と声を掛けている。

 乗り継いだ京浜東北線の中で、だんだん勇気が湧いてきた。「ボクのやってる仕事だって、工夫のしどころは、いくらでもある筈だ。あの運転手さんのようにやってみよう。」

 今でもこれは、神様が道を示して下さったんじゃないかと思ってるんです。がっかりするたびに、これを思い出しては心の整理をしたっけ。上司の言ったとおり、本当に「良い経験」となりました。

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